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早速攻略完了!・5

 翌日の食堂。それがさも当然のように、生徒をはべらしながら昼食を取っている諫早。僕は誰の許可も取らず正面に座り、いきなり言葉を投げかけた。

「ねえ。放課後、暇かい?」

「なにをするつもりでしょう」

 イエスノーではなく、内容を訊いてくる。断られてはいないようだった。

「…………? ハマさんはどうしました?」

「彼女はやることがあって別のとこにいるよ」

 諫早としては、僕と破魔は常に二人でセットのようだ。別に四六時中一緒に行動しているわけでもないのに。教室でなんて、破魔と会うことが珍しい。……今は目的を共にしているから、そうとは言い切れないか。身体は別々でも心は一つ! な勢いを昨日から保っている。

「【お兄さま】は毎年、新聞部のインタビューを受けるんだ。より沢山の生徒に今年の【お兄さま】を深く知ってほしい、という意図だ。それが新年度一発目、四月号の一面記事でもある。今年は【お兄さま】とは別に、君を目玉にもしたいんだって」

「大変そうですね。あまり大それたことは言えないのですが……」

「難しいことは何もないよ。幾つかの質問に答えてくれれば、あとは新聞部がそれなりに話を膨らませてくれる。校正はこちらでさせてくれるから、捏造するかも、といった心配もない。あまり時間を取らせないから、できれば受けてやってほしいんだ」

 僕は要点だけを手短に説明する。男性は女性特有の、回りくどく、結局どこが重要なのかが掴めない説明を嫌うのを僕は知っている。というか、僕も嫌いだ。

「へえ。新聞部。新聞部ですか」

「これは潤滑油みたいなものだ。これを受けてくれれば、君の与り知らぬところで生じている噂なども、悪いものは払拭できる。アオナシで過ごすなら必要不可欠だと僕は判断したよ。これが君のためでもあるんだ。拒否してもいいけど、そのせいで発生するデメリットは、自己責任で受け止めてくれよ。僕はこうして手を差し出してるわけなんだからさ」

 諫早は一瞬、真剣に悩む表情を覗かせた。僕の真意は別の場所にある、それは彼も読めたのだろう。しかしそれが、どのような方向なのか。疑っている。そんなところか。

 なら、最後の一押しでもさせてもらおう。

「僕は【お兄さま】。この学園を一番『利用』できる。遅かれ早かれ、君は絶対に僕を踏み台にする必要がある。――自分から突っ込まれてやるって、そう言ってるんだよ」

 僕に似つかわしくない台詞に、周囲の生徒が頭に疑問符を浮かべる。

「…………。蛇の道は蛇」

 小さく、そう呟いた。

「分りました。謹んでお受けいたしましょう」


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