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「僕の願い」


 結局僕は今日も願いを決めることができなかった。

 どうすればいいのだろう?

 僕は、自分の心からの願い。

 死ぬ以外のそれを見つけなければ、僕の本当の願いを叶えられない。

 僕の願い……。


 今日は日曜日で休みだ。

 一日中考えていられる。

 今朝は何故だか、彼女は現れなかった。

 死神も日曜の休日なのだろうと、勝手に結論付けて僕は散歩に出た。

 歩いている方が、思考するには便がいいというのをどこかで聞いた覚えがあったからだ。

 死にたい。

 それは僕の根本的な願いだ。

 でも、それと同じくらい僕が望むことを見つけないといけない。

 そんなもの、あるのだろうか?

 考えながら歩いていた僕は、いつの間にか河原の公園へ辿り着いていた。

 もう通いなれてしまったということか。

 思わず苦笑いが零れた。

 僕はベンチに腰掛け、河の流れをぼうっと眺めた。

 僕の願い。

 それは実はもう結論が出ている。


 残した人たちに言葉を残すこと。


 死者の願いの代表で、本質。

 でも、僕の素直な心は彼女に止められた。

 彼女の言葉が再生される。


『残される人の想いを考えろ』


 今思えば、確かに死者から懺悔をされるというのはあまり気分のいいものではないかもしれない。

 死者が生者に懺悔する。

 それでは、まるで『自殺』だ。

 ああ、それでか。

 それで彼女は僕を止めたのだろう。

 せっかく死神に死をもらっても、残す言葉が自殺のようではいけない。

 酷く身勝手な、そんな言葉を残すべきじゃないのかもしれない。

 だったら僕は、一体どんな言葉を残せばいいのだろうか。

 また彼女の言葉が蘇る。


『人の心なんて知っても、辛いだけじゃねぇか?』


 僕の心を知っても人は辛くなるだけなのだろうか。

 でも人は自分の心を知って欲しいと願う者じゃないだろうか。理解してほしいと願うものではないだろうか。

 そして、甘えたいものじゃないのだろうか?

 いや、だからだろう。

 死者が、生者に心を知ってもらって、その人の心にいつまでも甘え続けていいものじゃないんだろう。

 だったら僕は、


 嘘を吐こう。


 嘘を吐いてしまおう。


 そして生者の心からも旅立ってしまおう。


 僕の本心を隠して、

 僕の申し訳なさを隠して、

 僕の求めるものを隠して、


 僕は嘘を吐こう。


 さよならを、言おう。


 これで、僕は解放される。

 だから、この苦しみも、この悲しみも、この虚しさも、この喪失感も、全て呑み込もう。


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