表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第一話 標的は総理大臣 その4

『次は、国会議事堂前ー。次は、国会議事堂前ー』

 車内放送が、遂にわたし達が目的地に着到着しようとしていることを知らせます。

「いよいよですね」

 わたしの声を聞いた始さんはほくそ笑んでいます。

「くっくっ……。いよいよ、僕が帝王となる新しい時代が始まるんだ……。見ていろよ世間め」



 駅のホームへ降りると、首から議員証明書をぶら下げたスーツ姿の人たちも、たくさん降りてきました。

 始さんと一緒に改札を出てエスカレーターに乗ります。上へと昇ったわたし達は、ようやく外の世界に出ることが出来たようです。


「わあ、ここが、国政の総本山、永田町ですか~」

「国会議事堂、首相官邸、国立図書館、政友党本部、民自党本部など、国の根幹を成す施設がいっぱいだ。隣には中央省庁の合同庁舎が立ち並ぶ、霞ヶ関があるし、青山通りを境にした隣の隼町には最高裁判所がある。ずっと向こうを見れば皇居と三菱グループ本社ビルの立ち並ぶ丸の内に東京駅。千代田区にテポドンが落ちたら、間違いなく日本はおしまいさ。」


 てぽどん、とは隣の半島に存在する、某北の国開発の戦略級核兵器です。実は、わたしはその北国に行ったことがあります。先日、始さんと供に突撃しました。「革命のために近場からテポドン材料のプルトニウムをもらって来ようよ」といつも通りの口調で言われたので、連れて行かされたのです。結果は……あと数光年先は思い出したくないような結末を迎えました。


 あまり懐かしくも無い思い出を頭から振り切り、始さんは目の前に見えている官邸では無く、国会議事堂の方へと向かいました。


「今は審議中だから首相も多分あっちだ。官邸に入るのを見届けてから襲撃しよう」


 議事堂まで行く間に、数十人の人達とすれ違います。その殆どの背中には"警視庁"と書かれていました。


「君達、どうしてこんな所にいるんだい?」


「外国人の親戚の娘に社会見学させているんです」


 関心、関心と言いながら、警官達は去っていきます。小学生が二人でこんな場所を社会見学しているのもおかしい気がしますが。



 

 テレビのニュースなどでよく見る、国会議事堂の正門前まで来ました。何人かのテレビ局の記者が議員にインタビューをしています。


「ここが日本の立法中枢さ。国民の血税を使って、老害どもがお昼寝している場所だよ。あそこにいるNHKは善良な民衆から巻き上げた受信料でそのザマを全国放送しなければならないんだ」


 なかなか酷い話です。アルヴァギアス星ではそんな議員は国家反逆罪にされます。


 


 政治団体が「原発再稼動反対!」と叫んで議事堂前の横断歩道を横切るのを横目で見ていると、始さんが「今回の標的を紹介しよう」と言って、とくとくと解説をしてくれました。


 

「白神亜梨沙。日本史上初の女性総理大臣にして、最年少二十五歳の政友党総裁。名門の政治家一族、白神家出身で、初当選後すぐに政友党の総裁に選出された。東京大学法学部卒業の麗しき美人で、政治に興味を失くしていた民衆を引き付け、政友党の人気を上げるために用意されたアイドル。しかし、お飾りだった彼女は、すぐに頭角を現し、無能な閣僚を次々と罷免。

 民衆からの支持率は八〇%を突破し、そのカリスマ性と美しさで国民を引っ張る最高のリーダーとされている」



 ……。


「革命の暁には、僕は天皇陛下から将軍職を宣下してもらって、彼女を妻に迎えるよ! リリカちゃんが本妻だから、彼女は側室かな?」


 ……。


「首相公邸と官邸は郭名幕府本拠地の郭名城にするんだ!」


 いや、駄目だろ。


「こんな人気者を革命したりしたら、暴動が起きますよ!」


「国民なんかどうでも良いよ。目指すは僕が頂点の最高の世界さ」


 最低です! 分かっていたけど、最低の小学生です!


「美人なうえに、カリスマ性も持っている。こんな女性を隣にはべらせたら、箔が付くだろうなぁ~」


 とことんまで下衆な性格をしています。しかし、日本を乗っ取らなければ、わたしの身も危ないのです。



 最低の台詞の数々を聞き流していると、正門から黒塗りの車が出てきました。


 記者団が集まっていきます。車内には理髪な女性が座っているのが見えます。


「来たぞ。さあ行こう!」


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ