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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
序章
12/163

自己紹介

「私はアイリア・ディ・ヴェースタン・ライノアよ。種族は人間で、得意は魔導かしら。あとは……“双槍の姫騎士”と呼ばれているわね。これからよろしく」


 女子は「はぁ……」と羨望の眼差しを向け、男子はその人間離れした美貌に見蕩れていた。


 アイリアは右から二番目の前から二番目だ。自己紹介は立って言っていく。


「私はリリアナよ。種族は……毒蜘蛛のアラクネよ。得意は毒殺ね。“魔性の毒蜘蛛”なんて呼ばれてるわ」


 右から三番目の前から三番目のスラリとした長身でスタイルの整った、美少女と言うより美人と言った方がいい女子が言った。


 種族を言うことに多少の躊躇いはあったものの、終始妖しげな笑みを浮かべていた。……確かに魔性って感じだ。


 腰まで長い艶やかな黒髪に切れ目の黄色い瞳もリリアナの妖しさを引き立たせているようだ。


 男子の中には魔性に呑まれる者と遠慮する者といて、女子もそんな感じだった。


「……フィナ。“神童”って呼ばれてる。種族は……」


 フィナの番になるが、種族の所で口をつぐみ、チラッとこっちを見る。


 俺が何だ? と目で聞くと、目を逸らして口を開く。


「……魔人」


「「「っ!?」」」


 俺含む、クラス全員が目を見開いて驚く。何だと……?


「……アリエス教師」


「……っ!」


「……何だ?」


 クラスがざわめく中、俺が挙手すると、フィナがビクッとなった。……怯えた小動物みたいで可愛いと思ったのは内緒だ。


「……魔人って、どんな種族なんだ?」


 ガクッ。


 フィナ含むクラス全員がガクッとなり、アリエス教師が頭痛がするようにこめかみを押さえる。


 ……何だよ、皆揃って。俺がいない間に打ち合わせでもしたのかよ。


 魔人なんて、聞いたことがない。珍しい種族なんだろうか。


「……人間側の偏見が混じる説明になるが、構わないか?」


 アリエス教師はフィナに聞く。


「……ん。別にいい」


 フィナはそれにこくん、と頷く。


「……魔人と言うのは、かつては亜人の部類ではなかった。魔人はその絶大な魔力と気を持つことから、人、人と魔物の中間であると言う亜人、魔神の生まれ変わりであると言う魔人の三種だった。そして、魔人は少数派でありながら人と渡り合っていた種族だ。魔人が亜人に認定されたのはつい最近のことだ。世界大戦で亜人共存派に加わってから正式に亜人とされた」


 ……ふむ。


「……要するに、簡潔に言うと人間とは格が違うくらいに強い、激強い種族ってことか」


 ふむふむ。我ながら要約が上手い。


「……そうか。そう言う解釈か」


「ん? まるで、他に解釈があるような言い方だな」


「……ああ。普通、今の説明を聞いて真っ先に解釈するのは、魔人とは絶大な力を持ち、かつては人間と敵対していた警戒すべき種族だと、な」


「はあ?」


 俺はそれを聞いて思いっきり聞き返す。


「……何だ?」


「いや、だって。魔人が警戒すべき種族とか、バカの考え方じゃねえかよ。敵対していたのはもう昔だろ? 今の現状を見据えないバカの考えることだろ。だいたい、魔人のフィナがこんなに可愛いんだからいいじゃん」


「「「……っ!」」」


 フィナ含む全員がビクッとなる。……何だよ。


 特にフィナは驚いたような顔で俺を見ると、ボンッと顔を真っ赤にして、シューと煙を発し、ゴンと机に頭をぶつけるようにして倒れた。


「……ふぃ、フィナ?」


 俺は恐る恐る声をかけてみる。……どうやら、可愛いと言われるのになれていなくて照れてるらしい。


「……ぅ」


 フィナはそれから顔を上げずに、


「……得意は術式。“神童”って呼ばれる」


 と言った。


「先生、術式って何ですか?」


 敬語を使うので俺じゃない。だが、まるで俺の心を代弁したような質問だった。


「術式とは、詠唱なしで攻防治補などが展開出来る。魔人の中でも才能のあるヤツが使える」


 ……おぉ、と男子からフィナ(特に胸)を見て感嘆の声が漏れる。


 ……いや、だってさ。立ったり座ったりするだけでぶるんぶるん揺れるんだよ。隣にいる俺から見た迫力ったらねえよ。


「あたしはオリガだ。“怪力兵姫”って呼ばれてる。種族は……。オーガだ」


 右から四番目の前から二番目の席のオリガが言った。短い赤髪に燃えるような赤い瞳。耳が尖っていて、頭には茶色い角が二本生えている。かなりの長身で、百七十ぐらいあるんじゃないだろうか? スタイルは少し残念な方だ。


 冒険者筆頭か騎士団長を倒したオリガは、種族を言うのに躊躇った。


「「「っ!?」」」


 俺がオーガって種族だったっけ? と首を傾げていると、クラス全員が驚いたような顔をする。


「……あー。まあオーガってのは基本モンスターなんだが、あたしは突然変異ってヤツなんだ。身体の頑丈さと異常な身体能力を除けば普通の人間だ。その代わり魔力は少ないけどな」


 オリガは苦笑して言うが、頑丈さと異常な身体能力があれば普通じゃねえけどな。


「……おぉ。つまりは俺がちょっと魔力がある感じか」


 身体能力と気には自信がある。まあ、頑丈さはちょっと自信ないが。


「……多分、ルクスよりパワーは上」


 フィナはうつ伏せのまま言う。


「……ふーん。まあオーガだしな。質問いいか?」


 俺は納得して、挙手してオリガに聞く。


「……ん?」


「オーガってことは、親ってオーガだよな? オーガと意思疎通って出来るのか?」


「ああ、まあな。あたしだってオーガだし、言葉ぐらい通じるぞ。それにオーガの知能は低いけど、人間の言葉は分かるんだぞ?」


「……なるほど。そういや、オーガに向かって喧嘩しようぜって言うと頷いて構えてたなぁ」


 気を使わないで戦うのは至難だったぜ。


「……普通に意思疎通出来てるじゃねえかよ」


 オリガは驚き半分呆れ半分で言った。


「……まあ、得意は力仕事だな。その辺の男子よりは力があるから」


 オリガはそう言って座る。……脳筋かと思っていたが、意外と色々考えているらしい。オリガは女子だから、女子から見れば頼りがいのあるヤツに見えるだろう。


「俺はルクス・ヴァールニアだ。“出来損ない”だか“落ちこぼれ”だかは知らないが、魔力がないせいでそう呼ばれてる。あと、“刃の気使い”だったな。種族は人間で、得意は気だ。特に剣気を刃状に出来る」


 俺は特に躊躇う部分もないので、スラスラと言って座る。


「……先生、何で魔力のないヤツがエリート集団であるSSSクラスにいるんすかー?」


 金髪でチャラチャラした男子が言う。……貴族の坊っちゃん系だな。偉そうにしやがって。


「……騎士団長を気のみで倒す程強いからだ。文句があるヤツは後で決闘の許可やるから今はスルーしろ」


 俺への反発は予想していたのか、アリエス教師が言う。……用意がいいな。だが、俺に無許可で決闘させられるってどういうこと?


「ボクはイルファ。“魔女”って呼ばれてるよ。種族は人間だけど、魔女の家系に生まれて、魔法、薬調合、ゴーレム作成などが出来るかな」


 声を聞くだけなら男子とも取れるかもしれないが、見た目は魔女だ。癖のある薄い桃色の長髪に黄緑色の瞳をしている。格好はつばが広く高い帽子に黒いローブを羽織っている。スタイルは抜群で、胸はフィナには劣るものの、かなり大きい。


「この子がボクの使い魔のリオだよ」


 イルファの右肩に乗っているやたらと尾の長い黒いリスのようなヤツの頭を撫でて言う。……可愛いな。後で撫でさせてもらおう。


「チェイグ・オルバ・ハールトンだ。種族は人間で、得意なのは文学だな。二年も浪人やっているから大半のヤツより年上だ。雑学などに詳しいから、分からないことがあったら聞いてくれ」


 俺の左にいる少年が言った。浪人してまでここに入学したらしい。きっと、努力家なんだろう。


 茶髪に茶色い瞳をした穏やかな顔つきの、少し老けて見える青年。名前は貴族っぽいが、家は大丈夫なんかと聞いてみたい。俺より少し背が高い。


「私はレイス・リンクス・スフィアよ。種族は人間ね。得意は特にないけど、強いて言うならパイオツね」


 青いショートカットに青い瞳をした平坦な声音の美少女が言った。……いや、それは得意って言わねえ。エリートクラスの下ネタ担当らしい。


 席は一番左の一番前だ。


「……リーフィス・イフィクル・ヴィ・ブリューナクよ。種族は人間ね。得意は……氷よ」


 そう言って冷たい微笑を浮かべる美少女。整ってはいるが冷たい美貌に氷のように透き通った綺麗な長髪と瞳。雪のように白く透き通った肌を持つが、スタイルは残念でぺったんこだ。


 ……絶対“氷の女王”ってこいつだろ。魔力だけで言えばアイリアよりも上だぞ?


「……自己紹介は終わったな。それでは、ルクス・ヴァールニア不信任決闘を開始する」


 自己紹介を終えて、アリエス教師は俺を見据えて言った。

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