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第一話 標的は総理大臣 その7

「聞いたことは無いか? この国、日本には八百万の神が居る、と。皇祖神、天照大神から連なる皇室。そして天孫降臨時にアマテラスの天孫、邇邇芸命ニニギノミコトに付き従った神々の末裔などが所属する朝廷。その他にも数多くの神々やその末裔が朝廷に服属し、古来から歴史の陰に存在していたのだよ」


 白神総理は説明を続けます。その間、那岐剣という名の少年は、微動だにせず、こちらを見据えていました。


 「じゃあ、そこに居る魔人少年も、そういう存在なんだね?」


 始さんは問いかけました。余裕ぶってますが、内心では戦々恐々としていることでしょう。今までも多くの修羅場を潜り抜けてはきましたが、流石に人外に出くわしたことは、いままでありませんでしたから。


「宮内庁にはそうした高天原(たかまがはら)の神々の子孫を統括する独自の部署があってね。彼に「はそこから出向してもらっているのだよ。内閣官房に存在する、有事の際に動く極秘組織――"護国機関"にね」


 米国、ロシア、北朝鮮、……etc。今まで巡って来た多くの国々の記憶が蘇ります。しかし、目の前の彼は圧倒的に違います。なんか、出てくる作品を間違えたかのような異質さが、まざまざと感じ取れるのです。


 そう思っていると、剣士那岐は口を開きました。


「総理。実力行使を実行しますが、構いませんね」


「ああ。だが殺すなよ? そこの彼女は"範疇外カテゴライズエラー"だ。大統領へ報告する必要がある」


 剣士那岐は総理の顔を驚いた顔で見た後、了解しました、と告げ、その次にわたしの方をまじまじと観察しました。


「驚いた。地球外生命体を相手取るのは初めてだ。――だが、容赦はしない。国体を脅かすものは強制排除させてもらう」


 日本刀の刃から光が反射します。那岐だけではなく、その刀自体からも異様な殺気を感じ取れました。


「俺はこの国の民であることを誇りに思っている。それを支える総理を武力で廃止するなど笑止千万。行くぞ国賊。――俺は容赦しない!」


 剣士那岐がこちらへ刀を構えた瞬間――。 




「ちょっと待ってくれよ」


 張り詰めていた空気に、始さんが亀裂を入れます。

 

「何だ? 命乞いでも始めるつもりか?」


「まさか。この国がそんなにご大層に守るべき国じゃない、ということを言いたかっただけさ、"ネトウヨ中学生"」


始さんの台詞を聞いた瞬間、剣士那岐が呆然とした顔をしました。


「大体あれだろ? インターネッツの適当な情報と官僚や政治家の『美しき国』なんて言葉に乗せられてこんな所まで来ちゃってさ。日本には都合の悪い所もいっぱいあるのに。まあ、多感な時期にある中学生がみっともない右翼思想に傾倒するのは分かるけど、少し恥ずかしいんじゃないかな?」


 左翼思想な小学生の始さんは、飄々としながら喋り続けます。向こうで剣士がわなわな震えているのが見えました。 


「革命成功の暁には、僕が新しい日本の指導者として、しっかりと支配してあげるから。右翼思想は卒業しよう!」



 遂に、黙っていた剣士那岐は大声を張り上げました。


「無礼者っ!! 日本への侮辱は許さん! それに、我が那岐家は古来より朝廷に仕える神族の係累! その嫡流たる俺をこともあろうか"ネトウヨ中学生"だと!? 馬鹿にするなっ!!」


 しかし、その激高をも、始さんは冷静にあしらいます。


「おいおい、日本がどれだけ汚い国か、"これ"にはきっちり書かれているんだ。よく見てみるといい」


 そう言って、始さんは新聞紙と思われる紙束を放り投げました。目を凝らしてよく見てみます。





『朝鮮日報』






「どうだ! 日本がどれだけ最低の国か分かっただろ!」


 何で一介の小学生が海外の新聞を愛読書にしてるんでしょうか……? っていうか、真にうけてるわけじゃないですよね?


 向こうで白神総理が苦笑いしてるのが見えました。


「国賊どころかただの反日じゃねーか!!」


 

 ちなみに、件の新聞にも日本に好意的な記事、中立的な記事、反日的な記事など、多くの側面があります。むやみに一つの側面だけを見るのではなく、総合した自分の評価を下すことが大切ですね。



「こんな小日本は僕が滅ぼしてやるよ。アメリカの属国め!」


 

「貴様! 覚悟しろ!」


 遂に魔人剣士を本気で怒らせてしまったようです……。


「ふ~ん。新世界の帝王に逆らった罪で、君には極刑をくれてやるよ!」


 粒子砲を構え、始さんは目の前の相手に身体を向けます。


 遂に、二人の相対の幕が上がりました。





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