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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
序章
8/163

最終実技試験

「……」


 俺とアイリアの間には四人いたが、全員負けていた。


 アイリアとの戦いで体力を消耗した冒険者筆頭にさえ、だ。


 アイリアは確実にSSSクラスだが、他は見込みのあるヤツとか理論が完璧なヤツとかだろうか。ここまで来た前の四人もSSSクラスかもしれない。


 子供が大人に勝てないのは道理。だが、十年後はどうなっているか分からないのが子供だし、三年の通学期間で越えることもあるだろう。


「……ふむ。君が報告にあった魔力なしの少年か。どうやら、気も使わずにここまで勝ち抜いてきたようだな」


 腰にある木の棒を見て言う。


 報告書のようなモノがあるらしく、手元の紙を見ていた。


「……まあな。だが、あんたは気を使わないとヤバそうだ」


 俺はそう言って木の棒を真剣に構える。


 騎士団長は騎士鎧に盾と騎士剣と言うオーソドックスな装備だ。


「……なるほど。かかってこい」


 騎士団長は腰を落として構える。


「……ああ」


 まずは小手調べからだな。


 俺は気を使わずに騎士団長に突っ込んでいく。


「ほう、速いな」


 そうは言うがあまり驚いた様子はなく、盾を中心に構えた。


「……はっ!」


 俺は騎士団長の正面に来て、盾を横からたたいて弾く。


「っ……!」


 一瞬驚いたような顔をするが、すぐに右手の剣を振り下ろしてくる。


「……」


 それを俺は左に避け、驚く騎士団長の鎧に五発叩き込む。


「ぐっ……!」


 呻いて少し後退するが、一時的な優勢だ。追撃はせず、少し距離を取った。


「……なるほど。他の団員や冒険者が敵わない訳だ」


 冷静に分析し、両手を下ろす。


「……それはどうも。だが、あんたまだまだ本気じゃねえな? 魔導が使えるんだろ?」


 確か、王宮騎士団団長は魔導が使えるって話だ。それに、気の達人でもあると。


「……君が本気を出せば、考えてもいいが」


 考えてくれるのか。


「……じゃあ、魔力ない俺の全力、見せるっきゃねえな」


 俺は笑って言い、木の棒を左手に持ち、柄の白い帯の巻いてある先の部分に右手を添える。


「……?」


 騎士団長も冒険者筆頭も、アイリアも野次馬も、何をするんだろうかと見ている。


「剣気」


 俺は刃があるかのように右手を滑らせる。


「「「っ!?」」」


 すると、俺の木の棒には白い刀身が現れていた。


「……俺の剣気は特別製でな。こんな感じで刃になる。だから他の武器だと上手くいかないんだよな。もう攻撃する箇所が出来てるからさ」


 剣気は纏わせても刃状にはならない。さらにここからが、俺の気の真骨頂である。


「鬼剣」


 俺が言うと、白い刀身が赤に変わり、俺自身も紅いオーラを纏う。


「……剣気と鬼気を融合させているのか……!」


 ……まあ、俺の場合は剣気ベースに鬼気を足してるってだけで、アイリアの使った闘鬼程両方の効果が反映される訳でもない。


「……これは、俺も本気を出した方がいいな。……魔導。闘鬼、剣気、錬気」


 騎士団長は俺の気を見て自分も気と魔導を使う。……こいつとアイリアが戦ったら面白そうだったのにな。魔導対魔導。見てみたい。


「……聖炎か」


 アイリアの魔導は分かっているだけで炎と光と闇。得意魔法などに依存するため、炎の魔法が得意で魔槍と神槍の使い手だからだろう。


 そして極稀に騎士団長のような特別な魔導を使う者がいる。聖炎だから、炎と光を合わせたような感じか。


 白く輝く炎を剣と盾に纏っていた。


「……ふぅ」


 俺は一息つくと、集中する。相手が正々堂々真剣に戦いを挑んできたならば、こちらも本気で迎え討

つ。……親父が酔ったある日に言ってたっけな。


 その後に女子には傷付けちゃいかんぞ、特に可愛い娘はな、と笑って言ったせいで少し台無しだった気がしないでもないが。


「……いい目だ」


 騎士団長は言って、今度は自分から仕掛けてくる。


「……鬼斬!」


 俺は騎士団長に向かって鬼剣を振り上げ、紅い斬撃を飛ばす。


「聖炎剣!」


 それを聖炎で出来た剣で相殺し、速度を緩めずに突っ込んできた。


「……。はっ!」


 俺は騎士団長と鍔迫り合いをする。紅いオーラと聖炎がぶつかり合い、お互い一歩も引かない。


 だが、騎士団長にはまだ盾があり、盾で殴りかかってくる。


「……破気。破掌!」


 俺は右手だけ破気を発動させ、盾に掌打を叩き込み、割る。


「っ!」


 騎士団長は驚いて後退するが、俺の右手は聖炎に焼かれている。


 ……下がってくれて良かった。治す余裕が出来る。


「活気」


 焼けた部分に黄緑のオーラを纏わせ、治癒していく。


「……活気? 何だそれは?」


 騎士団長は怪訝そうな顔をして聞いてくる。……そういや、活気は世間に知られてないんだっけな。


「……俺がよくオルガの森で怪我して帰ってきてた時、母さんがよく使ってくれたんだが、細胞の活動を活発化させ、治癒させるらしい」


「……ふむ。それは朗報だな。……それでは、続けようか」


 騎士団長は言って、再び突っ込んでくる。


「……龍剣!」


 刀身が銀色になる。


「っ!?」


 騎士団長は驚いて止まるが、遅い。


「はっ!」


 一振りで豪風と雷撃を巻き起こす。他にも色々出来るが、これが一番のお気に入りだ。


 竜と龍の違いだが、漢字だけじゃなく、生態的にも違う。


 竜とは俺とアイリアがオルガの森で会ったヤツなどを言うんだが、姿は堅い鱗に覆われた二本足で立つ蜥蜴のようだ。背に蝙蝠のような翼が生えている。本体と一定の隙間を開けて魔力障壁と言う魔力を通さない不可視の壁を持つ。


 龍は長く、堅い鱗で覆われていて小さな手足が四つある。背に刺があり、頭は鰐のようで角と髭がある。全身を覆う神秘の衣と言う魔力も物理も気も軽減する薄い膜のようなモノを纏っている。


 そもそも、竜と龍は分類が違う。竜はモンスターの中で最強種だ。翡翠色の竜は下位だからあまり強くなかったが、竜は最強種だ。だがそれは、モンスターでの話。


 モンスターの定義を挙げるとするなら、人間を見ると問答無用に襲ってくる、人間に害を及ぼすなどだ。竜はそれに当てはまるヤツがいるからモンスターな訳だ。


 しかし、龍は違う。龍は竜と違ってモンスターではない。人畜無害で、寧ろ崇められ奉られている地域まであるくらいに神聖で崇高な生物だ。龍は普段霊獣や神獣や聖獣などと呼ばれ、万が一にも暴走した場合は天災と呼ばれる。


 要するに、龍と竜では格が違うってことだな。


 ……まあ、人間の使う龍気なんてたかが知れてるけどな。


「……」


 騎士団長は無事だったが、少しダメージを受けていた。……畳み掛けるなら今か。


 俺は銀色の斬撃で牽制しつつ騎士団長に突っ込んでいく。


「龍斬!」


 大上段から振りかぶり、騎士団長を鎧ごと切り裂く。


「っ……!」


 それを防ごうとした剣も斬れ、切り裂かれた騎士団長は血を流しながら倒れる。……やり過ぎた。


「大丈夫か!? まさか、ここまで斬れるとは思わなかった」


 人間にやるもんじゃねえしな。俺は活気で騎士団長の傷を治す。


「……完敗だ。龍気まで使えるとは思わなかった」


 騎士団長は冷や汗をかいて苦笑する。


「……よしっ。応急措置完了っと。悪いな、鎧斬っちまって。弁償とか言うなよ? これでも貧乏なんだ」


 世の中には慰謝料なんてのを払わせるヤツがいるしな。……いや、自分で治せるだろって話。

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