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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第二章
43/163

真剣勝負

本日一話目

 生い茂る緑に囲まれた草むら。


 太陽は僅かに傾きを見せているーー放課後だ。


 ライディール魔導騎士学校の寮、C棟の裏にある森。


 その内部に一ヶ所だけある開けた草むらに、俺はいた。


 今日は特別に放課後の鍛練をするということで、今朝会ったこの場所でセフィア先輩と対峙していた。


 二人共愛用の武器を持っての対峙になる。


 何故こんな今から決闘でもするかのような状態なのかというと、五分程前のセフィア先輩の一言にあった。


「実際にルクスが私より強いことを証明しろと言われてもしルクスが負けた場合、怪しまれてしまう」


 ということだ。


 それに俺が、


「……魔力をあまり使えないヤツが、ほぼ気同士の戦いで俺に勝てると思ってんのか?」


 と好戦的に答えてしまったため、こうなった。


 じゃあもうこの際はっきりさせよう。どっちが本当に強いのか。


 ということで、バトルをすることになった。


 セフィア先輩に言わせると決闘らしい。だが俺の活気があるとはいえ、あまりズタズタにしてもいけないので出来るだけ寸止めというルールにしてある。


「「……」」


 俺は木の棒を中段に両手持ちで真っ直ぐ構え、セフィア先輩は左腰に下げた刀を鞘に収めたままにして左手は鞘を握り、右手で柄を握っている。


 完全に、臨戦態勢だった。


 空気は一触即発。合図はもちろん――


「「剣気!」」


 そう、剣気の発動だ。


 俺は木の棒の柄の先から先端までを右手の指でなぞっていき白い剣気の刃を出現させる。


 セフィア先輩の刀の刃の部分に白いオーラが纏われる。


「っ!」


 まず、俺が動いた。


 居合いを初手とするセフィア先輩と戦うなら、先手を取るのが普通だ。そして通常の相手なら居合いの射程に入ったかと思わせて大振りをさせ、かわしてから攻撃するのが必勝法と言えるだろう。


 だが近接戦闘、それも居合いの達人であるセフィア先輩と間合い取りで勝るヤツなんてそうそういない。


 だから俺は、居合いを受ける。


 そんなことをすれば普通の武器なら斬れて持ち主がやられる。寸止めと言われて寸止め出来る程居合いは柔じゃないのだ。


「っ……!」


 俺は刀がくる右側に剣を構え、正面から駆けて突っ込んでいく。


 セフィア先輩は僅かに目を見開くが、すぐに目を細めると、俺が間合いに入った時点で刃を走らせていく。


 鞘走りを利用した最速のそれは、微かに残像を残して俺の首を狩ろうと迫る。


「「なっ……!」」


 そして剣と刀がぶつかり、驚きの声を上げた。どちらか、ではなく二人共がだ。


 俺はあっさりと剣気の発動によって構成させる刃の気が斬られたことに驚き。


 セフィア先輩はおそらくだが、ただの木の棒であるハズの俺の武器が全く斬られずに剣気を纏った刀の居合いを受け止めていることに驚いたのだろう。


 俺とセフィア先輩は半ば呆然としつつも武器を引いて後退し、距離を取る。


「「……なあ」」


 そして二人同時に声をかける。


「……先輩からどうぞ」


「……いや、ルクスからいいぞ」


 ハモったことにハッと顔を見合わせてから互いに譲り合う。……互いに今までなかったことだから真剣な戦いの中で相手に声をかけたんだろうな。俺は気の刃が斬られたことなんてないし、セフィア先輩は鉄もレイヴィスをも斬る達人だから木の棒が斬れなかったことなんてないんだろう。


「……ふぅ。まさか俺の剣気が斬られるとはな。剣気だけの錬度なら俺より上かもしれないな。俺が切断力のない木の棒で、そっちが切れ味抜群の刀だとしても、まさか斬られるとは思わなかったぜ」


 俺は嘆息して正直に言った。こういうのは打ち明けた方がいい。


「……私も、まさか剣気単体とはいえ剣気を纏わせた居合いで斬れない木の棒があるとは思わなかった。自慢ではないが、これでも気の三つ融合でレイヴィスを斬ったのだが」


 セフィア先輩は苦笑して言った。……レイヴィスを斬ったことは自慢していいとは思うんだがな。


「……ま、これはただの木の棒じゃないからな」


 俺は半ばでパックリと斬られてしまった剣気を一旦消して相棒を軽く叩く。


「……恐ろしく頑丈な木……まさか世界樹の枝じゃないだろうな!?」


 セフィア先輩がとんでもないことを言ってくる。……いやいや、世界樹を傷付けるのは大罪だから。


「……そんなまさか。元々はホントにただの木だけどな」


 俺は首を振って否定する。


 世界樹とは、この世で最も美しく最も巨大な世界の至宝だ。傷付けたら世界樹を守るエルフ族はもちろん、世界中から追われる身となってしまう。


「……こいつは剣気が刃の形をしてしまう俺のために生育された木で、何人もの錬気が注入されている。錬気が練り込まれた水、土、空気の中で育ち、時には直接錬気を注入して育てた木の中で最も頑丈かつ最も気を伝えやすい枝を選んで武器とした棒だ」


 鉄や他の鉱物が構成される間ずっと錬気を充満させるのは容易ではないが、植物ならそれが出来る。


 だから幼い頃から気を受け気に馴染みとても頑丈なこいつは俺にとって最高の武器と言える。


「……それで私の居合いで斬れなかったのか。蓄積された膨大な量の錬気が詰まっているのだろう」


 気をほぼ専門として戦うセフィア先輩は、さすが理解が早い。先輩の言う通り、気ってのは蓄積していくモノだ。


「……んじゃ、ちょっと嘗めてたことを謝るか。悪い、居合いを止めてそのままいけると思ってた」


「……私も謝ろう。すまない。居合いが当たればあっさり勝てると思っていた」


 互いに見誤ったことを謝り、剣を構える。今度はセフィア先輩も両手持ちで真っ直ぐ中段の構えている。


「……っ、闘鬼錬剣!」


 今度は全力。セフィア先輩はいきなり気の四つ融合を発動させる。


 ……今朝やったばかりなのにもう自分で発動出来るのか。さすがとしか言いようがないな。まあ今朝俺がやった気に気を乗せていく方式なんだが。


「……気の師匠として、折角だからその先を見せてやるか。ーー闘鬼龍錬剣!」


 ならば、と俺は気の五つ融合を見せるために発動させる。


 俺は木の棒の刃に当たる部分を右手の指でなぞり、刃を展開していく。


 いつもの白い刃ではなく、闘気の青、鬼気の赤、龍気の銀、錬気の水色が縦の線に分かれ刃となる。


「気の五つ融合……! まだまだ先があるのか!」


 セフィア先輩は驚いたように言うが、その口元には楽しそうな笑みが浮かんでいた。


「……そして」


 俺は刃だけでなく、全身にも気をたぎらせる。


「錬硬龍闘鬼!」


 水色、黄色、銀色、青色、赤色五つのオーラを纏う。


「……しかも気を乗せていく方法ではなく、普通に融合させるとは……!」


 セフィア先輩は言うと、駆け出してきた。


「錬硬気、闘鬼」


 走りながら全身にも気を発動していく。……やっぱ遠距離攻撃が出来るのは剣気だけか。もったいないな、折角強いのに。気は満遍なくつかえることによって何倍にも強くなるってのに。


「……いくぜ。らぁっ!」


 俺は言ってから剣を振るう。青と赤の嵐が巻き起こり、その間に斬撃が通る。


「っ!」


 セフィア先輩は目を見開くが、立ち止まらずに刀を連続して振るい、斬撃を放って相殺していく。


「「っ!」」


 そして、自然と刃を交えたくなって駆け出した俺と、激突する。


 鍔迫り合いから始まり、激しい剣撃へと移っていく。

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