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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
序章
14/163

超エリートの授業態度

「……」


 俺の不信任決闘の後、連絡事項がありSSSクラスのみ授業を行った。今年は特に強いヤツが多く、より確実に成長させたいと言うことらしい。


「……」


 今は魔法理論の授業だ。今日は午前で終えるらしく、基本的なおさらいをするだけらしい。


 ……俺には魔法は全く関係ないので面白くもない。しかも、俺は対魔法のため少し勉強したので魔法の対処法なら大丈夫なんだが、理論になるとさっぱり分からん。


「……すー」


 隣のフィナは新しい寝方で睡眠中だ。授業の始めに言っていたが、アイリアとフィナと逆隣のチェイグと魔女のイルファが筆記試験での満点者だ。


 因みに実技試験の満点者は、俺とアイリアとフィナとイルファと氷使いのリーフィスと毒蜘蛛のリリアナと怪力のオリガだ。


 フィナだけが寝ているものの、イルファはリスっぽいリオを愛でているし、リリアナは何もせずにいるし、オリガは基本的なことなのに知恵熱出して突っ伏しているし、リーフィスは面白くなさそうに窓の外を見ている。


 ……自由だな、お前ら。


 エリート中のエリートで真面目なのはアイリアとチェイグだけか。一応オリガもしようとはしてたな。


 さて。フィナの新しい寝方だが。


 男子はもちろん、他の女子にも出来ない寝方だ。


 自分の胸を机に乗せて、その上に突っ伏している。……フィナだけに許された寝方だな。小柄なおかげもあるし。


 ……一部の男子はフィナに見入っていて集中出来てない。


「……フィナ」


 そのことをどうにかしようと思ったのか、アリエス教師がフィナに声をかける。


「……すー」


 フィナは一向に起きない。


「……はぁ。ヴァールニア。起こせ。男子が集中出来ん」


 アリエス教師はため息をついて言う。


「……フィナ」


 俺はフィナの身体を揺すって声をかける。


「……?」


 ポヤーッとした顔をして起きるフィナ。


「……フィナ。お前は理論を理解出来ているからいいが、男子が集中出来ん。胸を机の上に置くな」


 アリエス教師が呆れて言った。


「……重い。邪魔。肩凝る」


 フィナは不満げに言い返す。すると、女子のほとんどから恨めしい視線を向けられた。……まあ、それは自慢しかならないってのが胸の小ささを気にする女子の見解だよな。


「……せめて乗せるな。いざとなれば隣のバカを使っていい」


「……一体誰に、言ってんだよ」


 アリエス教師が俺を見て言うので、眉を寄せて呟いた。


「……」


 気付くと、フィナがジッと俺を見ていた。俺の顔に何か付いてるんだろうか?


「……分かった。ルクスに頼む」


 フィナは俺から目を離すとアリエス教師に向いて言った。……何で俺の許可なしに話が進んでいくんだろう?


「……抱っこ」


 フィナがこっちを向き、両手を伸ばして言った。


「えっ?」


 声は俺だが、他も同じような顔をして驚いていた。


「……抱っこ」


 フィナは少し拗ねたように繰り返す。


「……まあ、いいけど」


 フィナは精神と身体がまだ幼いからな。甘えたいお年頃なんだろう。


「よっ」


 フィナの両脇を抱え、こっちを向かせたまま膝に乗せる。


「……これでいい?」


 フィナは俺に顔を埋めながら言う。おそらく、アリエス教師に向けてだ。


「……まあ、そのバカも授業に集中していないからな。いいだろう。条件として、各学期一回の定期試験では追試にさせるな」


 ……定期試験なんてあるの? 理論とかさっぱりなんだけど。


「……ん。余裕」


 フィナは言って、完全に俺に身体を預ける。……件の胸が押しつけられると言う状況になってしまった。女子に免疫のない俺にはキツい。理性を抑えるのがキツい。だがしかし、フィナにそう言うつもりはない。ただ単に甘えたいだけなんだ。


「……ルクス、お父さんみたい」


 フィナは嬉しそうに言う。


「……そうか」


 フィナさん? 俺に加齢臭があるって意味じゃないよね? どういう意味かは知らないが。


「……まあ、お父さんって年齢じゃねえから微妙かな」


 俺は苦笑して言う。


「……確かに。ルクス、お父さんよりおっきい。抱っこされる」


 んん? フィナはお父さんを抱っこする側なのか? どんなサイズ?


「……なでなで」


「ん?」


 フィナが顔を上げて俺に言った。


「……多分、撫でて欲しいんじゃないか?」


 俺がそれに首を傾げていると、隣のチェイグが声をかけてきた。


「なるほど」


 撫でるのはなんとなく分かったが、撫でて欲しいってことだったか。


「……よしよし」


 俺は左手でフィナの頭を撫でてやる。


「……ん」


 目を閉じて再び顔を埋めた。


 それから少し経って。


「……なでなでねむねむ」


 そのままでフィナが言った。今度は何だろうか。


「……撫でられて眠いってことじゃないか?」


 再びチェイグが声をかけてきた。……なるほど。ねむねむは眠いとかそういう意味があるのか。


「……別に寝ていいと思うぞ。アリエス教師、お前が寝ることは注意してないからな」


「……ん。ぎゅってして」


 フィナはキュっと抱き着きながら言う。


「……はいよ」


 俺は微笑ましくなってフィナを右腕で抱っこしながら、左手で頭を撫でてやった。


「……すぅ」


 数秒で静かな寝息が聞こえてきた。


「……翻訳してくれてありがとな、チェイグ」


 俺はフィナを撫でるのを止めて、声を潜めてチェイグに言った。


「……まあ、経験の差だな。妹や弟のお守りが多かったから」


 チェイグは苦笑して言った。


「……そうか。ま、これからもよろしくな」


「……ああ」


 チェイグは少し嬉しそうに笑う。……二つ違いとは言え、二つも違う。馴染めるか分からない状況で、男の話し相手が出来たからだろうか。


 俺も、男の話し相手は欲しいから良かったが。

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