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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
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ルクスの提案

「……提案?」


 レフェリーが怪訝な顔をして聞いてきた。


「……ああ。別にサリスがさっき気絶してたんだから俺達の勝ちだろ、とか言うつもりはないぜ? レフェリーの判断は絶対だからな」


「……」


 俺が言うとレフェリーは気まずそうに視線を逸らした。


「……提案の前に聞きたいんだけどさ、俺がこれで勝って二勝二敗一分けになったらどうなんの?」


「……五戦で決着がつかなかった場合、控え選手によるサドンデスが行われる。先に一勝した方の勝ちだ」


 ……へえ、そんなルールがあるのか。俺達が出せる控えは、オリガ、リーフィス、フィナ、レイス、レガートか。フィナかリーフィスだったら相手が誰だろうと勝てるだろうな。


「……じゃあ俺からの提案だ。――俺一人でいいからあと全員でも二人でも、かかってこいよ」


「「「っ!?」」」


 俺の無謀と思われる提案に会場と相手とレフェリーが驚く。


『おおーっと、これはルクス! 無謀な提案をしてきた! レフェリーの判断はどうなるのか?』


「……」


 さっきの負い目があるせいか、逡巡するレフェリー。……ここにつけ込むか。


「……ルールは簡単。あんたら三年Fクラスの二人以上と俺が戦って、勝った方が勝ち。逆転勝利も有り得るが、一対一でやるよりも確実に有利だぜ? あんたらがいいって言うなら、レフェリーもいいって言うだろうよ」


「……あ、ああ。判断は任せる」


 レフェリーは俺の言葉に便乗して責任から逃れる。これで俺達が勝手にやったってことに出来るからな。


「……そんな特別ルールが認められるかよ。ってかなめてんのか?」


「……何だよ。大人数で俺一人とやって負けるのが怖いのか?」


 相手が睨んできたので、俺は挑発的な笑みを浮かべて煽る。


「……っ! 違う、俺達だけで判断出来ることじゃねえって言ってんだよ」


「……んじゃ、上に聞いてみるか? 理事長と王様よぉ、いいだろ? 場を盛り上げる余興ってヤツだよ」


 俺は相手に言われて、当初の予定通り高い場所から俺達を見下ろす理事長と国王に聞く。……さすがに国王にタメ口を利いたのはマズかったかな。だが会場はそれに気付かず二人を見上げる。


『……私は構わない。ガイスの息子の実力を見るには丁度いいからな』


『……私も問題ない。君がうちのバカ息子を滅多打ちにしてくれた子か、礼を言うよ。ガイスの息子とは、私も殴られたことを思い出す』


 理事長はニヤリと、国王は朗らかに笑って快く承諾してくれた。……親父、こんな凄い人と知り合いなのか。ってかあのクソ親父も王族殴ってたのかよ。似た者親子とか思われたくないのにな。


「……だってよ」


 俺は二人の承諾を得て相手に笑みを向ける。


「……分かった。残りメンバー六人全員で、その調子に乗った鼻、へし折ってやる!」


 三年Fクラスは憤ったようにして、六人の男女がフィールドへ上がってくる。


「へ、変則バトル、始め!」


 レフェリーが六対一の試合の開始を合図する。すると二人が武器を構えて突っ込んできて、後ろの四人が魔法を唱えていた。……俺を抑えてる内に魔力のない俺に対して魔法を使い攻撃をする気か。


「……なあ、先輩共。俺、これでも結構キレてんだぜ? リリアナも、イルファも、サリスも。やらなくていいレベルまで攻撃してくれやがってよ」


 俺はニッコリと爽やかに笑う。


「……戦衝装龍獣闘活鬼!!」


 俺は気の八つ融合をする。


「「「っ!?」」」


 橙、緑、クリーム、銀、茶、青、淡い黄緑、赤と八つのオーラが混じり合ったモノを纏う。


 全員が驚き、相手も動きを止める。


『こ、ここ、これは……! 何と八つ! 八つの気の融合です! 前代未聞の気の四つ融合を果たしたと言われるルクス! しかし! 今ここに、六つが精々かな? と思われていた気の融合に、新たな記録が生まれました!』


 実況が盛り上げ、会場が湧く。……だが対峙している相手にとっては堪ったもんじゃないだろう。


「……てめえら、ただでフィールド下りれると、思うなよ!」


 俺は思いっきり強化された身体能力で突っ込んできていた相手二人を両側からほぼ同時に攻撃し、ぶつけ合わせる。


「……一人十発はくらってけ」


 俺はそう呟いて、魔法を準備していた四人を木の棒で五発ずつ殴りつけ、しかし場外には落とさないように互いをぶつけ合わせる。


『み、見えません! このわたくし、不覚にもルクスの動きが見えません!』


 実況が言う。……そりゃそうだ。身体強化しまくりなんだぜ?


『……ふむ。わしにも見えんのう。さすがの速さじゃ』


 解説のじいさんが朗らかに笑って言う。……あんた解説の意味あるのか? まあちゃんと魔法や技について説明してるからいいんだろうけどさ。俺には魔力に通じる解説がないからあんまり意味ないんじゃ……。


 俺はそんなことを考えながら、魔法を使おうとしていた四人を、互いにぶつけ合わせつつ十発叩き込み、


「……くらえ!」


 まとめてぶん殴って場外の壁へ勢いよく吹っ飛ばす。……ダメージは少ないだろうな。だってそのために活気を入れたんだ。むしろ活気の温かさが気持ちいいんじゃねえかってくらいだ。


 ……さすがにそれはないか。


「……クソッ! なめんな!」


 互いに衝突しフラついていた二人が俺に襲いかかってくる。……気の二つ融合に、身体強化の魔法、か。ぬるいな。


「……てめえらは特別に、俺の気が済むまでくらわせてやる!」


 俺は言って、フィールドを旋回しながら反対側に相手を叩いて吹っ飛ばしながら、何周もしていく。スピードが乗ってくると、俺が思いっきり攻撃して四分の一回って攻撃しさらに四分の一回って最初に攻撃したヤツをまた反対側に吹っ飛ばすことも可能だ。


「……これで、終わりだ!」


 俺は三十発ぐらいくらわせたところで一人ずつ腕を掴み、まとめて上に放り投げる。


「……俺の新技」


 俺は八つの色が混じり合った、銀の龍を木の棒の先に顔がくるように形成する。


『おおっと、何でしょうかあれは! 龍気……のようにも見えますが!』


『……見たことないのう。気は形の作るモノではないからのう』


 実況と解説共に見たことがない。……そりゃそうだ。だって俺がこの前考えた技だし。


 俺は密かに活気を解除しておく。だってトドメの一撃だし。終わってから相手が無傷じゃあ、仕返しにならない。


「……登龍!」


 俺はまとめて落ちてきた二人の真下に立ち、タイミングを見計らって龍を纏った木の棒を振り上げる。


「「っ……!!」」


 二人はレイヴィス越しだがレイヴィスが弾け跳ぶ程の嵐の咆哮による衝撃を受け、完全に気絶する。


「……だから言ったろ? 俺はキレてるって」


「……五戦目、勝者一年SSSクラス! 特別ルールにより、六対一のバトルを制した一年SSSクラスの勝利とする!」


 レフェリーが高々と宣言し、会場が大歓声に包まれる。


『強烈! ルクスの一撃は相手を二人同時にノックアウト! しかもレイヴィスを吹き飛ばし理事長の張った結界にヒビを入れたー!』


 ……結界? と思って俺がチラリと見ると、空高くにヒビが出来ていた。いくら壁に叩きつけても壊れないからおかしいとは思っていたが、結界が張ってあるのか。納得。


 俺は呆れたような安心したような心外だというような様々な表情をした仲間達がいるベンチへ戻っていき、ニヤリと笑って木の棒を上に突き上げる。


 ……やっぱ、嫌な雰囲気ってのは吹っ飛ばすもんだよな。


 俺は心底、さっきまでの嫌な空気が吹き飛んでいるそいつらを見て思った。


 こうして、クラス対抗戦の一日目が、終わりを告げた。

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