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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
102/163

オーガVS舞姫

寝落ちしました


初めてかもしれませんが、オリガの回が始まる予定です

『さあいよいよ始まります、クラス対抗戦! 決勝戦ー! 会場も大いに盛り上がっております!』


 実況の女子が試合が始まる前から白熱した会場に響き渡る声で叫んだ。


『片や最強のメンバーが揃った生徒会の会長、副会長、書記、会計、庶務が勢揃いしっ! “熱炎の舞姫”、“二色拳聖”、“宙得手の書記”、“全知全能の女神”、そして“天才”! 二年三大美女の“剣聖”、“魔天の司書”、“魔導戦姫”が率いる二年SSSクラスを下し、その圧倒的な実力を知らしめた三年SSSクラス!!』


 改めて相手のクラスが紹介される。……三人のクラスが噛ませ犬のように扱われてるのは気に食わないが、その分も会長にぶつけるしかねえ。


『片や問題児ばかりが集う新進気鋭の一年生! オーガの突然変異“怪力兵姫”、氷系統しか使わない近接ダメダメ“氷の女王”、運動神経は悪いが身体能力も魔力も高く術式という強い力を使える“神童”、神槍と魔槍のどちらにも選ばれた“双槍の姫騎士”、魔力を持たないが最強の黒気を使える“落ちこぼれ”! いずれも他に類を見ない最強の問題児達です! 昨日の試合では同じ一年生で問題児でダークホースの一年Gクラスを下し、初出場で前年度優勝クラスに挑むのは、一年SSSクラス!!』


 酷い紹介だった充分に会場は盛り上がった。……リーフィスが「……何よ近接ダメダメって」と拗ねたように呟き、俺も「……何でそっちの呼び名使ったんだよ」と苦笑していた。“落ちこぼれ”じゃなくて“刃の気使い”で良かったのにな。


『さあ果たして勝つのは三年SSSクラスか!? それとも初出場で初優勝を飾る一年SSSクラスか!?』


 両クラスのメンバー五人と担任が並ぶだけで歓声が上がる。レフェリーの声に従って礼をするが、互いに目の前にいる相手に対して火花を散らしていた。


「……」


 火花を散らしつつも言葉は交わさずに、担任と残り四人はベンチに戻っていく。


「……っしゃあ!」


「……」


 気合い充分のオリガと、ウォーミングアップが完了して身体が温まってるオリガを見て険しい表情をするエリアーナ先輩が対峙する。


「……始め!」


 レフェリーが開始の合図を行う。次の瞬間には、全力で疾走したオリガがエリアーナ先輩の眼前にいた。


「……っ!」


 エリアーナ先輩が驚愕に目を見開きつつも、しかしそこは最強のクラスの代表を務める強者。瞬時に対処し始める。


 まだ舞を踊れていないエリアーナ先輩は、オリガと同じく先手必勝に弱い。だからこその準備運動を充分にしてきたオリガは先手を取ってそのまま攻めあぐねようとしているらしく、両拳と両脚を使った連続攻撃でエリアーナ先輩を襲う。


『おおっと? これはエリアーナさん、先手を取られてピンチを迎えてしまったぁ! 代わりに最初がダメダメなオリガさんはウォーミングアップをしてきたのか動きが格段にいい! これはチャンスだぞ!』


 実況が場を盛り上げる。


「……嘗めないでよね!」


 エリアーナ先輩は、早速舞抜きのレイヴィス殴打を放ってくる。


「……ははっ! やっぱ戦いはこうでなくっちゃな!」


 険しい表情のエリアーナ先輩とは違い、滅茶苦茶楽しそうに攻撃し続けるオリガが言って、エリアーナ先輩が伸ばして振るうレイヴィスの裾を、素手で受け止めた。咄嗟のことで遠心力が出なかったのと、オリガの身体が温まってかなりの力が出てるからだろう。


「……このっ!」


 エリアーナ先輩は両手両足のレイヴィスを捻りだけで振るい、オリガを叩くが、そんなもんじゃオリガは止まらなかった。


「……ははっ! いいぜいいぜぇ! もっとあたしを楽しませてくれ!」


 オリガは心底楽しそうに拳を振るう。さっきの攻撃がなかったかのような、晴れやかな表情で。……ちょっとハイテンションになりすぎて痛覚が鈍ってるんじゃないだろうか。ちょっと心配になってきた。


「……いいわよ、もう! あんまりやったことないけど、やってあげるわ!」


 エリアーナ先輩が自棄気味に言って、


「ラフェイン式舞踊・第壱番、炎舞踊!」


 攻撃体勢から無理矢理、半ば強引に舞踊へと繋げて、燃え盛る炎を巻き起こした。


「……おっと」


 さすがにオリガも冷静に状況を見て、一旦エリアーナ先輩から距離を取る。


「……何とか攻撃を受けずに踊りに繋げられたけど、これからが本番よ、オリガさん」


 エリアーナ先輩は情熱的に舞いながら、オリガに向けて告げる。


「……いや、まだまだだろ。先輩、それが玖番まであるの、知ってんだからな」


 オリガは言ってニヤリと笑い、グッと力を込めて体勢を低く構える。


「……やっぱり知らないんじゃない。ラフェイン式舞踊は残念ながら、拾番まであるわよ」


 エリアーナ先輩は呆れながら答える。……属性毎に一つなら、九個だろ? だからオリガもそう言ったんだろうが、じゃああと一個は何だ?


「……どっちでもいいだろ、そんなの。ただまだ先輩が本気じゃねえって話――がっ!」


 オリガは言いながら突っ込もうとしたが、伸びてきた裾に打たれて後退する。


「……そうね。でもあなたが拾番を私に使わせることはないわ」


「……そりゃどうだろうな――ぐっ!」


 エリアーナ先輩に反論するオリガだが、また裾に打たれて吹っ飛ぶ。……何だ? 何でオリガはエンアラ先輩みたいに掻い潜れない? それくらいの身体能力に差があるのか? それともただエリアーナ先輩が読みにくい動きをしているのか。


「……避けられるかしらね、私の舞踊が。ぶっつけ本番でエンアラさんみたいに避けられないのは、仕方ないわよ? だってエンアラさんのあれは、去年も私に負けてラフェイン式舞踊を解析して、しかも色鬼(しきおに)を使ってのことなのよ? いくら突然変異でも、そうそう避けられるもんじゃないと思うわ」


 そう言いながらも、エリアーナ先輩は連続でオリガを攻撃し続ける。……確かに実際見てみると、変則的な攻撃だ。


 例えば横薙ぎに振るう裾を伸ばしてきたとして、それが上なら屈んで避けようとする。だが次の瞬間には元に戻っていて、しかも滑らかに軌道を変えて縦に振り下ろすように振られて伸ばされたら、回避しにくい。しかもそれを回避したとして、次の瞬間には足首の捻りだけで遠心力を得た裾が腹部にズドンと伸びてくる。……よく掻い潜ったな、エンアラ先輩。隙を見て、と一言で言えば簡単だが、実際隙を突くのは無理だ。後ろを向く瞬間? 無理無理。魔力か気の感知で攻撃される。戦闘中に魔力か気を解除して抑えて近付くなんて、無茶無謀もいいとこだ。瞬時に振り向かれてズドーンと一発KOが関の山だろう。


 やっぱり二年SSSクラスも弱い訳じゃなく、強いんだと実感させられた。


 しかも来る、って思った裾が来なくて、その隙に別の裾を叩き込まれるという始末。オリガは見る見る内にズタボロになっていき、所々から血を流して痣を作り、息切れしていた。


 準備運動が完了したオリガが、圧倒されていたのだった。


『これはやはり! エリアーナさん強し! オリガさん、最初の勢いはどうしたのか圧倒的不利に追い込まれています! さあ、一体どうなるのか!?』


 ……ホント、どうなるんだか。

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