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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
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龍気完成

 全身から銀色のオーラを迸らせる俺を見たクラスメイト達は、何事かと俺と対峙するチェイグとを囲むように円を作る。


 ……これで準備は完了だな。


「……いくぜ、チェイグ。ちゃんと龍の喉元狙えよ」


 俺は言って、左拳に作った頭から右に抜けていくように龍の身体を形成していく。……もうちょい速くしないと実戦では使えないな。瞬時に展開するくらいじゃないと。


「……凄いな」


 チェイグは驚いたように感心する。


「……当たり前だ。消さないとマジで怪我するから、気を付けろよ」


 俺はチェイグに再度忠告して駆け出す。


「……」


 チェイグは緊張した面持ちで構え、駆ける俺を見据える。……ここは少し狙いやすいように横殴りにしとくか。一番狙いにくいのは拳を振り上げるのだな。喉元が俺の方に向くからな。


「……っ」


 俺が拳を振り被り、チェイグに向かって、少し手加減した速度で振るう。


「……」


 チェイグは冷静に俺の拳を見つめ、そして軽く手の甲で叩くように俺の左手首辺り――龍の喉元を攻撃した。……そこで龍気は消える。


 ……ふむ。成功だな。


「……いい感じだな。今度はシュウで試し打ちするから、もういいぜ、チェイグ。ありがとな」


「……そうか? ふぅ。まともにくらったらホントにヤバいんだろうな。手加減してくれて助かった」


 俺が技を破られてニヤリと笑うと、チェイグはホッとしたように息を吐いた。


「……何か俺が実験体になるような方向性になってんだけど」


 シュウが野次馬の中でぎこちない笑みを浮かべながら言っていたが、とりあえず無視だ。龍気だけの威力で、レイヴィス越しにどれくらいダメージを与えるのかを調べなければならない。


「……いいから来いよ、シュウ。クラス代表の俺が相手してやるって言ってんだぜ?」


 俺はニヤリ、と挑発的な笑みを浮かべる。


「……ここでいい格好を見せれば、俺の評価は急上昇って訳だ」


 そんな俺にカチン、ときたのか、シュウは上等だ、という笑みを浮かべて野次馬からこちらへ歩み寄ってくる。代わりとばかりにチェイグは野次馬の中にいるサリスの下へ歩いていって談笑をし始める。……仲のよろしいことで。


「……まあ、お前にそれが出来れば、だけどな」


 俺は両手を下げ直立した状態で、左手に銀色の龍を展開する。


「……あの構えはやらなくていいのか?」


「ああ。だってすぐ展開出来なきゃ実戦で使えないだろ?」


「……そりゃそうだな。闘鬼っ!」


 俺が笑って答えると、シュウは青と赤が入り混じるオーラを全身に纏って突っ込んできた。……へえ? 気でもまだまだだと思ってたが、二つ融合は出来るとはな。ちょっとは成長したじゃねえかよ。


「……けどま、俺の敵じゃねえなっ!」


 俺は左手に龍を引き連れて、そのまま突っ込む。


「……他の気を展開しないで、俺に勝てるかよ!」


 シュウも迎え討つように駆け出す。


 ……確かに、単体、しかも龍気単体では闘鬼に勝てないだろう。さっきのチェイグと違いシュウは肉体派なので俺との身体能力の差も小さい。元々の装備を考えても、シュウが守りに入ったら崩すのは尚更厳しくなる。


「……さあ、それはどうかな」


 だが俺には勝機があった。


 最近練習しているもう一つ、気の流れを読むということだ。


「……俺が勝つに決まってる!」


 シュウは拳の射程に入るかという場所で大きく踏み込み、右拳を振り被ってきた。……大丈夫だ、避けられる。


「……」


 俺はそれを身を捻ってかわすと、左拳をシュウの腹に向けて龍の喉元が上にくるように振るった。


「……へへっ」


 だが龍の牙がシュウの腹に当たるか、というところで、待機させていたらしい左手で喉元を叩き、龍気を消す。……その時シュウはしてやったり、という顔で笑った。その顔が無性に腹立たしかったので、瞬時に右手で龍を展開する。


「……へっ?」


 それを視界の端で捉えたシュウは、ポカン、とした顔をする。


 そんな隙を見せたシュウに、俺は容赦なく右拳を捻じ込んだ。


「……ごはっ!?」


 シュウの腹に捻じ込まれた龍の口から、溶岩が放たれる。レイヴィス越しでもかなり熱を感じるだろうそれをくらいその衝撃で後ろへ吹っ飛んでいくシュウだが、まだ龍の怒りは収まらない。


 溶岩によって吹き飛ばされたシュウを、溶岩が収まったかと思えば嵐(雨、風、雷)が襲う。嵐が収まると、そこに蔓が絡み付き、端から発火していく。火がシュウを覆ってしばらくして焦げさせてから消えると、さらにそこへ突如として発生した津波が襲う。最後に、盛り上がった土の壁が二つ、シュウを挟んだ。


「「「……」」」


「……俺、手加減してもらってよかった……」


 クラスメイト達は唖然として口を開けていたが、チェイグだけが一人、呆れたように、心底助かったように、何かを悟ったように呟いていた。


「……チッ」


 俺は出来がイマイチで、舌打ちする。……一発成功しただけで軽く呼吸が乱れる程体力を消費したか。これじゃあ本番で連発出来ない。単発で使う分には問題ないだろうが、何分連続攻撃だ。途中で抜けられたら無駄打ちになる。


「……おーい、シュウ。今の出来がイマイチだったから、もう一回頼むわ」


「「「鬼かっ!」」」


 俺が土の壁に挟まれているシュウに声をかけると、俺以外全員(・・・・・)がツッコんだ。


「……あれ? シュウ無事だな」


 それに気付いたのは俺の次はチェイグ。もしかしたら魔力を感知して分かってるヤツもいたかもしれないが、土の壁を割って出てきたシュウがいたのだ。


「……当たり前だろ。こいつは仮にも闘鬼を発動してたんだぜ? 龍気一個じゃ闘鬼とレイヴィスのコンボを敗れる訳ないだろ?」


 俺は何でもないことのように言う。事実、何でもないことだ。


「「「……心臓に悪い……」」」


 クラスメイト達はぐったりとして言った。


 俺は笑ったまま再びシュウと対峙し、その後もシュウで試し打ちした結果、龍の口から効果一つの一点集中を放つ、ということで落ち着いた。


「……俺を、殺す気か……ぐふっ」


 とは俺の練習に付き合ってくれたシュウのコメントだ。

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