トーナメント発表
本日二話目
シア先輩とアンナ先輩に出会った、というか向こうから接触してきたのだが、まあ二年三大美女をコンプリートしてしまった日。
俺はあの後いつもの場所、と言われイマイチピンとこなかったものの、すぐに早朝鍛練の場所だろうと思いすぐに向かった。
そこでしばらくセフィア先輩を待って来たところで案の定、気まずい空気が流れたが、セフィア先輩から謝ってくれたため、その後はスムーズに仲直り出来た。
だが早朝鍛練は一緒にやらないことにした。
クラス対抗戦が近いため、互いに精進し、本番でどれ程強くなっているか、という剣士然とした結論に至ったのだ。
そして組み合わせ次第では準決勝で当たるので、その時は正々堂々戦おうと言ってその場は解散した。
そうなれば俺も負けてはいられないので、翌朝のいつもより早い時間に鍛練を開始した。
本番までに俺が会得したい技術は二つ。
仙気と気の形状変化だ。
前者の進み具合は前から取り組んでいるので半分ぐらい、という感じだ。
後者については、俺以外で確認されていない。剣気が刃の形を取る俺だからこそ挑戦するモノだ。
鬼気が鬼の形を取るとか、龍気が龍の形を取るとか、そんな感じのモノだ。
実を言うと、もう八割程度完成している。
あとはどんな効力を発揮させるかの調整だけだ。
鬼気は効力がパワーアップだけなので悩む必要はないが、龍気は様々な効果を発揮出来るので、どういうモノにしようか悩むのだ。
龍気で出来ることを全て詰め込むのもいいんだが、そうするとどうしても気の消費が激しくなってしまう。そこは調整が必要だろう。
「……ふぅ」
……俺は集中するため一息つき、重心を低く構え左拳を腰辺りに構える。
「……龍気」
俺は静かに呟く。
すると、左腕を中心に龍気の銀色のオーラが纏われる。オーラは左拳から肘にかけて、さらに空中にも漂っている。
そこから一気に力を込めることで、銀のオーラは龍へと姿を変えていく。左拳の方が頭、空中にまで胴と尻尾がある感じだ。
……で、効力を決めてないからまだ発動出来ないんだが。
まあでも、即興で嵐とか吹雪とか決めてもいいが、それだと普通の龍気でも出来る。というか、発動の時間差がない分普通の方がいい。形状変化をやる意味がなくなってしまう。
形状変化をすることで応用性が増す、それが狙いだからな。
……まだまだ色々課題が多そうだ。
俺は一人、ため息をついた。
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「今朝、クラス対抗戦のトーナメント組み合わせが決まった」
朝、アリエス教師は開口一番にそう言った。
最近こればっかりだと思うが、クラスメイト達は生唾を飲み込む。
俺はといえば、もう発表するのかと、変なところで感心していた。
……まあ、ある程度場所は決まっているらしいので、すぐに決められるか。
「……運が良かった、と言っておこう」
アリエス教師はそう言うと、一枚の紙を取り出し左手に持ってチョークでトーナメントを書いていく。
「一年SSSクラスは、ここだ」
アリエス教師は右の一番端に1‐SSSと書いた。……一番端、か。他のクラスがどうなのか分からないから何とも言えないな。
「シード二つは、ここだ」
そう言ってアリエス教師は一番左に三年SSSクラス、左側の一番右端に二年SSSクラスを書いた。
……運が良かったってのは、そういうことか。
俺とクラスメイトは、納得していた。
トーナメントの半分に、最強のシード二クラスが固まっているからだ。その分こっち側のクラスは二つ多くなるが、それを差し引いても最強のクラスとは最低でも決勝でしか当たらない、と言うのが、一番いい組み合わせなんだろう。
「だが、次のSSクラスが面倒だ」
少し緊張が解れたクラスを引き締めるように、SSクラスの場所を書き込んでいく。
二、三年のSSクラスが、こちら側だった。勝ち上がれば俺達と戦うのは二年の方だ。三年とは準決勝でしか当たらない。……五戦で決勝か。
「残りはこうだな」
アリエス教師は続いて他の組み合わせも書き込んでいく。
……シードクラス二つが左側にいるため俺達側の方がクラスが多い。まあそれは問題ない。勝ち上がれば回数は関係ないのだ。
俺達の一回戦の相手は三年Cクラス。どの程度の強さかはよく分からないが、油断せず確実にいけば勝てると思う。俺はこれでもクラスメイト達の強さを信頼しているのだ。
……他が予想を立てたら、ベスト四は二年と三年のSSSとSSクラスだろうが、俺はどこか嫌な感じが這っているように思えた。
おそらく、その嫌な感じの原因は一年Gクラスにあるのだろう。最近、いい噂を聞かない。Gクラス筆頭、実技試験で騎士団長と冒険者筆頭の二人を相手にして半殺しにするという暴挙をやってのけた強者だ。褒められたものではないが、強いことには変わりないんだろう。俺の懸念が正しければ、クラス対抗戦のダークフォースになるかもしれない。
「……まあ、各々予想を立てることもあるだろうが、次の実技の授業に遅れないようにしろ」
アリエス教師はもうすでに近くのヤツと雑談し始めているクラスメイトに苦笑して言い、早々に立ち去った。