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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第二章
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男の信念

「……チッ。だが気の五つ融合を使えようが魔力がないことには変わりねえんだ! 俺が負けるかよ!」


 先輩はしかし、俺が五つの気の融合をしようとも余裕そうな態度を崩さない。……う~ん。気の感知はあんまり得意じゃないみたいだな。それと、今回は剣だけじゃなくて全身にも気を纏っているので身体能力もかなり向上しているハズなんだが。


「闘鬼!」


 先輩は全身と武器に青と赤のオーラを纏う。……気の二つ融合、ねえ。五つ融合と二つ融合じゃあ、格が違うんだよ。


 いくら魔力があったって、気で身体能力に差がつけば、それがそのまま勝敗に繋がるんだけどな。


「……ソードレーザー!」


 先輩は切っ先に魔方陣を展開し、突きを放つ。切っ先から白いレーザーを放ってきた。


「……おっと、とっ!」


 俺は横に跳んでそれを避け、踏み込む足に力を込めて鋭く突っ込んでいく。……相手が驚いて剣を握る手に力を込め、俺と鍔迫り合いでもする気なのか、その準備態勢に入るのが完璧に確認出来た。


 ……ここ最近は仙気の会得のために気の流れを読むってことをやっているからな。今の段階だと相手の動きを先読みするまでには至らないが、相手が何をしようとしているのかは分かる。


 ……まあ、受けようとするのは構わないが、気での強化の差を考慮すれば、そんなに腕に力を入れたところで受け流せなければ、吹っ飛ばされるとは思わないんだろうか。


「……俺のこと、嘗めすぎだろ」


 少し苛立ちを感じる。……まあ、毎度のことなんだけどさ。こうも毎回毎回嘗められるといい加減面倒になってくる。俺が戦うヤツってこんなんばっか。


「お、らぁ!」


 俺は思いっきり、両手で柄を握り剣を振るった。


「っ!」


 先輩は俺の一撃を剣で受けるが、身体ごと吹っ飛んでいく。……だからそう言ったんだ。声に出して言った訳じゃないけど。


「……龍戦剣!」


 俺は剣を大上段に構え、一気に振り下ろして橙色の波動と嵐と斬撃をまとめて飛ばす。しかも闘鬼で威力が上乗せされている。


「くっ!」


 先輩はそれを防御姿勢で受けて呻く。……いや、硬気で軽減するくらいのことはしなさいよ。魔法で防ぐヤツやってもいいよ?


 先輩の制服が裂けて中に着ているYシャツが見えると同時、少しYシャツに切れ目が入ることでさらにその中に着ているモノがチラッと見えた。


 ……レイヴィス着てるんだけど。準備良すぎねえ?


 俺は今のためにレイヴィスを着込んでいるんじゃないかとさえ思った。


 ……俺なんか制服で戦っているってのに。卑怯な。


「……チッ。調子に乗るなよ! ソードスネーク!」


 先輩は再び切っ先に魔方陣を展開すると、剣を振るって斬撃を繰り出す。


「……避けられねえよ」


 俺は突っ込む足を止めているのを見て、避けるのに専念するように見えたのか、ニヤリと笑ってそう言った。


「シッ!」


 鋭く息を吐くと同時に剣を振るう。切っ先の魔方陣から出ている鞭のような斬撃は、剣の動きに沿ってうねり動く。……おぉ、そんな魔法もあったな。


 どうやらこの先輩は、遠距離の魔法も使うようだが、基本の戦闘は剣を使用して発動する魔法を使うようだ。


 ソードレーザーもソードスネークもそうだ。


「ファンソード!」


 剣を左右に振ってさらにくねくねさせてから切っ先と魔方陣を放し、違う魔方陣を切っ先に発動させて剣を一閃する。


 すると、切っ先から直線上に斬撃が残った。丁度扇形になるのだ。


「……おっと」


 ファンソードを屈んで避けつつ迫りくるソードスネークを剣で受け流す。


「……くらえ。フレイムファング!」


 屈み受け上と右を防がれた俺に向けて、先輩は魔法を放ってくる。


 炎で出来た長い牙を持つ怪物の口が迫ってきた。……なかなかいい手だな。相手を追い詰めるまでの淀みのなさがいい。


「……けど、甘いよな」


 俺はニヤリと笑い、剣を右片手で持つと左拳を握り地面に叩きつける。


「……森林異常繁殖!」


 龍気の起こす現象の一つで、枯れた大地でも数秒で森林を生やすことが出来る。……結構気の消費が激しいし、しかも枯れた大地に生やしたはいいが、その後生きていくだけの栄養がなくて……、というケースもある。


 俺は気をコントロールして出来るだけ野次馬は入らない範囲に密林を生やす。……ついでに先輩を蔓で数秒自由を奪う。


「……さて。気の感知はまだまだらしいし、魔力がない俺を感知するのは難しいだろ? だが心配するな。どこにいても変わりねえ。森林火災!」


 俺は蔓を苛立たしげに斬っている先輩を感知しながら言い、再び左拳を地面に叩きつけた。


 すると俺が殴った地面から火の手が上がり、一気に燃え広がっていく。


「あっつ……!」


 先輩の声が聞こえる。……ちなみに俺は熱くない。だって俺が放った攻撃だし。自分の生命エネルギーで自分の生命が傷付けられるとか、そんなアホらしいことないと思うんだが。


「……俺は燃えないが、あんたは燃えるぜ」


 俺は先輩に告げる。俺の気が生み出した炎が先輩に襲いかかるのを感知したからだ。さらに動揺させる狙いだが、結構ビビるんじゃないかと思う。


「……くそっ! ウォーターヴェール!」


 先輩は舌打ちして魔法を使った。ウォーターヴェールは水の膜を張って熱や炎を防ぐ効果を持つ。


 滅多にないが、火事が起こり消火するより早く助けないと中の人が危ないという場合によく用いられる。他には少しだが水中に入っても呼吸出来るため、潜水に使われる。


「……じゃあ、消火しようか。嵐!」


 俺はニヤリと笑ったまま剣を脇に抱え、両手を前に伸ばして銀のオーラに他四つを混ぜて相乗効果を得たモノを発する。


 そこから生み出される、強風、豪雨、雷鳴。


 嵐が森林火災を襲い、鎮火させていく。時折雷で木々を薙ぎ倒し、滅茶苦茶にしていく。


 ついに先輩の姿が見えると、俺は意識的に雷を先輩に向かわせ、瞬間雷鳴が轟く。


「……っ……!」


 いくらレイヴィスを着ているとはいえこれは効いたのか、黒焦げになりガクリと膝を着いた。


 本物の雷と比べるとやはりいくらか威力は劣るので、即死レベルではない。


「……降参するか?」


 俺は瀕死の先輩に尋ねる。


「……誰が、降参なんてするかよ……! 俺はお前に勝って、セフィアを手に入れる!」


 俺を睨み付ける形でボロボロで上はレイヴィス下は焼け焦げたズボンという格好だが、しっかりと立ち上がり、そこには偽りない闘志が見えた。

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