キスで目覚め
中に入っていく。高そうな絨毯が床一面に敷かれていた。建物の見た目とは裏腹に、中が豪華すぎる。お城みたいな豪華さ。お金持ちのにおいがぷんぷんする。
天井には無数のシャンデリア。絵画や骨董品も隅々に飾られている。
客間にもこれまた高そうなソファやテーブルが置かれている。一体いくらするのだろう……。木でできたテーブルなんて、初めて見た……。異世界だよ。
――久しく見ていなかったわ……。
一夜は辺りをキョロキョロと見回して、感想を呟く。どことなく、遠慮がち。
【一夜の本体は、この地下にある】
別荘に地下なんてあるんだ。
にゅにゅにゅが床に手をついて、手探りで地下への通路を見つけた。ノブを持ち上げて開ける。階段が見えた。真っ暗でよくは見えないけど。
――ところで、麗香はどこへ?
【そこにいるだろう。お前と同じ霊体になっている】
にゅにゅにゅがこちらを差した。あ、そういえば私、どうして姿が見えるのかと思っていたら、霊体になって出てきていたのね。どんな姿?
――見えないわよ。
見えないぐらい小さいらしい。いてもいなくてもいい存在になっている。
【麗香の力が強まり、お前の力が弱まっているからだ】
――そうなの。遂に、麗香に抜かれてしまったのね。
【行く】
にゅにゅにゅは潜るように身体を丸めて、階段を下りていく。
一夜も私もふよふよと浮いて地下へ行く。真っ暗がりだけど、見えてきた。
ベッドの上に横たわる一夜の姿が、よく見える。
――……僕の顔だ……。
一夜はじっと自分の顔を覗き込んでいる。
一夜って、こんな綺麗な顔をしていたんだ。二十代後半とは思えないくらい、整った顔立ちをしていて、一夜が言っていたように文句なしにカッコイイ。髭も生えていないし、肌も白くてつやつやしている。髪はさらさらだし。両耳にピアスまで付けている。おしゃれだな。女性的な顔立ちに近いのだろうか。女の子な私は、ちょっとだけ妬けちゃう。
でも、見蕩れてしまう。悔しいけど、釘付けになってしまう。
美青年な人もいるんだね。性格はアレだけど、モテモテなのも合点がいく。
――この時をずっと、待ち望んでいた。
【麗香。いやなら見ていなくともいい】
にゅにゅにゅは一夜に覆い被さり、目を閉じて顔を近付けていく。
私の身体を使って、一夜を目覚めさせるのか。
【それから私は……こんな声だが、メスだ】
にゅにゅにゅが一夜の唇に触れた。優しくて、ちょっぴり切ないような表情。
私の意識が肉体に戻り、感触が直に伝わってきてしまい、ドキリと胸が弾んだ。
後ずさって、兎の一夜の姿を探す。人の一夜しかいなかった。いつの間にかにゅにゅにゅもいなくなっていて、残ったのは私と、一夜だけ。にゅにゅにゅの声も聞こえなくなった。
「一……夜?」
恐る恐る声をかけてみる。暫く経っても返事がない。




