表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
108/163

フィナの強さ

どうも、お久し振りです


もう六月も終わりが近づいていますね……

月一更新と言っておいて更新してない作品があと二つ……


ああ、寝る時間ってどこにあるんでしょうか(笑)

まあ「まだ時間あるし、大丈夫だろ」と先送りにしてたせいなんで、自業自得ですが(笑)


という訳で、フィナちゃんが活躍する話です

 フィールドに向かうフィナに、一言声をかけてやる。


「勝ってこいよ、フィナ」


「……ん」


 俺の声にわざわざ立ち止まり、振り返って頷くフィナ。


 相手は生徒会書記、シェリカ先輩だ。羽根ペンで魔方陣を描くこともできる超一流の魔法使い。

 対するフィナは、“神童"と呼ばれる天才。魔人という強い種族でありながら、術式という才能ある魔人だけが使える力を持つ。


 シェリカ先輩は典型的な魔法使い故に近接が苦手だ。フィナも身体能力が高いが運動音痴で近接が苦手だ。つまりこの勝負、遠距離での撃ち合いになると予想がつく。

 実況の紹介もそれを仄めかすモノだったし、俺もそう思った。


「始め!」


 レフェリーが試合開始を合図する。その瞬間から、シェリカ先輩が動き始めた。手に持った筆で流麗に、素早く魔方陣を描いていく。


「……ん」


 しかし対するフィナは術式を展開することはしない。描かれる魔方陣をチラリと見ただけで動かない。


「? まあいいです。何のつもりかは知りませんが、圧倒するだけですので」


 シェリカ先輩は何もしないフィナを不思議に思ったらしい。しかし気に留めず、魔方陣描き続ける。さらには口でも魔法を唱え、自身の周囲に無数の魔方陣を展開する。

 フィナそれでも動かない。……いや、あれは――集中してるのか?


「……覚悟して下さい」


 シェリカ先輩が魔法を一斉に放つ。術式を使っての回避を予想してか、フィナの足元には魔方陣を展開しなかった。


「……それは、そっち」


 フィナは静かに呟く。体勢を低く構え、グッと拳を握る。まるで放たれた魔法に突っ込んでいくかのような構えだ。


「……加速術式」


 フィナからシェリカ先輩までに等間隔で連なる術式。


「……んっ」


 グッと力を込めて、跳躍した――加速術式に向けて。


「っ……!」


 シェリカ先輩は目の前で起こった事柄を、認識できなかった。視認できはしたし、おそらくフィナが何をやったかは分かる。だが、それをやってのけたという現実を拒みたかった。


 フィナは、一っ跳びでシェリカ先輩の懐に潜り込んだ。自身の展開した加速術式に向かって跳び、そのまま次の加速術式に。その結果、加速を重ねながら跳躍したことになった。そして、一気にシェリカ先輩まで辿り着いたのだった。


「……爆裂術式」


 静かにフィナが呟いた。振りかぶった右拳に幾何学模様の術式が展開される。赤と灰色が混ざったような色の術式だった。


 ドガアァン!


 フィナの拳に展開された術式がシェリカ先輩の身体に触れる。その瞬間、轟音と共に熱気と視界を焼く光が起こった。本来なら理事長が張った結界に阻まれるハズだった。しかしそれらはベンチにいる俺達まで届いた。それはひとえに一撃で、理事長の結界を叩き割ったからに他ならない。


「「「っ……!?」」」


 理事長の結界がたった一発の拳で破壊された。それは驚くべきことだったが、一番驚いていたのは結界を張った張本人だろう。


「……」


 フィナは静かに佇んでいた。その様はいつもの幼い雰囲が感じられず、魔人に相応しい佇まいだった。……俺は魔人がどういうヤツなのか、知らないんだけどな。最強の種族と言われても納得できる。

 フィナの放った一撃は、フィールドを縦に割り、結界を吹き飛ばした。直撃を受けたシェリカ先輩は相手側のベンチまで吹っ飛んでいて、気絶しているらしい。どっちにしろ場外だろう。


「……し、勝者、一年SSSクラス!」


 呆然としていたレフェリーが、我に返って勝者を告げる。

 フィナは爆発した歓声の中、ゆっくりと味方のベンチに向かって歩を進める。

 いつもここらでオチとばかりに転ぶのだが、その気配すらない。


 威風堂々と歓声に中を歩むフィナは、俺の知るフィナとは少し違って見えた。


『さすがは私のフィナたん! 圧倒的なポテンシャルを見せつけてくれました!』


 誰がお前のだよ、とツッコみたかったが、とりあえずスルーする。今はフィナの勝利を喜ぼう。


「……」


 フィナは悠々と俺達がいるベンチまで来てしまった。……「しまった」っていう言い方もおかしい気がするが、実況もおそらくそう思ったんだろう。怪訝そうな顔をしていた。

 もしかして、こっちのフィナが本当の姿で、実は運動音痴っていう設定だったのか? そう思う程に堂々とした振る舞いだった。

 実は運動音痴ではなく、ただ魔人という畏怖される種族だから、印象を緩和させるための演技なのではないか。そんな懸念を抱くには充分だった。


「……っ」


 いつもの幼い雰囲気とは違ったフィナに驚いていると、フィナの身体が前に傾いた。


 自分の足に、躓いたのだ。


「……う」


 うつ伏せに転んだフィナは、やっぱり手を着くこともなく倒れた。しかし折角カッコ良く決まっていたこともあって、フィナの涙も決壊寸前だった。うるうると瞳を潤ませて、泣きそうな顔をするフィナ。可愛いが、可哀想だ。


「……ルクスっ」


 しー……ん、と静まり返った会場の雰囲気に耐え切れなくなったフィナは、起き上がって素早く俺の胸に飛び込んでくる。ぎゅうっと抱き着いてきて、胸元に顔を埋める。


「……よしよし」


 そんなフィナを、俺は優しく撫でてやる。


『……やっっっっっっっぱり、フィナたんはフィナたんです! ナイスズッコケ!』


 実況がハァハァと息を荒くし鼻を膨らませて言った。……止めろ、フィナに追い打ちをかけるなよ。まったく、困ったもんだ。フィナは頑張ったってのに、よしよし。


「よく頑張ったな、フィナ」


「……ん」


 俺ができるだけ優しい声音で囁くと、フィナも小さく頷いた。


 背中に突き刺さる視線が痛い。

 しかし、何はともあれ一勝二敗。次に繋がった。


「……それじゃあ、行ってくるわ」


 フィナの頑張りというか強さを目の当たりにして、やる気満々のアイリアが、ベンチからフィールドに向かって歩いていく。


 その手には、神槍と魔槍。アイリアが“双槍の姫騎士"と呼ばれる所以の武器二つ。

 つまり、両方の武装を展開できなかったアイリアが、本当の本気を見せる気でいるということだ。


「ああ、行ってこい。俺に繋いでくれ」


 俺は、悠然と歩くアイリアの背中に、そう声をかけた。

 アイリアはチラッと俺を振り返っただけだったが、その瞳には自信と覚悟が宿っていた。

 アンナ先輩との超絶な魔法の撃ち合いを見せているハズだが、そんな瞳をしている。慢心するようなヤツではない。つまり、勝算があるということだ。


 実質の一年SSSクラス最強は、頼もしい限りだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ