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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
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会計と書記

 二戦目に出てきた三年SSSクラスの選手も女子だった。


 スタイルが良く手足がスラリと長い。橙色の髪を短いポニーテールにしている長身の美女だ。両足首に灰色のリングをつけている。……何だろうか。あれが武器なのかは分からないが、何か意味があるのかもしれない。


「始め!」


『さあ始まりました第二戦! 颯爽と登場したのは生徒会会計を務める“二色拳聖”ニエナさんです! 一戦目負けてしまった三年Bクラス、巻き返しなるのでしょうか!』


 レフェリーが試合開始の合図をして実況がニエナ先輩を紹介する。


「よっしゃ!」


 ニエナ先輩は胸の前で拳を打ち合わせると、拳の前に二枚の魔方陣を展開する。赤い魔方陣と灰色の魔方陣だ。……無詠唱か。だがあの魔方陣の形からして、爆発する球を放つ火系統魔法と空気の弾丸を放つ風系統魔法だろう。


「おらぁ!」


 ニエナ先輩はその戦闘スタイルを知っているのか警戒して突っ込まない相手に向けて、距離が開いているのに拳を振るった。すると相手は両腕を交差して防御体勢を取り、その相手を爆炎と爆風が襲った。相手は場外に落ちなかったものの、後退させられる。


「……なるほどな。ボム系の魔法を風系統の魔法で空気と同化させて見えない爆弾として放ってるって訳か」


 俺は険しい表情をして呟いた。


「……それだけじゃない。風系統の魔法で爆炎と爆風の威力を収縮及び強化してる。攻撃は視認出来なくても直線的だ。だが速度が違う。拳を放ってからのタイムラグが零に近いんだ」


 チェイグが補足する。……それは見れば分かる。武器を使わないことからも体術に自信があるんだろう。そして魔法の技術もかなり高い。


「爆裂連拳!」


 ニエナ先輩の攻撃は終わらない。相手が手を出せないことをいいことに、連続で拳を振るい見えない爆弾で相手を滅多打ちにしていく。


「……終わりだ!」


 ニエナ先輩はそう言うと右足の前に三つの魔方陣を展開し、振り被る。……赤、白、灰ってことは、火系統、光系統、風系統ってことか。


「……よく見とけ。あれがニエナ先輩の主力武器、ニルヴァーナだ」


 チェイグが言ってから、ニエナ先輩が脚を振るう。すると魔方陣のある爪先から物凄い高エネルギーの白い波動が放たれた。……魔方陣ってのは強くなる程に大きくなっていくモノだ。だがニエナ先輩が使ってるのは小さな魔方陣が三つ。これ程の威力が出るもんなのか?


「……あの、足首についてるヤツか?」


 俺は一つ思い当たる節があってチェイグに聞く。


「……ああ。あれは今現在見つかってる太古に作られた兵器ニルヴァーナの一部分だ。発見された時すでにバラバラだったため、しかも今の技術では修復出来ないとされ世界各地に小さな一つ一つが何かしらの能力を持ったまま部品が散らばった。売買や横流し、奪略などで世界のどこにあるかも分からなくなっていたが、このディルファ王国が保有する太古の兵器ニルヴァーナの部品はニエナ先輩とあと五人が持っている。その中でもあのただの部品であるあのリングが持ってる能力は、単純明快だ。魔法増幅、それがあのリングの効力」


 チェイグが詳細な説明をしてくれる。……太古、大昔にあったモノなのに何故か日進月歩している今の技術でも解明出来ない技術が使われている兵器。確か発見されたのは十七年前だったか。


「……知ってるぜ。部品一つ一つがニルヴァーナ最大の能力を発揮するために必要不可欠なモノ。見つかってる部品でも数百個の能力があると見ていい程の兵器。ちゃんと対魔法の勉強をしてる俺が知らない訳がないだろ」


 俺はニヤリとして言う。……魔法増幅か。しかもその部品が二つ。厄介だ。


「……そうか。まああれを使われれば大抵の敵は――」


「二戦目、勝者三年SSSクラス!」


「……ああやって倒される」


 高エネルギーの攻撃をくらった相手は壁に叩きつけられ場外と気絶でニエナ先輩の勝利に終わった。


「始め!」


 三年SSSクラスはまだ余裕そうだ。早速次の試合が始まる。三戦目に出てきた美少女は丸眼鏡におさげで羽根ペンを手にしている。


「……あれが生徒会書記、“宙得手の書記”シェリカ先輩だな。魔力をインクにして空中に絵を描き、それを実体化させて戦う。因みに魔方陣もオリジナルにして書けるぞ」


 ……オリジナルの魔法が使えるって時点で天才だって分かる。魔方陣ってのは決まった形を描くからその魔法が発動する訳で、ちょっとでも手を加えればその魔法は発動しない。大体魔方陣なんて書くもんじゃないしな。


 開始早々シェリカ先輩は羽根ペンでサラサラと金色のインクで空中に何か書いていく。


「……させない! フォレスト・ニードル!」


 だが相手がそれを黙って見ている訳がない。緑色の魔方陣をシェリカ先輩の足元に展開し、木のトゲをいくつも生えさせて攻撃しようとするが、魔方陣が展開されるものの木のトゲは出てこなかった。


「……オリジナル結界魔法。簡単に言えば魔法の発動を阻害する」


 驚愕する相手の女子に対しシェリカ先輩は淡々とした声音で答えた。その間も金のインクで虚空に何やら描いていく。……魔法で先制攻撃されると分かっていてその結界とやらを発動させていたらしい。おそらく必要最低限しか描かれていないであろう小さな魔方陣を確認する。


「……」


 ようやく描き終えたらしくペンを止めるシェリカ先輩。そこには多種多様な猛獣が描かれていた。絵から飛び出してくるように次々と実体化していく猛獣達。


「っ! ウインド・カッター!」


 金色の身体をした獅子や虎などが襲いかかってくる光景に怯みはしたが、灰色の魔方陣を展開し風の刃をいくつも放つ――前にシェリカ先輩が高速で描いた魔方陣から金色の弾丸が放たれ、魔法は発動しない。


「……オリジナル魔法。魔法の発動を阻害する弾丸を放つ」


 シェリカ先輩は再び驚く相手に向けて淡々と言い放ち、猛獣達の突進により相手は場外へ吹っ飛ばされる。


「三戦目、勝者三年SSSクラス!」


 相手の気絶を確認しレフェリーが勝者を告げる。……同じ三年だってのにここまで圧倒的な力を見せてつけている。このクラスは別格という訳か。

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