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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
111/163

神魔装・グングニル

ふぅ、これで二月十日分の更新も完了かな

(間に合ってないとか言わない)

 砂煙が神魔装・グングニルを発動させようとしたアイリアを覆っている。

 挑戦の結果と勝敗の行方はわからない。そう言おうとしたが、言う必要はなさそうだった。


 白と黒の光が砂煙の隙間から零れたかと思うと、一気に砂煙が吹き飛ぶ。


「……」


 砂煙を吹き飛ばした張本人が静かに佇んでいた。


 神装との時とは異なり、白と黒が混じった金属甲冑を身に纏っている。純白に漆黒が混じっているにも関わらずその姿は神々しい。ガントレットは主体の色が右は白、左が黒だ。逆にグリーブは右が黒、左が白となっている。ただ左右の色が対称になっているわけではなく、上半身の鎧は左右対称になっていた。どちらかというと白の割合が高そうだ。

 二本あった槍は一つになり、彼女の右手に握られていた。石突を地面に着けて立つその槍は、障壁の外にいる俺にまでピリピリとした空気が伝わってくるくらいだ。あれが放っている威圧感が、元の槍二本とは桁が違う。先端の穂が縦に白と黒で二分されており、穂の下から時計回りに槍を囲うように白く細いモノが伸びている。同じように反時計回りに白く細いモノが伸びていて、三十センチほどいったところで端と端が捻じれて重なっていた。

 額の端についた黒と白の金属が、戦いの中で汚れた金髪を掻き分けて上に伸びている。少し角のようにも見えた。


 一目見れば誰もが察した。


 アイリア・ヴェースタン・ディ・ライノアが歴史上初めて、武器錬装の融合を果たしたのだと。


「穿て、グングニル」


 神魔装を発現させたアイリアが静かに第一声を発する。

 その一言だけで槍の半分が空間を歪ませて消え、イリエラ先輩の目の前から消えた部分が出現した。


 先輩は間一髪屈んで避けたが、魔法を得意とする彼女にとって近接は不利だ。《貪木二金》に削られた七壁を展開し直し、その上周囲に障壁を作り出していた。完全に防御態勢である。


「あれは空間を無理矢理繋げたんだろうな。空間転移の応用みたいな感じだ」


 チェイグから説明が入った。……いや、空間転移ってアリエス教師ぐらいにならないと使えない高等技術なんだが。それをいとも簡単にやってのけるとか、あの槍半端じゃねぇ。流石は神の槍というところか。


「それぞれのグングニルが持っていた能力は持ってるだろうし、空間制御と物理及び魔力の貫通、あとは投げ槍として使えるだろうな。しかも聖と魔の相反する属性を併せ持ってるわけだから、相乗効果がかかって絶大な威力を誇ることに」


 反則じゃねぇかよ。


「……くそっ、天才ってマジでめんどい」


 これだから、才能があるヤツは怖いのだ。戦いの中で進化するとか頭おかしいとしか思えない。

 戦いってのはそれまでに築いていた自分の全てをぶつける場だと思うんだが。


「そう言うなよ。あれがなければそのまま負けてたかもしれないんだぞ」


 俺の呟きが聞こえたらしいチェイグが苦笑していた。……確かにそうだけどさ。


「イリエラ先輩、決着といきましょう」

「ええ、望むところよ。私の《七壁七技セブンス・アクター》の全て、見せてあげるわ」


 アイリアが槍を構えるのに合わせて、イリエラ先輩も残った魔力を掻き集めていく。


 静かに睨み合う二人だったが、


「神魔槍・覇」


 アイリアが先に動いた。槍を頭上に大きく掲げると、穂先から黒い波動がフィールド全体に広がっていく。警戒するイリエラ先輩だが、それは無意味だったと言わざるを得なかった。

 おそらくアイリアが放った黒い波動の効果は、魔力無効化だからだ。


 イリエラ先輩の張っていた防護壁なども全て消去されてしまった。


 驚愕に目を見開いた先輩の隙を突くように、アイリアは槍を再び構えて肉薄する。踏み込んでからイリエラ先輩に接近するまでが短すぎる。気を使っていない今の俺が捉えられたのは霞んだ姿だった。ということはイリエラ先輩には瞬間移動してきたようにしか見えないだろう。


「っ、《水明三刺すいめいさんし》!」


 驚いてはいたが、すぐさま技を放ったのは流石としか言いようがない。

 立て続けに、


「《五風十雨》》!」


 次の攻撃に移っていた。


 一つ目の技によって前後左右から水の針が殺到し、二つ目の技によって上から風の刃が雨のように降ってくる。

 アイリアはそれらを避けようともせず、魔力を周囲に放出して霧散させた。今彼女の魔力はグングニルのおかげで質が著しく上がっている。仮にも全校トップクラスの魔法の使い手であるイリエラ先輩が相手でも、質が上回り掻き消すくらいには。


「《雷沈煌七らいちんこうしつ》、《雪魄氷四せっぱくひょうし》」


 イリエラ先輩はそれでも諦めずに残る三つの内二つを発動させながら、アイリアと距離を取ろうと下がっていく。

 雷の沼がアイリアを沈め、大きな氷塊が飛来して襲った。


「神魔槍・乱」


 アイリアの手を離れた槍が一人でに彼女の周囲を回転し、沼も氷塊も両断した。


「《六間地獄》!」


 七技最後の一つが発動される。土の球体がアイリアを覆い、中が見えなくなった。それでもすぐに槍が球体をバラバラにしたので、無事が確認できる。


「神魔槍」


 アイリアはイリエラ先輩の七技全てを破ったところで槍をあらぬ方向へ投げた。おそらく必中の投げ槍でトドメを刺す気なのだろう。


「七技全てを見切った貴女に、とっておきをお見せしましょう。《セブンス・エグゼ》!」


 イリエラ先輩のとっておきとやらが発動する。

 二メートルほどもある七色の剣が出現し、槍を手放したアイリアを襲った。アイリアも迎え撃つが、自在に動く剣に僅か翻弄される。出来た隙を狙われ、左脚の鎧が切り裂かれた。あの神魔槍をあっさり斬りつけるのは、あの一見ただの空飛ぶ剣に膨大な魔力が凝縮されている証だろう。


 アイリアは滑空する剣を蹴り砕き、避け、拳で粉砕して迎撃する。

 七技を全て防いで圧倒してみせた神魔装・グングニルだが、どうやらそれだけの力を発揮するのに多大な魔力を消費するようだ。一切攻撃を受けていないにも関わらず、アイリアは汗を掻き疲弊した様子を見せている。


 それでもこの有利な状況下で彼女が勝負を諦め、敗北することはないのだろう。


「はああぁぁ!」


 気合いの声と共に最後の一本を砕いた。


 そして、飛来した槍がイリエラ先輩の背後から回り込み、横腹を貫く。血が噴き出し、イリエラ先輩が吐血した。今までのアイリアなら寸止めで降服を促したと思うが、もしかしたら魔装の影響かもしれない。


「しょ、勝者、一年SSSクラス!」


 レフェリーの声を聞いて、歓声が沸き上がる。


 アイリアは試合が終わった途端、神魔装を解除して崩れ落ちる。それでも座り込むだけで、なんとか自力で立ち上がってクラスのベンチへと戻ってきた。


 これで二勝二敗、勝負は最後の大将戦へと持ち越される。


 クラス対抗団体戦最後の試合が、これから始まろうとしていた。


 ……ようやく、俺の出番だ。

さて、いよいよ次はルクスVS生徒会長戦となります

お楽しみに

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