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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
序章
13/163

ルクス不信任決闘

 ……そういや、そんなのあったな。


 俺は半ば強制的にライディール魔導騎士学校敷地内にあるコロシアムに連れてこられた。


「……はぁ」


 俺はそのコロシアムの真ん中ぐらいで、俺にいちゃもんつけてきた金髪の男子と対峙していた。


「……その貧相な木の棒を構えろよ、インチキ野郎」


 ……インチキ、ね。そう思うのは勝手だがな。


「……それだと、俺のインチキに騎士団長も加担したってことになるよな。なら、インチキを許した騎士団長に直談判してこいよ」


 俺は木の棒を抜き、左手だけで持つ。


「違う。お前が騎士団長にインチキを使って勝っただけだ」


 ……なるほど。面倒だな。こんなヤツと同じクラスになってこの先大丈夫なんだろうか?


 上手くやっていける自信がない。突っかかれたら返り討ちしてしまいそうだ。


「……じゃ、そのインチキをお前にも見せてやるよ」


 コロシアムにはレートが表示される大画面があって、俺とこいつのどっちが勝つか、賭けられていた。


 人数比は七対三で向こうが多い。


 向こうには大半の男子と女子。


 俺の方にはアイリアやフィナ達の超エリートと残りの女子、数人の男子だ。


 ……まあ、俺の前評判からすると妥当だな。魔力ないヤツが魔力を持つヤツに、しかも強い騎士団長に勝つにはインチキを使うしかない。


 俺に賭けた最後の人はアリエス教師だった。……賭け事を生徒に許可して、俺を使って稼ぐつもりらしい。俺は二倍になるしな。


「……一方が参ったと言うか気絶したら決着だ。それまで気を抜くな。尚、この勝負の勝敗は今後のクラス対抗戦などに影響するからな」


 アリエス教師が拡声器を使って言う。


「準備はいいか?」


「……はい」


「おう」


「それでは、開始!」


 アリエス教師の声と同時に、俺は突っ込む。


「っ! ウッドウォール!」


 しかし、地面から木が出てきて壁を作り遮る。


「……邪魔だっての」


 俺は木の棒のままそれを斬って、突破する。


「……木、火、水、風、雷、土、氷よ。我の敵に牙を剥き、蹂躙せよ! ワールドファング!」


 俺の四方八方に七つの属性が出現し、獣の顔となって一斉に襲いかかってくる。……仮にもSSSクラスだけあって、結構な使い手らしい。ワールドファングは本来光と闇も加えて完全版なんだが、そこまでの実力はないらしい。それでもすぐに活躍出来るくらいの実力は持ち合わせているようだ。


「……剣気」


 俺は刃があるかのように手を滑らせ、白い刀身を出現させる。


「鬼剣。乱鬼流!」


 さらに刀身を赤に変え、連続で振っていくつもの赤い斬撃を生み出し、ワールドファングを切り裂いた。


「……」


 ワールドファングを切り裂くと、相手は両手直剣を構えて突っ込んできていた。……しかも、剣に鬼気と剣気をかけて、自身は錬気と闘気を纏っている。


「はぁ!」


 手堅く、オーソドックスで理にかなった戦闘の運びだ。


 まず簡単な防御出来る魔法で時間を稼ぎ、魔法を詠唱して強力な魔法を放ち、弱るか突破した敵にトドメを刺す。


「……ま、甘いけどな」


 俺は斬りかかってくる相手を、渾身の一振りで弾き返す。


「っ!?」


 相手は驚いて目を見開き、フーッと大きく息を吐いて心を落ち着かせる。……なかなか冷静だな。


「……龍剣」


 刀身が銀色に変わる。ついでに俺も銀色のオーラを纏う。


 俺の分かっている龍気とは、纏うと神秘の衣の劣化版の効果が得られ、しかも身体強化もされる。


 攻撃の際には様々な現象を引き起こすことが出来る。それは龍が色んな現象や災害に例えられたからだろう。


「なっ! 龍気だと!?」


 相手も他の観客も目を見開く。……いや、俺の気を感知すれば龍気が使えそうなレベルだって分かると思うんだが。まあ、気より魔力を優先して感知出来るようにするから、気の感知は出来ないヤツもいると思うが。


「……ビビったか?」


「……な訳ねえだろ!」


 俺が笑って言うと、相手は怒鳴って突っ込んできた。


「……甘いっての」


 俺は小さく呟いて、相手の振った剣を掻い潜る。


「っ!」


 俺は相手の腹目掛けて龍剣を振り、当たる寸前で剣気を解き、龍気だけで叩きつけた。


「ぐほっ!」


 相手の身体がくの字に曲がり、十数メートル吹っ飛んでいく。


「……」


「……ゲホッゲホッ。何で剣気を解いた」


 相手はむせて口元を拭いながら聞いてくる。


「ま、俺にはお前を殺す気がないってだけだ。剣気使うとマジで斬れるからな。あのままだと、今頃真っ二つだぜ?」


 俺は肩を竦めて言う。剣気に他の気を乗せることで力を発揮出来るんだが、別に棍棒のように叩いても使える。……剣気を活かせる武器なだけだ。


「……参った」


 相手は剣を収め、両手を挙げて降参を示す。


「……潔いな」


 俺は意外と冷静な相手に感心しつつ、木の棒を収める。


「……引き際を判断するのも、一流の条件だ」


 そう言ってドヤ顔を浮かべ、去っていく。……今絶対カッコいいと思ってるだろ。そんなにカッコよくないからな? お前から突っかかっといて、勝手に負けたんだからな?


「……それでは、ルクス・ヴァールニアの勝ちとする。……チッ。もう少し賭けておけば良かったな」


 アリエス教師は割りと本気でそう言った。

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