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 <幕間>

 鼠型魔獣殲滅作戦は、ヘルマン・クロス小隊により滞りなく完了した。

 瓦礫と血の匂いがまだ残る現場では、隊員たちが負傷者や魔獣の残骸を片付けている。


 その片隅で、ミカ・アルドゥーネはゆっくりと目を覚ました。

 まだ頭が重い。だが、意識ははっきりしている。

 自分が気を失っていたことを悟り、胸の奥に鈍い痛みが広がった。


「あの子……なんなの」

 唇から漏れた声は、誰に向けたものでもなかった。


 脳裏に浮かぶのは、先ほどの少年の姿。

 自分の太刀を振るった瞬間、全身の魔力を一気に引きずり出されるような、あのおぞましい感覚。

 まるで自分の中に眠る何かを強引にこじ開けられたようで、ぞっとするほど不気味だった。

 背筋を駆け上がる冷たい感覚を、まだはっきりと覚えている。


 視線を落とすと、手に握られた太刀の刀身は砕け散っていた。

 ラグナ鋼――最高ランクの強度を誇る、東部の名工が打ち上げた逸品。

 それが、あんな一撃で無惨に砕け散るなど、想像すらしたことがなかった。

 刀を預けた師の顔が脳裏をよぎり、胸の奥がずしりと重くなる。


「このままじゃ、ダメなんだ……」

 かすれた声で呟き、ミカは両の拳をぎゅっと握りしめた。


 ――強くならなければ。

 あの少年、いや、ヘルマン・クロスの隣に立ち続けれるように。

 自分自身を、あの異質な力に呑み込まれないようにするために。


 廃工場に差し込む朝もやの光が、静かに彼女の頬を照らす。

 その決意は言葉以上に重く、胸の奥で鋭く響いていた。

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