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不死の魔女-増長した人類に鉄槌を下し分からせる絶対不敗の存在-  作者: 手の遅いエリオット


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第九話

最初に。


事前に書きためていたストックがほぼ尽きてしまいました_| ̄|○

よって、文字数がやや少なくなって掲載ペースも遅くなりますが、ご容赦願えますようお願い致します。

二人が座っているテーブルに、続々と料理が運ばれてくる。


「おおっ来た来たぁ、うまそうじゃん」


「こっちはアイラさんが採ってきてくれたお魚がたっぷり入ってますよ-」


「えへへー。ありがとねマルティエッタ」


言われてセルジオも目の前の皿に載せられた料理をよく見る。そういえば衣をつけて揚げられている香ばしそうな魚は船の上で見た気がする。……というか網を引き揚げている間に気分が悪くなり横になっている際に目の前をピチピチ跳ねてたやつだ。

料理はうまそうだが、あのときの気分を思い出してセルジオは複雑な心境だった。


「さ、食べよ!さめないうちに!」


アイラはさっそく元気よく食べ始めた。あまりにうまそうに食べているので、セルジオもつられて手を伸ばす。……なるほど、これはうまい。魚の肉の柔らかさと皮目のパリパリのコントラストが楽しい。それに添えられている野菜の食感もいい。それをまとめる甘酸っぱい餡が口の中で一体となって、素晴らしい一体感を生み出している。

他の料理も食べてみると、これもまたうまい。香ばしく焼き上げられた肉のステーキ、付け合わせの芋とニンジンもいいアクセントとなり何とも言えないうまさだ。小皿に盛られた野菜は酢漬けのピクルスだが、これがまた口直しに最高だ。酸味がいい具合に味覚をリセットしてくれて手が止まらなくなる。


二人はほとんど会話を交わすことなく料理に夢中になり、気がつけばメインディッシュの皿がすっかり無くなっていた。


「すいませーん、おかわりちょうだーい!」


アイラが言うとすぐにマルティエッタがやってきた。手際よく皿を片付けていく。


「メニューはどうします?まだお勧めがあるんですけど」


「よっしゃー、じゃんじゃん持ってきてー!」


「はーい、ありがとうございまーす!」


働き者のマルティエッタは空いた皿を器用に抱えて厨房へと下がっていった。


「いやー、うちらが採ってきた魚、うまいねー!料理されるとさらにうまいねー!」


アイラはニコニコしながらセルジオに話しかける」


「確かにうまいよ。だが魚もそうだが肉と野菜もうまいな。新鮮で産地ならではといった感じなのかな?」


そう言うと、唐突にアイラは顔をにやけさせた。


「でっへっへ-!そっちはグレンのつくってたやつだよー。ね、おいしいでしょ?」


グレン……ああ、最近結婚したという旦那の方か。


「旦那の方は畑担当ということか。なるほどね」


「畑だけじゃなく牧場もやってるよ。色々大変みたいだけどねー。」


「しかしまぁ、幸せそうで結構なことだなぁ」


「うへへぇ……普段はさぁ、おとなしくて口数も少ない人なんだけどさぁ、うちに帰るとわりとよくしゃべってくれるし、いつも褒めてくれるんだよぅ、かわいいねーとかがんばってるねーとかぁ。むふふぅ」


あー……これは夫婦ののろけ話が来るパターンだな。


「抱きしめてぎゅーってされて頭なでなでされたりするのがたまんなくてねー。一緒にシャワーを浴びて洗いっこしたりねー。ベッドに入ってあたしの好きなとこワシワシされて気持ちいいとこを……」


「あー!そういえば聞きたいことがあったんだがいいかなぁ!」


話題がヤバい方向になりそうだったのでセルジオは慌てて話題をねじ曲げる。


「へぇ?べ、別にいいけどなぁに?」


「今日載った船だけど、何か特別な仕掛けでもあるのか?俺も船舶に詳しいわけではないけども、どうも俺の知ってる船の動きとは違う気がしてな」


「ああ、うちのスキッピングリーフ号ね。あれはアイビーさんのアイデアでオオタで作ってもらったんだよ。いいでしょ?」


「というか唐突に舳先の向きが変わるし速度も結構激しく変わるし、振り落とされそうでちょっと怖かったぞ」


「そういえば前もって説明をきちんとしてなかったね、ごめんごめん。あれね、船底に魔方陣を貼ってあって直接水をつかんで動かすみたいな仕掛けがしてあるらしくてね、キールがあるから基本直進するけど、舵取りとか結構自由が効いて思い通りに動いてくれるんだよ、あたしの固有魔法とも相性がいいし助かってる」


「ほう、固有魔法?」


「あれ、これも話してなかったっけ?あたしはね、視力の強化が使えるの。だから海水の中にいる魚群を見て確認できるのよ。だから漁に出る前に魚がいるかどうか見てから出られるし、網を入れるときも狙って入れられるから空振りにはならないし」


視力の操作は、セルジオの同僚で持っているのがいた。夜間視に特化していたので夜間の監視に重宝していたな。だが海水の中まで見えるのはなかなかにすごい。


「それはかなりすごいな」


「便利でしょ?……まぁ魔力を結構消費するから何度も使えないんだけどさ。だから売り上げの取り分もちょっと多めにもらってるんだ」


「なるほど。そう言われれば必ず網に大量の魚が入ってたもんな。あれも見てから網を入れてたって訳だ」


「そそー」


「お待たせしました-!追加のお料理でーす!」


そこにマルティエッタが両手に皿を持って現れた。


「きたきたー!さ、食べよ!」


今度はムニエルの魚もある。これまた絶妙な味付けと火加減で実にうまい。

またもや二人はほぼ無言で料理にかぶりついていた。


いつの間にか周りの客も減りつつあった。ピークの時間は過ぎたらしい。


そこに、デイジーがやってきた。


「よぉ、お二人さん!楽しんでる?」


「やほーデイジー。相変わらずおいしいよ!」


「楽しんでくれてるのはいいけど、アイラは帰らなくていいのかい?家でグレンが待ってるんじゃないの?」


「今日はこっちで食べて帰るって事前に言ってあるから平気だよー」


「もしかして俺との時間を優先してくれた、わけではないよな?」


それを聞いてアイラはセルジオの頭をひっぱたいた。


「んなわけないっしょー!グレンよりいい男がいるわけないし!」


「痛えよ!引っかかるような言い方をしたなら悪かったが、それにしちゃ力の加減を考えてくれ!」


それを聞いて今度はデイジーがセルジオの背中をひっぱたく。


「何言ってんの!この程度で痛がってるとかだらしないねえ!」


「おい!二人して痛えよ!勘弁してくれ!」


痛さにもだえているセルジオを前にたくましい女性二人が豪快に笑っていた。

そこに。


「女将さーん!お電話が来てます」


カウンターに立っているマルティエッタがデイジーを呼び出す。


「はいはーい、今行く-」


そそくさとカウンターの方へ小走りで向かうデイジーと入れ替わりでマルティエッタがやって来た。


「どうもすいません、うちの女将さんはいつもああいう調子でして」


ぺこりと頭を下げるマルティエッタにセルジオは制するように手を上げる。


「大丈夫、気にしないでいいよ。……今の電話は仕事先からとか?」


セルジオはつい前職の癖で聞く必要もないことを聞いてしまう。


「えーと、あれは次の逗留予定の方からの予約みたいです」


律儀に答えてくれるマルティエッタ。


「あっ、すまん。勢いで聞いてしまったが俺が聞いていい話じゃなかったな」


「構いませんよ、ここで受ける電話は仕事上の連絡ばかりですし。隠すような物じゃないですから」



この世界、電話はそこまで普及していない。事実、カツウラで電話を使える人は十人にも満たない。

この世界では電話といえども魔力で作動するものであり、わざわざ専用の魔力電池を用意しないと動作しない物だ。携帯電話(と呼ばれてはいる)に至っては電池とセットで使わねばならないことから携帯性に欠ける代物だ。

実質誰か使用人や付き人に持たせて使う物となり、結果としてトーキョーの権力者くらいしか携帯して使用できない物だった。

電話を掛ける際には実際に会って最初に相手の電話を通信相手として登録する必要がある。構造上電話番号が無く不特定の相手にいきなり掛けることもできない。平たく言えば電話と言うより通信距離が長いトランシーバーに近かった。しかし登録さえしてしまえば距離に関係なく通信できるのでそこは電話の性格が強い。……距離が長くなると魔力消費が多くなるのが難点でもある。

魔力を介する関係上電線などはなく電話会社なども存在しないので利用時間による従量制の料金は発生しないが、結局受け手にも掛け手にも同等に魔力の消費が激しいので長電話などはそうそうできるものではなかった。

因みに仕組みはかなり単純で暗号化などもされていない。よって通話する人を特定できれば専用の通信機器を使って傍受もできる仕組みだった。

魔女は隠蔽をフル活用し電話の仕組みを完全に解析している、よって全ての通信を機器なしで全て傍受できる。魔女にとっては情報を集めるには極めて好都合な物だった。



デイジーが通話を終えてアイラとセルジオのテーブルに戻ってきた。……なぜか片手には酒瓶が握られている。


「おおーっと、こんな時間じゃないの、そろそろ帰んなきゃグレンが心配して……」


それを察知して立ち上がろうとしたアイラの肩をデイジーが抑えつけた。


「まぁまぁ、ゆっくりしていきなよ。遅くなると連絡してるっていったじゃん?」


「やだやだー!帰る-!」


「さてとシャワーでも浴びてくるか、汗をかいちまったから……」


「まぁまぁまぁ、あたしは気にしないからもう少しのんびりしていきなって。部屋はちゃんと掃除もしてあるし門限もないし、何時になっても入れるから気をつかわなくていいから。多少は飲めるだろ?」


どこから出したのかアイラとセルジオの目の前にグラスが二つ。デイジーは琥珀色の液体をそこになみなみと注ぎ始めた。どう考えても下戸の人に注ぐ量ではない。


「さぁ、夜はまだ長いぜ!かんぱーい!」


ノリノリのデイジーと暗い顔の二人。後ろでマルティエッタが申し訳なさそうな顔で謝っている。


……セルジオは、結果として船酔いに苦しんだあとに二日酔いで更に苦しむこととなった。

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