「死にたい。でも、僕は死ねない」
この作品は一人称で、可能な限りキャラクターの固有名詞を使わないようにしております。
実のところ作者の中でキャラの性別もあまり定まっておりません。
基本的に「死」というものを扱っているので、重い内容(のつもり)です。
それらが苦手な方はご注意を。
死にたい。
それは僕の根本的な願いだ。
特別な理由なんてない。
それは、心に圧し掛かる重しであったり。
心の空虚さであったり。
人間関係の煩わしさであったり。
将来への不安だったり。
ほんの些細なもの。それ単体ではどうにもならない筈のものが、積み重なり、僕に死を望ませてしまったのだ。
何にしても有体に言ってしまえば、僕は『自殺志願者』だ。
死に対しての不安はない。僕はとっくに死んでもいいと思うぐらいには苦しんだのだ。
どんな痛みと苦しみを得なければならないとしても、それでもなお死を選ぶことを望んでいる。
機会さえあれば自殺してしまいそうな僕が自殺に走らないのには、特別な理由がある。
それは良い死に方が思いつかないためだ。
自殺するといろんなところに迷惑がかかる。
人の死を厭う現代では死という現象は鬱陶しくて仕方ないものなのだ。
僕が死にたいのは僕自身の責任。誰かに迷惑をかける訳にはいかない。
例えば飛び降り自殺。これは駄目だ。典型的なダメパターンだ。
一言で言えばグロい。もんのすごくグロい。
物体が落ちる時重たい方が下になって落ちる。
人が落ちた場合頭から落ちる場合が多い。
落下ベクトルの全てを持って地面と衝突した頭蓋骨は簡単に砕ける。そして、中身が飛び出す。
地面に撒き散らされた血潮と脳漿は見た者のトラウマになること間違いなし。
よってこれは論外。
では首つり自殺。これは扱いが難しい。
場所によって迷惑をかける場所が異なる。
自室でやればそこは人死にが出た部屋となってしまう。僕は化けて出るつもりなど毛頭もない。しかし、他の人はそうとは分からない。
故に人死にが出た部屋の価値は下がる。
そうなると不動産屋や、万が一、それを借りる人がいたとして、その人にも本人が出てくるつもりもない幽霊に怯えることになってしまう。
じゃあ富士の樹海やらどこか山奥で首つりをすればいいと言うかもしれないが、これもだめ。
死体の捜索に時間と手間が必要になる。それは親や両親に申し訳ない。簡単に見つからなければ尚更だ。
そもそも見つける人の事を考えたら首つりも駄目なのだ。
人間の舌は思っているよりも長い。それは首、正確には喉の筋肉を使って引っ張っているため、人間の舌は一定以上外には出ない。
しかし、首つりをしてしまうと頭がカクンと折れた状態で固定され、さらに舌を引っ張っていた筋肉も弛緩してしまう。
結論から言えば首つり死体は口元からだらりと長い舌が伸びているのだ。
それは生理的に嫌悪を感じざるを得ない。
電車に轢かれて自殺など、論外だ。
グロい、迷惑、トラウマ、さらに有り余るほどに迷惑。論外と言うか却下と言うか全否定。
薬物を服用しての自殺は、そもそも薬物が手に入らない。睡眠薬を瓶ごと飲もうが失敗した場合を考えると選択できない。
餓死は生物が最も避けたい死に方ではないだろうか? さすがに苦し過ぎる。また身分的にも餓死する前に病院に放り込まれる。
練炭自殺などのガスを使った自殺は、発見者に危険が及ぶ可能性がある。
では僕はどうやって死ねと言うのか?
答えは死ねない。
死にたい。でも、僕は死ねない。どんな方法を取ればいい? どうすれば誰にも迷惑を掛けず、尚且つ僕の家族たちときちんと別れをさせてやれる?
できない。不可能だ。
僕にできる唯一の死を選択とは、自分の身体の寿命が果てて、僕が朽ち果てて死ぬこと以外にない。
絶望しながら生きていく僕の前に、あの死神を名乗る少女が現れたのだ。




