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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
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熱炎の舞姫

一週間も経っていませんが、しばらく空いてしまったので更新します

『おおっと、これは思わぬ番狂わせが起こりました! まさかまさか、魔力がないというハンデを背負いながら三年生を鮮やかに撃破! しかも気の五つ融合以上を使えるという噂まであります! 正直(わたくし)、見直しました!』


 不公平な実況から一転、立ち上がって興奮気味に言った。……掌返しが凄いな。


『それでは二回戦の前に、昼食の時間となります! 皆さんは支給されるお弁当か学生の食堂にて昼食となります。学生の皆さんは食堂で昼食を取って下さい! それでは三十分の休憩となります!』


 実況が言って、俺達も食堂へ向かう。生徒達はバラバラと食堂へ向かっていく。


 二回戦でも俺達一年SSSクラスは一番最後なので、もりもり食べても消化出来るだろう。俺は二人前、フィナは三人前を平らげた。


「……戻るぞ。次の試合が始まる」


 何となくクラスのほとんどで固まって食べていたので、アリエス教師が言って、俺達は食堂から元いた観客席へと戻っていく。


 二回戦第一試合、三年SSSクラスVS三年Bクラスの試合が始まる。


「……おそらくこのクラスはずっとフルメンバーでくる。去年も優勝した最強のクラスだ。特にあの生徒会長の強さは二年三大美女の三人が遊ばれるぐらいだ。他のメンバーも要注意人物が多い」


 チェイグが言った。……三年SSSクラスの五人は大将の生徒会長以外全員が美女美少女だった。


「……ん? レイヴィスの面積が少なくないか?」


 俺はふと疑問に思って聞く。SSSクラスの一戦目に出てきた美女のレイヴィスが下着よりも面積が少ないようなモノだったのだ。必要最低限、隠すとこだけ隠してるみたいな。その代わりなのかリストのようになっている手首だけの部分から長いレイヴィスの布が垂れている。


「……あれが今期生徒会庶務、エリアーナ先輩だ。踊り子をやっていて、舞踊が得意だ。戦闘スタイルは主に材質変化、伸縮自在の二つ。レイヴィスをああやって改造してるのはそのためだ」


 チェイグと実況が教えてくれる。実況の話によるとエリアーナ先輩は“熱炎の舞姫”と呼ばれているらしい。


 材質変化の魔法は布から木や鋼鉄にまで変化させる魔法だ。使い手はかなり少ないと言われている。


 伸縮自在の魔法はモノの長さを自在に変えられる魔法だ。彼の孫悟空が使う如意棒という武器に組み込まれている。使い手はかなり少ないと言われている。


 ……両方共使い手が少ないのには特殊な血筋が必要だから、という噂を耳にしたことがあるが、確証がある訳じゃない。ただエリアーナ先輩がその二つを使えるということは世界でも十人といない使い手になるのかもしれない。


「……“熱炎”の部分は基本炎を使うからだな」


 チェイグがさらに説明を追加してくれる。……基本ってことは、他の属性も使うんだろうか。


 エリアーナ先輩の相手は武器も持たない肉体が武器らしい筋肉隆々のマッチョの男子だ。


「始め!」


 開始の合図と共に動き出したのはエリアーナ先輩だった。相手は出方を窺うように突っ込まない。


「……」


 エリアーナ先輩は開始の合図からすぐにステップを踏み始める。腕をしなやかに振るい、舞う。


「……」


 舞い踊るエリアーナ先輩は相手がいないかのように舞を激しくしていく。それに観客はさらなる熱狂を見せた。


 細くしなやかで長い四肢と引き締まった尻と腰、通常のレイヴィスよりも露出度が高いためよりその存在を主張している胸は巨乳と言っていい大きさをしている。金髪の長髪を頭の後ろで一度縛っていて紅の瞳は切れ目だ。


 情熱的な舞を魅せるエリアーナ先輩に、ついに相手が動く。腰を落とし脚に力を込めて――伸ばされたレイヴィスの袖に脇腹を殴られた。


「ぐっ!」


 ……一瞬で発動させやがった。無詠唱で魔方陣も出していない。瞬時に二つの魔法を展開している。右の布を伸ばし先端を鋼鉄か何かに変化させて打撃をした。


 二撃、三撃と立て続けに舞に合わせて硬化させた布を叩きつけるエリアーナ先輩。舞を踊っているためだんだんとその速度は上がっていく。


「……魅せてあげるわ。ラフェイン式舞踊・第壱番、炎舞踊!」


 エリアーナ先輩がそう言うと観客席から大歓声が上がった。……何だ? ラフェイン式?


「……エリアーナ・ウォン・デ・ラフェイン。エリアーナ先輩の本名だ。つまりラフェイン式ってのは家でやってる舞踊ってことだな」


「……つまり、子供の頃から叩き込まれた舞踊を戦闘に応用しつつ、第壱番ばっかり使ってるってことは、弐番以降を使わせられる相手がいなかったってことか」


「……ああ。だが一回だけ、エリアーナ先輩が一年SSSクラスだった時に参番まで使って相手を殺しかけてから、余程のことがない限り使わないようにしてるらしいぞ」


 ……そんなに強いのか。


 チェイグからエリアーナ先輩について聞いている内に、炎舞踊が発動していた。


 エリアーナ先輩の周囲に炎が逆巻くように舞っていた。舞に合わせて炎も渦を作り周囲へと広がっていく。


「……くっ! アクア・ラグナ!」


 おそらくこれが切り札なんだろう。水系統の魔法でもかなり強い部類に入る魔法を使う。巨大な魔方陣を展開しそこから大津波を発する。……だが魔力が切れかけているのかすでにハァハァと息を荒くしている。


「……甘いわよ」


 エリアーナ先輩は妖しく微笑むと、炎と一緒に舞い炎と伸ばした布を大津波に叩きつけていく。……普通は炎が水に消火されて負けるのだが、魔法の威力や魔力の質によってその力関係が上下することがある。


 それが今の、大津波が鋼鉄と化した布で切り裂かれ、炎の奔流によって蒸発させられていく。


「なっ……!」


 その光景を唖然として見ていた相手の男子は、一発の大津波と継続する炎の奔流との差だが、大津波で消し切れなかった炎が相手を襲う。


「っ……!」


 男子は襲いくる熱気に思わず顔を両腕で覆う。そのため炎の奔流の中を進んでくる長く幅が広い布に気付かず、思いっきり横から叩かれ場外へと勢いよく吹っ飛ばされる。


「一戦目、勝者三年SSSクラス!」


 レフェリーが勝者を告げて、エリアーナは悠々と大歓声の中ベンチへと戻っていく。


 ……こんなのがあと四人もいるのか。さすがはエリート集うライディール魔導騎士学校最強のクラスだ。

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