服屋とドラッグストア
朝食を終えた二人が次に向かったのは、服屋だった。
キサラギの店を出るその直前に交わした会話の中で、
「私替えの服持ってないんだ」
ソフィーはそう言った。
彼女は素材の強度と服の値段を天秤にかけながら次々に服を選んでいく。
次に立ち寄ったドラッグストアでも同様だった。
彼女は値段と内容量を天秤にかけながら化粧水や乳液を買い物かごに収めいく。
智弘にとってそれは新鮮な光景だった。
彼女が最終的に選ぶのは、いつだってより安い方だった。
彼にそのような思考は微塵もなかった。
仮に迷ったとしても、より性能の良い、またはより惹かれるほうを買うのが彼の買い物哲学だった。
ソフィの真剣な目に陽光が見える。
麗らかな春の光だ。
智弘はその目に好感を持った。
そしてもう一つ、彼の心を惹きつけて離さないものがある。
それはソフィーの所作だ。彼女が陳列棚から商品を手に取る。
それを裏返し成分表を確認する。
傾けられたその輪郭が彼女の髪が艶やかな髪に覆われる、口にかかるその髪を彼女がその手で払う。
全ての動作に丁寧なのだ。
言ってしまえばたったそれだけのことなのだが、智弘はそのすべてを感心して眺めていた。
そして先に店を出ていた彼のもとに彼女が歩み寄ってくる。
「次はどこに行きたい?」
そう聞いた智弘に、
「公園。それも大きい公園。」
ソフィーはそう答えた。




