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「他の人は、違うのだろうか」


 次の日、いろんな人と話しながらその様子を見てみた。

 でも、やっぱり親ほどはよくわからない。

 例えば友達なんかは、僕と話しているよりは他の友達と話している方が楽しそうに見えた。

 でも、特に僕の事を嫌っている様子はない。それは共通していた。

 まあそれもそうだろう。会話している人に明らかに嫌った雰囲気を出したら気まずいし、早々出す人はいないだろう。

「な? あんたは自分で思ってるほど人に疎まれているわけじゃないんだよ」

 いつの間にか僕の背後に立っていた死神は、どこか自慢げにそう言った。

 そうかもしれない。でも、だからと言って、僕がいてもいいということにはならない。

「なんか不服そうだな……。まああたしはなんでもいいんだけど。まともな願いを考えてくれればね」

 死神は退屈そうに欠伸をした。


 結局、僕は自分が思っているほど疎ましく思われていないようだ。でも、それを確かめる術はない。

 誰もが本音を言わずに生きている。

 僕もそうだ。

 だから僕は自分が疎まれていると思っても、それを誰かに確かめることはできなかった。

 それを聞くということは今までの関係を壊しそうで怖かったのだ。さらに僕は自分が疎ましがられていると思っていた。そんな僕が誰かに自分の事をどう思うか、聞けるわけがない。

 僕は人並みに臆病なのだ。

 誰かに、それも自分は好意を向けている相手から、疎ましいと言われるのを想像してしまうと、何もできなくなってしまう。

 他の人は、違うのだろうか。


 僕は家に帰る途中、昨日も来た河原の公園へ向かい、新しく考えた願いを死神に伝えた。

「人の心が知りたいぃ~?」

 話した途端に死神は辛気臭そうな声を出した。

「うん。それで僕が考えてたことが本当なのかどうか知りたいんだ」

「はぁ~」

 盛大な溜息を吐いて死神は頭を抱えた。

「そんな願いでいいの? あんたの命は願いを叶えたら、あたしが奪うの? 分かってる? どぅーゆーあんだすたーんど?」

「分かってるよ。でも、知りたいんだ」

 死神はちょっと背を向けて、屈んだ。

 何をしているのかと覗いてみると、白骨の仮面を片手に持っていた。どうも目をほぐしているらしい。

 何となく素顔を見てみたかったのでそっとまわり込む。

「見んな!」

 怒鳴られてしまったので、仕方なく諦めて背を向けた。

 結構残念だ。

「あ、だったら君の素顔をみたいって願いは……」

「駄目に決まってんだろ!」

 言い終える前に断言されてしまった。冗談なのに、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。

「もうちょっと真面目に考えろよ……」

 と言いながらも律儀に彼女は死神辞典(命名・僕)を取り出し、僕の願いが大丈夫かどうか調べてくれる。

「うぃー。これは直接訊かないと駄目っぽいね」

 彼女はそういうと姿を消してしまった。

 いきなり消えてしまったので僕は目を丸くしてそこを眺めた。

「……消えるんだったら、何か言ってほしいね」

 そう何となく呟いた。

「そりゃ悪かったな」

 声がして振り返るとそこに死神がいた。

「……心臓に悪いから止めて」

「にひひ。結構楽しいから止めねぇ」

 驚いてショック死っていうのもいいかもしれない。そうなれば彼女は名実ともに死神だ。いや今のままでも死神なんだろうけど。

 そこまで考えて、道端で驚いてショック死するというのは、間抜けすぎだと思った。今度からこの娘の驚かしには注意しよう。

「で、結論を言わせてもらうと、その願いは却下だそうだ」

「そうか……。理由を教えてくれないかな?」

 彼女は少し迷ったように手を頬に沿えて考え込んだ。

「まあ簡単に言ってしまうと、人間、自分の事で手いっぱいだろ? だから他の人の感情まで背負えないってこと」

「背負うも知りたいだけじゃないか」

「ああ……わりぃ。もっと簡単な理由の方がいいか。

 つまりだな、人の心に干渉するような願いは聞き受けらんねぇってこと」

「なんか願いを叶えるって割には結構制限あるよね?」

 僕は彼女を半眼で睨み付けた。

 彼女は焦ったようにそっぽを向きながら頭を掻いた。

「し、仕方ねーだろ。あたしたちだって万能じゃねぇし。人間の願いは千差万別あるんだから。っていうか、あんたの場合は願いが悪いってのが大半じゃねぇか」

 今度は僕がそっぽを向くことになってしまった。


「それに人の心なんて知っても、辛いだけじゃねぇか?」


 死神の少女が洩らしたその一言が、脳裏にこびりついて行くようだった。



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