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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第一章
29/163

カオスな教室

 フィナが鬱憤を吐き出すような長い説教をした後、アイリア、俺の順で風呂に入り、ようやく眠りについた。


 ……と言っても、俺の体内時計は正確に出来ているらしく、いつもの時間に起きた。


 あまり寝ていない二人は熟睡していたので、ソッとベッドを出た。今日はフィナがお怒りなのでベッドにはいない。


 寮の裏にある林の中に少しだけ出来た草むら。いつも早朝の鍛練をしている場所だ。


 そこで少し鍛練して、昨日のことが噂になっていないかと不安に思う。……特にアリエス教師に呼び出しとかされそうだ。


 まあ、フィナには口止めしといたから俺達だとバレることはない……ハズ。


 多分使った魔法がアイリアのだとバレて呼び出しされそうだ。……はぁ。そう考えると今から憂鬱になる。


「っと」


 雑念が入ってしまったせいか、転んでしまった。


 ……実戦だと転ぶことなんかないのになぁ。相変わらず、鍛練で油断すると転ぶ。


 俺は草むらに仰向けになって、晴れ渡る晴天の空を見上げる。


「……ふあ」


 不意に欠伸が込み上げてきて、眠気に襲われる。あんまり寝なかったからな。


 草むらのせいで木陰に入ることもなく、ポカポカした日光を全身に浴びる。


 ザアァ……と風がそよいで気持ちいい。


「……あっ……」


 それをさらに感じるために目を閉じてしまってから気付いた。


 まずい、と。


 俺は再び重い瞼を開けることは出来ず、眠りに落ちていった。


 ▼△▼△▼△▼△


 意識が浮上する。


 ……。

 …………。


 しかし瞼が重くて、起き上がる気にはなれなかった。


 身体も重い。もう少し寝ていたい。


「……って、やっちまったぁぁぁぁ!」


 俺は飛び起きた。


 ……バッと空を見上げて、太陽が真上にあることに愕然とする。


 遅刻だ。完全に遅刻だ。


 しかも、行方不明からの遅刻だ。


 早朝俺がどこかに行っていることはクラスの大半が知っているし、散歩だと言っているから朝いないことは問題ないだろう。


 しかし。


 昼まで姿を現さないとなれば話は別だ。気の感知より魔力の感知、をモットーにする世間で、俺を見つけられるヤツは気を重点的に鍛えた武人とかだろう。……まあ要するに結構誰でも見つけられるんだが。


 それでも俺がここでのうのうと寝ていたと言うことは、放っておかれたんだろう。その内来るだろうとかそんな軽い気持ちだったのかもしれない。


 だがしかし、俺は来なかった。


 つまりは、説教が待っているかもしれないと言うことで。


「……学校、行きたくねえ」


 俺は憂鬱になった。


 俺は私服で鍛練しているため、一旦部屋に戻らなければならない。


 一応スペアキーは持っているので、何とかなるっちゃなるんだが。


「……はぁ。ま、諦めて行くかぁ」


 俺はため息をついて、立ち上がる。


 俺は目標のため、真面目に学ばなければならないのだ。


 俺は覚悟を決めて、寮の方へと歩いた。


 ▼△▼△▼△▼△


 ガラッ。


 やや早歩きで廊下を歩いたので、少し息を整えてから教室のドアを開ける。


 今は休み時間なので、グループごとに談笑しているハズ……なんだが。


 一言で言って一年SSSクラスの教室内は、カオスだった。


 カオス。


 混沌。


 どっちでもいい。だってどっちも一緒だからな。


 兎に角色々とヤバかった。


 まず、アリエス教師が困り顔で教卓に座りながら足をブラブラさせている。……ちょっと可愛い。でも何でそんな大人っぽくないことをしているんだろうか?


 クラスの女子の大半が、唸ったり呻いたり落ち込んだりと色々な反応をしている。


 クラスの男子の大半が、唸ったり呻いたり落ち込んだりと色々な反応をしている。


 オリガは頭から煙を吹きながら机に突っ伏している。通常状態だな。


 イルファは机に頭を乗せてリオを指でグリグリしている。……止めてやれよ、可哀想だろ。


 レイスは魂が抜けたかのように動かない。いつもの無表情とは違う。


 リーフィスは冷気を周囲に放って凍らせている。その顔はかなり不機嫌そうだ。すでに男子生徒一名が氷付けにされていた。……助けてやれよ。凍死するぞ。


 チェイグはいつも通りようだ。苦笑している。……いや、氷付けのヤツ助けようぜ? な?


 フェイナはボーッと虚空を見つめて暗く微笑んでいる。……俺の癒しの笑顔はどこへ……。


 特に酷いのは、二人だ。


 フィナは机に一定のリズムで頭をガンガンぶつけている。……結構強そうだぞ? 大丈夫か?


 アイリアはボーッとしているかと思うと、急に顔を真っ赤にしたり、首をブンブン振ったりと挙動不審だ。


 ……この二人関しては、壊れてるんじゃないか? 一体、俺のいない間に何が?


「おぉ、ルクス!」


 俺に最初に気付いたのはアリエス教師だった。……まるで待ち望んでいたかのような歓喜の声だ。


 そして、アリエス教師の声で俺に気付いたクラスメイト達。


 クラスの大半には睨まれ、他は悪化の一途を辿った。


 アイリアは完全にショートし動かなくなり、フィナはさっきよりも速く頭をぶつけ、リーフィスは氷河を拡大させてさらに男子生徒二人を犠牲にし、オリガの頭が爆発し、フェイナがニヤリとした笑みを浮かべ、レイスはぱったりと倒れ、チェイグが腹を抱えて笑い出し、イルファは危うくリオを潰しそうになり……。


「何だこのカオス!?」


 俺は悪化した状況に、ようやくツッコんだ。


「「「てめえのせいだごらああぁぁぁぁぁ!!」」」


 俺のツッコミは紳士淑女であるクラスメイト達からの怒号で掻き消された。


 ……おかしいな?


 いつもは「うふふふ。アイリア様、今日もお美しいですわ」などと言うアイリアのお付きが汚い言葉で怒鳴ったぞ?


 だが俺には、そんなに怒られることをした覚えがない。


「ルクス! よく来たな。遅刻の件をチャラにしてやるからこの状況を何とかしろ」


 元々はお前が原因だからな、とアリエス教師は嬉々として言った。こうして笑っていると、本当に子供みたいだ。


 ……しかし、俺が原因とはどういう了見だろうか。俺は昨日は兎も角として、今日は寝ていただけだ。何かをしたとは思えない。


 ……と言うか、何だ。強いヤツに限って症状が逸脱してるのは何故だ?


「俺が原因って……。とりあえず状況の説明をしてくれよ」


 何とかするのは後回しにして、アリエス教師に聞いた。


「……あれは、今日の朝のことだったーー」


 アリエス教師は物憂げに語り出す。何故こんなことになっているのかをーー。

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