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三題噺もどき3

買い物へ

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくななじゅうきゅう。

 


 冷たい風が額に当たる。


 一瞬吹いたその風は、歩く人々のほてりを冷やしてくれる。

 コンタクトをした瞳が渇きそうになるが、冷たい風は心地がいい。

 冷たい風なんて御免、なはずなのに、今日はそれがありがたく思える。

「……」

 ここ数日程、先週の悪天候が嘘のように晴れが続いている。

 その間がとても寒かったせいか、今日はなんだか暑い気がしてならない。気温はたいして高くないはずなのに。だから、この冷たい風も気持ちがいいのだろう。

「……」

 ふと、上を見上げると、晴れた空はどこまでも広がっている。

 冬の空気はシンとしていて少し寂しいけれど、空気が澄んでいるのは特権かもしれないな。きれいだと思える空が広がっている。夜も結構星がきれいに見えたりする。田舎で街灯もそんなにないからかな。

「……」

 さて。

 まぁ、そんな感傷に浸るなんてらしくもないことはいったん置いておいて。

 今日はやることがあってここにきたのだ。さっさと用事を済ませてしまおう。

 人混みを避けてこの時間に来たのだから。

「……」

 ある商店街に来ていた。

 商店街という程立派なものでもない気がするが、まぁそれなりに人通りもあるし、時間を間違えれば人ごみに巻き込まれかねない程度には人が来る。

 これから年末にかけて人が増えてくるだろう。それなりに物はそろっているからな。

「……」

 母から買い物を頼まれて来たのだ。

 今夜の夕食の食材を買ってきてくれとのことで。

 野菜はこっちの方が安いから、ここで買ってきてくれと店の指定までされた。

 近場のスーパーでよくないか……と思いつつ、何もしていない私は文句を言える立場ではないので。

「……」

 それなりに行き慣れた場所ではあるので、さっさと歩を進める。

 あの店はいい目印があるのだ。そんな言い方をしたら怒られるかもしれないが。

 あの店にしかいないので、そう言ってしまう。

「……」

 人を避けるように歩きながら辿り着いた先にあるのは。

 昔ながらという感じの、八百屋さん。

 その軒先には鳥籠がぶら下がっている。これが目印。

「……」

 その中には小さなインコがいて、客を出迎えてくれる。

 看板猫ならぬ看板鳥と言ったところか。

 くるくると動きながら、時折小さく鳴いている。

「……」

 昔から生き物は大抵好きなので(人間以外)、母や妹が店内で買い物をしている間、あの子を眺めていることが多かった。動きがちょこまかとしていてなんとなく可愛い。自分で飼うことは出来ないけど。色も可愛らしい色をしているし、とにかく癒しという感じなのだ。……語彙がなくて申し訳ないが、とにかく可愛いのだ。

「……」

 しかし今日は買い物をするのは自分なので、眺めているわけにもいかない。

 ほんの少しだけ癒しをもらって、買い物を済ませてしまおう。

 今夜は鍋をすると言っていたから、その材料調達である。

「……」

 白菜と大根。あとは人参、キノコ類もいくつか。いつもはえのきしかいれないのにシイタケも買ってきてと言われた。これは別で使うのかな。あとは、ミカンか。

 そういえば炬燵にミカンって誰が言い出したんだろうな。冬といえばそういうイメージが固まっているけれど、初めに言ったのは誰なんだろう。まぁ、我が家も例にもれず炬燵にミカンをしているので、文句は言いようがないが。

「……」

 個人的にあまりミカンは好きではないので、そういうイメージに疑問が沸いてしまうのかもしれない。甘いのならいいんだけど、たまにすっぱいのがあったりすると、食べる気が失せてしまう。母と妹は酸味がある方が好きなので、食の好みが合わない。

「……」

 残念ながら目利きなんて出来るほど精通はしていないので、適当に手に取っていく。

 なんとなく見てはいるものの、最終的にはこれで良いかとなってしまう。

 この後別に買い物も行かないといけないので、ここにばかり時間を割いていられないのもあるけれど。スーパーに肉を買いに行く。

「……し」

 とりあえず、目的のモノはあったので、レジに向かう。

 あとはスーパーと自分の買い物を少ししたいので、それを済ませて、帰宅するとしよう。

 なんだか久しぶりに気分が軽い気がする。

 籠りっきりもよくないと言うことだな。








 お題:鳥籠・ミカン・晴れた空

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