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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
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開会式

二話更新したいと思います


この話からクラス対抗戦が始まります


要望があった三年のヒロインの登場やルクスについても少し明かされる予定です


チートすぎる強さを持ったキャラが出てきますが、ご了承くださいm(__)m

 無理をした二人はアリエス教師と医療メンバーから説教を受け、結局メンバーの入れ替えは起こらなかった。


 メンバー発表から一週間が過ぎ、ついに正式名称ライディール魔導騎士学校校内クラス対抗代表団体戦、通称クラス対抗戦が始まる。


『これより、ライディール魔導騎士学校校内クラス対抗代表団体戦、通称クラス対抗戦を開始しまーす!』


 選手十人が担任教師に引き連れられてライディール魔導騎士学校にある巨大なアリーナにてクラス順に並んでいた。


 順番は適当だが、男子が前、女子が後ろ側に並んでいる。レガートに押しつけられて俺がアリエス教師の後ろに並び、レガート、アイリアと続いていく。


 俺達一年SSSクラスは一年から左に並んでいくので右に二年がいるというなかなかに威圧的な場所だ。


 クラス代表戦は二日間を予定されている。


 一日目は一回戦の十四戦、二回戦の八戦の二十二戦を予定している。


 二日目は三回戦の四戦、準決勝の二戦、決勝の一戦の七戦だけだ。


 それは確実に二回戦以降の体力の消耗が激しいからだ。


 そう歴史が言っているので、二日目は三戦することになるが、場合によっては決勝を三日目に延期するという措置があるので問題ない。


 それ以外にも、時間制限はないが場外が存在する一、二回戦とは違い、三回戦からは場外をなくすというのも関係してくる。


 因みにテンション高く開会式の解説を入れるのは、三年の女子生徒。実力より拡声魔法という声を大きくする魔法を得意とし、実況として一年の時から活躍しているという。三年間で退学になったりはしていないようなので、少なくともそれなりの実力者であることは確かなのだが。チェイグの話によれば二年の時にクラス代表のメンバー入り出来るところまで上り詰めたらしいが、自分は実況が性に合ってると辞退したらしい。


『えー、これより開会式を行いたいと思います。皆さん静粛にっ!』


 実況が司会進行を務めるようだ。その方が人員を割かなくて済むからだろう。


『一、始めの言葉』


 実況が進行する。


 各クラス十名が並ぶフィールドを高い位置から眺める形で階段式になっている観客席、そこに四つ配置された柱の役割を果たし、出入り口や観客席へ出る階段がある円柱のようなそこの一つに、観客席の一番上より少し高い位置にある三つの席と、中間にある実況とその隣にいる解説(?)のじいさんが座る二つの席が設けらている。……来賓席みたいな作りなのか。貴族は観客席を二つ、三分の一を下の生徒や他に解放しているその上に踏ん反り返って座っている。きっと平民などと同じように熱気に包まれて応援するなど嫌だというスタンスのヤツらだろう。


『……陽気に包まれた今日、クラス対抗戦を開催出来ることを嬉しく思う。これより、開会式を始める』


 解説らしく実況の隣に座るじいさんが渋く重い声で開会式の開始を宣言する。……このじいさん、かなり強い。魔力は隠されていてよく分からないが、気はかなりのモノだ。俺が現れた今ではまだまだと言いたいところだが、かなり強い。おそらく気の五つ――いや六つ融合はこなせるだろう。


『二、理事長挨拶』


 次はこの学校の理事長が挨拶するらしい。


 来賓席の俺から見て右側にいる長身でスタイルがよく、炎のように先にいくにつれて黄色く変化していく紅蓮の長髪ポニーテールをしている。目つきが鋭く右目に片眼鏡(モノクル)をかけている。


『今日開催出来たこと、心より嬉しく思う。だが今からが始まりだ。貴様達の力を国の要人に見せつけるチャンスだ。無駄にするなよ? 三年は天才、二年は奇才、一年は問題児の代と言われているが、まだ貴様達ひよっ子レベルの話だ。将来確実に活躍するだろう有望な者もいるが彼の大戦を生き抜いた者達に比べればまだまだだ。それをよく心に置き、全力を尽くせ。相手が格下であろうとも全力を尽くせ、いいな』


 理事長はスッと立ち上がって偉そうに挨拶すると、そのままドカッと椅子に座った。


「……あいつは大戦前より名を上げ“紅蓮の魔王”と各国に恐れられていた強者だ。よく覚えておけ」


 来賓席の方を見上げる俺に対し、いつもと同じ漆黒のドレス姿でいるアリエス教師が言ってきた。……サラッと俺以外のヤツに聞こえないよう何も言わずにサイレントという防音魔法を展開する辺りが凄腕さを見せてくれる。


 “紅蓮の魔王”。何か強そうな呼び名だ。俺も何かこう、強そうな呼び名欲しいよな。


『三、国王陛下挨拶』


 ……っ!


 俺はそれに少し驚く。


 来賓席で理事長の隣、真ん中の席に座る白髪で口髭と顎髭を蓄えた初老の男性に見えるヤツが、ここディルファ王国を統治する王様だという。……ここって国の最重要人物を呼べる程凄い場所なんだな。


 俺は改めて実感させられる。ここは国内でも屈指のエリート学校なのだということを。


『……ふむ。皆、いい顔をしている。これから戦いに臨むという決意の表情だ。先のバカ息子の起こした事件について私から謝罪をしたい者もいるが、今は止めておこう。またの機会にな。皆、此度のことを忘れるな。今から未来を担っていく若者達を、率先して先導する者が決まるのだ。簡潔に済ませるが、君達。――全力を以ってぶつかりたまえ。応援しているよ』


 理事長の挨拶よりも短かったが、国王の言葉だけあって心に染み入ってくる。アリーナがざわついた。きっと国王の言葉に湧き立ったんだろう。……「またの機会にな」と俺――多分アイリアの方だが――にウインクした茶目っけのある人物だとはな。しかも俺と同年代の息子がいる王族なのに、かなり老けているように見える。着飾りも最低限に豪勢すぎず、威厳ある風格はこの人自身のモノだろう。


「……この国の最重要人物だが、警備はいないだろう? それは常にあの理事長が一緒にいるからだ。国王自身も剣の使い手であるが故に、最低限アリーナの出入り口に警備が配置されているのみだ」


 アリエス教師は再びサイレントを使って俺に補足説明を加える。


 ……なるほどな。それに、この学校の生徒及び教師全員が警備のようなもんだ。


 俺はアリエス教師の言葉に納得した。


『はーい、静粛に。四、王国近衛騎士団団長の挨拶』


『…………き、期待している』


『……勘弁してやってくれ。彼は腕は確かなのだが、人見知りで上がり性なのだ』


 実況が場を静粛にするように呼びかけさらに進めると、国王のもう一つの隣に座る金属鎧にマントを羽織った厳格そうなおっさんが、緊張した面持ちで立ち上がり言ってすぐに座る。それに国王が素早く拡声魔法を使ってフォローを入れる。それに少し笑いが零れる。……いいコンビだ。


『五、選手宣誓』


 開会式のために設けられた台に、二人の生徒が上がる。台と二人の生徒は来賓席のある方向を向いている。


『せんしぇいっ……! うぅ……』


 台に上がった二人の男女の内、男子生徒、黒髪黒眼をした背が低く筋力があるとも思えないし、おどおどしていきなり噛んでしまうという失態をした可愛らしい感じの少年が、言った。


「……っ!」


 噛んでしょんぼりとする可愛い姿からか、観客席から笑いと女子からの声援が送られる。


 だが俺はそんなほのぼのとした雰囲気の中で、驚愕していた。


 ……気が、俺とかなり近いだと!?


 探ってみたら、こいつは気で俺と同等程度。気の全部融合は出来ないにしろ、出来るだけの力を持っている。


『せ、宣誓! 我々、選手一同はっ!』


 見た目に合う子供っぽい声で、その滅茶苦茶強い男子は宣誓を続ける。


『ルールに則り、正々堂々、死力を尽くして戦うことを』


 もう一人台に上がった、長い金髪と金眼で眼鏡をかけた気はイマイチだからきっと魔力が凄いんだろうスタイル抜群の美女が、冷静な声で続ける。


 そのスタイルの良さは、さすがにシア先輩に及ばないが、二年三大美女と並んでもおかしくないので、男子の視線はそこに向けられている。


『――ここに誓います!』


 そして二人同時に言い、締め括る。


 盛大な拍手が惜しみなく送られ、二人は台を下りる。


「……あれが今期の最強と言われる、三年SSSクラス所属、生徒会長と生徒会副会長だ」


 アリエス教師は再びサイレントで俺だけに解説を入れてくれる。


 ……あいつが、二年最強と言われるシア先輩を以ってしても勝てないと言わせた、学校最強。


 ……何だよ、理不尽すぎんだろ。俺は魔力がないからって気だけを頑張ってきたってのに、魔力がある癖に俺と同じくらい気を扱えるって、そんなことがあるのかよ……!


 俺は半ば八つ当たりに近かったが、僅かに自分の身体が震えているのを感じた。……武者震いじゃない、本気の恐怖。あいつと戦ったら、絶対に負ける。そう思わされているのだ。


 ……いや。


 だが俺はシア先輩に言った。倒してやると。男たる者、やる前から宣言したことを諦めてどうするというのか。


 俺は震える自分に言い聞かせる。


 ……自分には魔力がないと分かった日から、俺は他のヤツの半分の実力までしか強くなれないのだと理解した。だがそれでも、あんなことには二度とならないように、魔力を持って生まれたヤツらに勝てるように、強くなったつもりだ。あいつはきっと、俺より二年多く生きてるとはいえ気と魔力両方で強いんだろう。つまり、気と向き合った時間は俺の方が遥かに長い。なら俺にも勝機はあるんじゃないだろうか。


 諦めるのは、恐怖に屈するのは、性に合わない。


 俺はそれからずっと生徒会長のことを考えていて、その後の開会式を全く聞いていなかった。


 だが開会式が終わり、花火が打ち上げられる頃には、いつもの俺で、ニヤリと笑っていられた。

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