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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
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次期生徒会候補

お久し振りで申し訳ないです。


次話は来週更新できると思います。

 校内団体戦の決勝戦後、目覚めた俺が授業に出たその日の放課後のことだ。


 俺はなんとかフィナを宥めて単独行動させてもらい(具体的にはアイリアに預けて)、俺を庶務に勧誘した人の下を訪ねていた。


 というか、シア先輩だったのだが。


「ちょっと久し振りな気がするわね、ルクス」


 俺を勧誘した当人は柔らかな笑顔で俺を迎えてくれた。アンナ先輩とセフィア先輩、それにエンアラ先輩もいる。


「ああ。身体の方はもう大丈夫なのか?」


 準決勝で手酷くやられていた覚えがある。見たところ傷はないが、一応聞いた。


「うん、大丈夫」


 優しい笑みからは無理をしているような様子はない。会長のことだ、俺を乗せるために『完治できる酷い怪我』に調整したのだろう。


「なら良かった」


 怪我ならルクスの方が酷かったと思うけど、という声が聞こえた気がするが気のせいだろう。


「それでルクス、返事を聞かせてくれる?」


 シア先輩が早速本題に入る。もし俺に断られたら再度役員争奪戦に参加しなければならないため、急ぎ答えを聞きたいのだろう。


「わかった」


 今日今までで色々考えていた。

 他に宛はあるだろうし、俺でなければならない理由は特にないはずだ。それでも俺を選んでくれたことは嬉しいし、受けたい気持ちもある。だが生徒会がなにをすればいいかがわからなかった。……こんなことならもっと学校について知っておくべきだったと後悔しながらチェイグに話を聞いたんだが。

 庶務の仕事は基本雑用みたいなもので、庶務がやらないといけない主だった業務は少ないそうだ。大半が他の役員の補助などらしいので、俺でもできそうではある。

 チェイグからは再来年生徒会をやる時、生徒会を選ぶ時に誰がいいかを実際に体験できるからやってみるのもいいと言われた。


 チェイグ自身も同年代にあまり推せそうなヤツがいないとかで、一度生徒会の仕事を体験するために人を集めるらしい。……意外と酷いこと言うよな、あいつ。まぁ俺も知っているヤツの中ではアイリアと、それこそチェイグぐらいなんじゃないかと思ってるが。


「俺で良ければ、受けようと思う」


 正直向いていないと自分でも思うが、折角誘われたからな。普段俺がしようとしないことに挑戦するのもいいのかもしれない。


「良かった」


 シア先輩はほっとしたように笑う。アンナ先輩とセフィア先輩も同じような顔をしていた。エンアラ先輩は割とどうでも良さそうにしている。……俺とあまり接点がないから、受けても受けなくてもどっちでもいいと思われていそうだ。


「けど、なんで俺なんだ?」


 正直なところ、他に適任がいると思う。


「多数決ね」


 シア先輩が言い、アンナ先輩とセフィア先輩が頷く。エンアラ先輩が嘆息しながらやれやれと首を横に振っていたので、おそらく三人が俺を挙げてくれたのだろう。……買ってくれるのは嬉しいんだけどな。


「まぁ、選んでくれたんならそれに見合うようには頑張るけどさ」


 生徒会というある意味生徒の代表たる集まりの一員になるなんて、今までだったら考えられない。本音を言えば俺みたいな礼儀知らずがそんな役目を果たせるとは思えないのだが。


「大丈夫よ。ルクスはルクスらしくしててくれれば。あなたはそのままでも、人を後押しする力があるもの」


 シア先輩が微笑んで言ってくれるが、買い被りすぎだ。俺にそんな力はない。


「それに、ルクスなら戦力としても問題ない。加えて同じ生徒会役員なら一緒にい――鍛練できそうだからな」


 セフィア先輩が豊かな胸の下で腕組みをして言った。途中で別のことを言いそうだったような気がするが、気のせいだろうか。


「……はぁ。私は認めてないからね」


 三人が賛成派なのに対し、エンアラ先輩が空気を壊すように告げた。


「三人は君みたいに敬語使わない無礼君がいいんだろうけど、私は別にそういうんじゃないから。言っとくけど、仕事できないならいらないからね」

「わかってるよ。そこは頑張らせてもらう、ってことでよろしく」


 エンアラ先輩とこうして面と向かって話すのは初めてだ。信用されてないのは当たり前。とりあえずは握手するために手を差し出す。


「いいわ、ヘマしないでよ?」


 先輩は俺を試すようににやりと口端を吊り上げた。そして俺の差し出した右手を右手で掴む。流石に握力が高くてちょっと痛い。


「……私としては、エンアラに会計は務まるかの方が心配」

「計算苦手だからな、エンアラは」

「アンナにばっかり頼ることにならなきゃいいけど」


 しかし三人がそう呟いたことで、先輩としての威厳が崩れて顔を真っ赤にしていた。


「うっさいもう! そこはもう、地道にやるんだから!」


 ……計算できないことは否定しないのか。


「……なんか言った?」

「いや、なにも」


 失礼なことを考えていたせいか、ぎろりと睨まれてしまった。気を使えば対抗できるにしても、純粋な身体能力では遠く及ばない。うちのクラスで言えばオリガと同じようなタイプなのだろう。怒らせない方が身のためだ。


「とりあえず座って話しましょう。おさらいも含めて、ね」


 シア先輩が言って、俺は促された席へと座った。


 それからシア先輩が説明を行っていくがおさらいと言うだけあって簡単なことばかりだった。

 俺が覚えておくことは、庶務の仕事内容と生徒会体験の詳細だ。

 庶務の仕事はさっき言った通り他の役員の仕事を手伝うこと。シア先輩は柔らかく説明していたが、要は使いっ走りだ。あとエリアーナ先輩が行っている業務も引き継ぐ可能性があるらしい。それについては体験中に学ぶだろうとのことだった。

 体験では各生徒会役員と同じ役職に就く予定の生徒が、現在役職に就いている生徒の仕事に触れることが主になる。引き継ぎが必要な業務の概要を説明したり実際に手伝ったりするため、やっておくと近い将来有利になることもあるらしい。とはいえ別に体験中の態度などが生徒会戦挙に関わってくるわけではないが、そこで周囲の信頼を得られれば選別した次期生徒会候補五人としての評価が高まり票を集められる可能性もある。

 まぁ、真面目にやっておいた方がいいってことだな。


「体験は来週一週間、放課後に行われるわ。初日の集合場所は別途お知らせがあるでしょうけど、一応伝えるわね。会長が生徒会室、副会長がコロシアム、書記がアリーナ、会計がサバイバル演習場、庶務が昇降口よ。忘れないようにね」


 その一言で説明を締めると、今日は一旦解散となった。……のだが、セフィア先輩が久し振りに手合わせをしたいと言ってきて、俺も断る理由がなかったために受けたら結局見学するとかでついてきてしまった。

 解散すると言いつつも人数は変わらず、セフィア先輩と手合わせして汗を掻いて疲れたというのに、エンアラ先輩が俺と戦いたいと言い出して二連戦する羽目になった。


 まさか白鬼とガチで真正面から殴り合うことになるとは思わなかったが。……ある程度気の融合を使った上での手合わせだったが、本気でなかったとはいえ白鬼との乱打戦を経験できたのは大きい。オリガと違って本能に流されるまま戦うわけではないので純粋に身体能力の高い戦士と戦っているような感覚だった。エンアラ先輩が本気だったならわからなかったかもしれないな。

 まぁ俺も先輩も武器を使わず殴り合うだけの手合わせだったから、それだけで測れることはあまりないが。高い身体能力にもついていけた、という事実があればいい成果だったろう。


 手合わせを経てエンアラ先輩とも少し打ち解けた気もする。今度うちのオリガを紹介する約束を交わした。きっと気が合うだろう。

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