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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第四章
146/163

第二回かくれんぼ

 セフィア先輩と早速早朝鍛錬を取りつけて実施したその日から、また普段通りの授業が始まった。


 俺が苦手としている座学も、俺が比較的得意としている実技も、等しく行われていく。


 授業が行われれば行われるほど、クラスメイト達がどれほど夏休みの内に成長したかがわかって非常に楽しかった。

 全員見違えるようだった、と言ってもいいかもしれない。とはいえ俺以外は俺がやられた後親父に挑んだらしく、ある程度知っていたそうなのだが。


「事前に伝えていた通り、今日は以前にも行ったかくれんぼを行う」


 俺達一年SSSクラスの面々は、伝え聞いていた通りレイヴィスに着替えてサバイバル演習場前に集合していた。

 アリエス教師は夏過ぎの暑さが残る時期でも変わらずゴスロリファッションである。


 サバイバル演習場は、だだっ広いだけじゃなく森まで備えたかくれんぼに最適な演習場である。場所によっては小川まで流れているという徹底振りだ。

 このかくれんぼ授業は前に俺が考案した授業で、気を鍛えてないと俺に手も足も出ないけどいいんだな? という発破をかける意味合いで実施した。魔力を補うためにアイリアとペアで鬼をやり、全員をさっさと捕まえたというのも今ではちょっと懐かしい話だ。


「今回も鬼はルクスとアイリアにやってもらう。前回との違いを見せるためにな。制限時間は、一応一時間と決めておくか。前回どれだけの時間しかかからなかったか覚えているか?」

「「「ニ十分でーす!」」」


 アリエス教師の言葉に、クラスメイト達は声を揃えて半ば自棄っぽく答えた。やった側の俺達としては、まぁちゃんと悔しがってくれたなら良かったかなというくらいだ。


「そうだ。だからこそ今回、どれだけ捕まらないでいられるか、そして一時間逃げ切ることができるのか。そういう観点で成長が評価される。……当然、鬼も成長しているわけだから結果が変わらないなんてこともあるだろうが。前回同様武力行使はありだ、存分に足掻けよ?」


 アリエス教師は不敵に笑って告げた。それから、俺達へと目を向ける。なにか発破をかけるようなことを言えってことか?


「そういうことだ。けどま、精々最短記録を更新しないようにな」

「ええ。こっちも本気で行かせてもらうから」


 俺が殺気にも似た気迫を身に纏い、アイリアが二本のグングニルを携えて膨大な魔力を放つ。俺達の威圧はそれなりに効果があったらしく、クラスメイト達も表情を引き締めていた。


「では一分後に二人が出る。それまでに隠れるなりしろ」


 アリエス教師の合図があって、ほとんどの生徒は一斉に森の中へと逃げていく。……こうなるか。


 待機している俺とアイリアの正面には、逃げずに仁王立ちしている二つの人影があった。


 片方は戦闘狂のオリガ。こっちはまぁ予想できている。今も全力で戦えることを楽しみにしているようだ。

 もう片方はリーフィスだった。全身から冷気を漂わせて、一分かけて辺り一帯を氷結の大地へと変えていくようだ。


「……言っておくが、一分経過する前に鬼へ攻撃するのは反則とするぞ」


 念のためだろうが、アリエス教師が告げる。おそらくリーフィスの氷漬けを懸念してのことだろう。

 逃げている間は感知しないルールなので、のんびりと一分間待つことにした。


「一分経過だ」

「凍りなさい」


 アリエス教師が一分経過したことを告げた直後、リーフィスが俺達を氷漬けにしてくる。大きな氷塊に包まれてしまったような状態だ。めっちゃ寒い。凍えそうだしさっさと出ないとな、と思っていると氷越しにオリガが黒鬼を発動して殴りかかってきているのが見えた。氷漬けの状態で叩き壊されたら痛いじゃ済まないんだけどな。


「穿て、グングニル」


 アイリアの声が聞こえたかと思うと、氷塊が粉々に砕け散った。俺が動くまでもなかったようだ。

 俺は内功を発動。黒鬼状態で突っ込んできたオリガの鳩尾を殴りつけた。ほぼ同時、アイリアもグングニルの能力でリーフィスに接近しリーフィスの身体を打ち払う。


「なるほど、この二人が俺達の足止めをして時間を使わせようってことか。アイリア、補足できてないのは?」

「イルファさん、フィナ、あとはレガート君ね」

「そっか。俺も一人、レガートのヤツだな。……ったく。気まで隠せるようになったか。この短期間でやりやがる」


 気の感知を広げてみたが、たった一人だけ感知に引っかからず完璧な隠蔽を施しているヤツがいた。前回のかくれんぼでもいいなと思ったレガートだ。魔力と気の両方を完全に隠し通している。俺ですら見つけられないのだから、おそらく気と魔力ではあいつを見つけられないのだろう。視認するしかない、か。


「一つ、訂正しておくわ」


 アイリアに打ち払われていたリーフィスだが、倒れ込む様子はなく耐えていた。アイリアの一撃を氷の壁を形成して受けた上に、衝撃を受け流したらしい。どうやら課題だった運動能力が改善しているようだ。


「私達はあなた達を足止めするために残ったんじゃなくて、倒すために残ったのよ」


 自信に満ちた断言の後、オリガが立ち上がる。……しっかり急所を突いたはずなんだけどな。タフなヤツだ。


「いってぇな。やっぱりヤりやがる。楽しくなってきちまうよ、なぁ!」


 戦闘狂、オリガは凄惨に笑うと体勢を立て直して俺の前に立ち塞がった。……さっき殴りかかってきた時の姿勢も、より威力を発揮できるように変わってたな。やっぱりラハルさんに武術かなんかを叩き込まれたっぽいか。スロースターターもなくなったみたいだし。


「流石にこの二人を無視して他を探す、ってのは無理だよなぁ」

「そうね。効率良くいくなら、ここで二人を倒して捕まえてしまった方がいいわ」


 俺とアイリアの意見は一致した。


「――神魔装・グングニル」

「悪いが、一瞬で決めるぞ」


 アイリアは制御に成功したらしい神装と魔装の同時展開を行い、俺は内功の上に黒気を発動した。


 オリガへと肉薄した俺は、オリガの目が俺の動きについてこれていないことを確認して全身に漏れなく拳を叩き込む。後半の何発かは逸らされたり受けられたりしてしまったが、大半が直撃したことで彼女の身体は吹き飛び何回か地面を跳ねた後で力なく停止した。

 すぐに解除しておく。所要一秒、ってところか。黒鬼使ったオリガ相手に手加減なんてできるはずもない。最初に切りたくはなかったが、切らざるを得ない相手だっただけの話。


「くっ!」


 汗だくになりながら呼吸を整えつつアイリアとリーフィスの戦いを眺める。リーフィスが若干押されていた。分が悪い近接戦に持ち込まれていて尚“若干押されている”程度に収まっていることが、彼女の成長を意味している。ただアイリアの神魔装は俺の内功と外功の両立ほど強烈でない故に制限時間がないのか、余裕そうだ。

 リーフィスが二本の槍を操って攻撃を仕かけているのを、リーフィスはちゃんと身体を動かして回避しながら氷で反撃して対処していた。だがやはり間合いを取った戦い方が性に合っているのか、距離を詰められているとやりにくそうだ。リーフィスは理事長のところで修行したそうだが、理事長は近接も強いと聞く。その辺りを重点的に補完するように修行をつけつつ、全体的な能力も向上させたというところだろうか。


 間一髪であっても氷を挟み込んで防いでいたリーフィスだったが、アイリアの技巧が上回り直撃を受けてしまった。体勢を崩し追撃に対処する術も間に合わない、というところで。


「一点集中・絶冷吐息」


 リーフィスがなんらかの技を放った。手から吐息のような白い冷気を放つが、槍を突き出しているアイリアの左手に届いたのは、リーフィスの身体を打った後だった。明らかに間に合っていない。追撃を貰ったリーフィスは吹き飛び、倒れ伏して気絶していた。

 だが、神魔装を解除したアイリアの表情は曇っている。最後に攻撃を受けた左手――凍てついて動かなくなったそれを見下ろしていた。


「……やられたわね」


 悔しさと相手への称賛が入り混じった顔で、アイリアは呟いた。そして槍でリーフィスに触れると空間転移でアリエス教師の下へと移動させ、捕らえる。


「ああ。実際に凍ってるわけじゃなく、時間を止められたってところか?」

「ええ。グングニルの能力で全体を停止させられることはないと踏んでいたんだけど。能力を一点に集中させることでそれを突破してくるなんて。……それに、彼女がまさか後に託すような真似をするとも思っていなかったわ」

「確かにな」


 アイリアの正直な感想に思わず苦笑してしまった。……最後、リーフィスが狙ったのはアイリアの手だった。これでアイリアは左手で槍を操るのが困難になってしまったわけだが、その代わりとしてリーフィスは敗退している。直接アイリアを倒すのではなく、他のヤツが有利になるように行動したのだ。以前のリーフィスなら、他人には興味がないとばかりの態度だったのだが。


「痛手を受けたな。大丈夫そうか?」

「問題ないわ。私のことより、ルクスこそ大丈夫なの? さっきのって疲労が激しいんでしょ」

「まぁな。けどたった一秒ならそう気にするほどじゃないだろ。それより時間食っちまったし、さっさとやろうぜ。一網打尽にするいい案があるんだが、乗るか?」

「話は聞くわ、判断はそれからよ」


 二人が戦っている間にオリガの方は捕まえておいたので、早速他のヤツらを探しに行くとする。


「案と言っても簡単なモノだ。盗み聞きされてる可能性があるから、テレパシー使ってくれるか?」

「ええ」


 アイリアに頼んで、頭の中で会話できるテレパシーの魔法を使ってもらう。


『聞こえてるか?』

『ええ、問題ないわ。それで、案っていうのは?』

『簡単だ。俺が龍気を使って補足してる全員を空中に打ち上げるから、そこをお前が槍で仕留めてくれ』

『わかったわ。対処された場合は?』

『臨機応変に。具体的に言うと先に回復が得意なヤツを狙いたい』

『いいわ、乗ってあげる。その案でいきましょう』


 アイリアの了承が取れたところで、俺は屈み地面に手を突く。内功を一旦止めて補足している全員の足元で龍気を発動、地面を隆起させ木々を越えて十メートルの高さまで打ち上げた。そこかしこから戸惑いの声が上がる中、アイリアが神魔装を構える。……チッ。何人か逃したか。


「神魔装・多岐」


 アイリアの投擲した槍は、瞬く間に先頭の方にいた者を攻撃して昏倒させていく。だが、


「……防御術式」


 打ち上げられた生徒の中の一人であったフィナが、静かに呟いて三分の二の生徒を障壁で攻撃から守った。


「魔力を感知させないようにしてたから大人しくしてるのかと思ったけど、どうやら違うようね」

「……アイリア相手に勝つなら、皆いた方が楽」


 空中に着地したフィナとアイリアの視線が交錯する。二人の間に火花が散っているようにすら見えた。二人は同室として仲良くしているが、同時にライバルっぽい部分もあるのかもしれない。


「倒せたのは十人か。でも、もう二人は回復させられてるな」

「ええ、随分と手際が良くなってるわね」


 クラス対抗戦の時も回復を担当していたフェイナとシーナが一人ずつ着地と同時に気絶した者のところへ走って回復させていた。回復速度も上がっている。特に母さんが師事したというフェイナは明らかに早かった。もう二人目にも取りかかっていて、今治したところだ。


「厄介ね」

「じゃあそっちは頼むわ」

「了解。ルクスは?」

「俺はその他大勢を片づける」

「そっちは任せるわね」

「おう」


 アイリアと言い合って、俺は木の棒を肩に担ぐ。


「誰が、その他大勢だよこら」

「流石に心外だな」

「ええ、嘗めてると痛い目見るわよ」


 木陰から続々と姿を現したのは、見知った顔のクラスメイト達。シュウ、チェイグ、レイスを筆頭に大勢が俺を取り囲むような配置だ。


「嘗めてはねぇよ。けど、正直レイスがこっちにいるのは意外だったな。てっきりアイリアの方に行くんだと思ってた」

「私もそうしようかと思ったのだけれど、どうしても一対一で倒したいっていう子がいたから譲ったのよ。私、可愛い子には弱いのよね」


 前回そうだったから今回もそうなのだろう、と思っていたのだがやれやれと首を振っていた。おそらくレイスの言う可愛い子というのは、唯一アイリアの真正面で構えているフィナのことだろう。……本音を言うとフィナの潜在能力は底が知れないからなぁ。夏休みの変化によっちゃアイリアでも負ける可能性がある。となると俺が残り全員を倒さなきゃいけなくなるんだが。


「ま、いいか。ここで全員倒せば、問題はねぇ」


 言って、内功の上に黒気を発動。二秒を費やしてその場にいた大半を一撃の下沈めていく。


「……それが気の到達点? 全く目で追えないわね」


 唯一残しておいたレイスが、冷や汗を掻きながら告げてきた。


「そりゃな。俺でも、扱い切れないくらいだ。まだまだ時間が必要だよ」


 少し息を切らしながら口にする。


「それで? なんで私だけ残したの? ついでに殴っていれば倒せたじゃない」

「そりゃ、お前は弟子みたいなモノだからな。なにもわからずに倒すのは良くないだろ」

「……律儀ね、別の授業なのに」

「授業中だからできることだろ」


 言って、内功のみを使った状態で対峙する。レイスも複数の気を融合させて身に纏った。


「よく見ると、体内の気が高速で動いているわね。それで身体を活性化されてる、ってところかしら」

「そんなところだ。レイスなら、順当にいけばいずれ会得できるだろうから、今は肌で味わうんだな」

「ええ、そうするわ」


 二人同時に駆け出して、俺の方が速く真ん中に辿り着く。ただしあまり表情が変わらないためか、レイスの表情に焦りはなく。冷静に俺の速度を先読みして攻撃を仕かけてきた。レイスの強みは複数の気の融合という俺が教えたモノを除くと、軸を回転させる特有の武術と、攻撃の瞬間に内臓と気の両方を揺らしてくるから、昔なら厄介だった。直撃しなくても手を掠めれば体勢を崩すことができる、のだが。


「っ……」


 レイスの掌底を軽く弾いてやると、僅かに驚きが見えた。きちんと手には当たっていたからだろう。そこに衝撃波を与える衝気を強めにしてレイスへと軽く拳を当てて、全身を激しく揺らす。ぐらりとよろめいて膝を突いた。少なくともしばらくは動けないだろう。


「俺が今使ってる内功ってのは、体内の気を制御してないと使えないからな。お前の攻撃手段の対抗策にもなる。衝撃の方は、衝気で相殺したってところだ」

「……それで、完全に無効化したわけね。純粋に格上相手だとやっぱり、キツいわ」


 気で上回られたら俺の価値がなくなるけどな。とは流石に言えないのでなにも言わなかった。


「ところで、パイオツは至高だと思わない?」

「は?」

「いえ、フィナちゃんを抱っこしているあなたならその素晴らしさがよくわかっていると思うのだけれど」

「……いきなりなに言い出すんだよ」


 時間稼ぎが目的か? 一瞬頭が空白になりそうだったぞ。集中を切らすのは得策じゃないな。


「いえ、ただの雑談よ」

「――そういうことっ!」


 レイスに呼応して、反対側から人影が飛び出してきた。振り返ればイルファがいる。……耳と尻尾があるな。リオの方か?


「結局時間稼ぎかよ」

「ええ」

「じゃあ、爆発にしよう! 致死性は下げておくから、大人しく爆破されてね!」


 リオはあっさりと決めて、俺の身体に魔方陣を描く。……こんな魔法は知らないが、体内の気に異物が混じってるな。


「体内の気を爆発するようにしてみたよ! ちゃんと威力は抑えてあるから安心して――逝ってね?」

「悪いが、それだと俺には効かないな」


 クラス対抗戦の時にやられた、魔力を爆発させる術。あれを見て思いついたのだろうが極悪すぎる。気は生命体なら誰しもが持っているモノだ。威力を抑えなかったらどんな相手にでも致死攻撃ができるということになってしまう。

 だが内功を会得した俺には通用しない。異物の混じっている気のみを体外へと放出した。すると俺の周囲で爆発が起こる。


「えっ……?」

「俺は体内の気を制御してる。だから、爆発させられる箇所だけ放出してしまえば防げるってことだ」

「そんなことってある!? もうっ、代わるね!」


 リオは拗ねてしまったのか、イルファに交代してしまった。だが耳と尻尾が消える様子はない。顔つきがイルファのモノに変わったというくらいか。


「もう、リオったら。じゃあルクス君。今度はボクがやるね」

「リオと融合しても交代できるのか」

「うん。できるようになったんだよ。ボクは基本的な魔法を、リオは特殊な魔法を得意としてる……戦い方は丸っきり違うから、気をつけてね?」

「言われなくても――ッ!?」


 イルファと対峙してこっからが本番、と思った矢先。足元から危機が迫っているという直感があった。勘に従って即座に離れると、足元に倒れていたチェイグの影からレガートが姿を現している。


「……一切気配を感じないってのはヤバいな、おい」

「その気配を感じないはずの攻撃を避ける方もね」


 若干冷や汗を浮かべながら笑うと、レガートも完璧な流れだと思っていたのか避けられたことに苦笑していた。


「……チェイグの作戦は失敗ね。あと少しのところだったのに」

「あいつの作戦だったのか。レガート一人を勝たせるよりも、皆で勝ち取るってか?」

「それもあるけど、皆強くなった自分達を見て欲しいんじゃないかな。だから鬼を二人共倒す方針にした」

「ルクス君とアイリアさんが一網打尽にしてくるってところまでは読んでたから作戦通りの流れだったのに、予想よりルクス君が強かったのかな」


 一網打尽の案がバレてたのか。多分戦略云々よりも、俺の性格をよくわかっている。まぁ友達だしな、仕方ない。


「ならチェイグがどこまで作戦を用意してるのかは知らないが、ここからは全力でぶつかり合うだけってことだな」


 言って、俺はレガートとイルファを相手に戦い始める。二人共が魔法で中・遠距離から攻撃するタイプなので、レイスが立てない今距離を詰めてしまえば勝ちを拾いやすい。レガートは多少近接もできるのだが、流石に内功を使った俺には通用しなかった。悔しそうだったのは、いい傾向かな。


「隙を見せたわね」


 だが二人を打倒している間に、フェイナがこっそり近づいてきて回復したレイスが不意討ちをしてきた。


「悪いが、フェイナを誘き出すためのわざとだよ!」


 言ってレイスを返り討ちにし、近くにいたフェイナを気絶させる。……これで俺の方は終わったか。一旦アリエス教師のところまで運んでおくか。

 そろそろ最初に気絶させたヤツらが目覚めてもおかしくない時間だ。さっさと捕まえたという判定にしてしまおう。


 ということで、アイリアの方は気にせず一度戻って全員を捕獲扱いにしておいた。これで残りはフィナとリリアナだけか。随分と俺に戦力を割いてくれたもんだな。


「戻るなら早く戻った方がいいわよ。多分、アイリアさんが負けてるから」


 最初に捕まったリーフィスが、俺に対して忠告してくる。……確かに気を感知しても、アイリアが大きく消耗しているのは間違いなかった。


「みたいだな。まぁそれなら、俺が残り二人を捕まえるだけの話だ」


 アイリアとフィナ、どっちが強いかは正直興味がある。消耗させてくれれば俺が捕まえやすくなる、というのもあるが、二人の勝負の行く末を見てから動けばいいだろう。最短記録はもう無理だが、一時間以内には捕まえられるはずだ。


「さて、どっちが勝つかな」


 俺は呑気に、しかし勝負が着く前には戻れるように歩き出すのだった。

他作品は今月更新できません、すみません。

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