翻弄される麗香
――呪いはいつの時代も、キスで解けるものなの。だからご褒美に一発。ダメ?
「ダメッ!」
――麗香。
ドキッとした。急に名前呼びになったから。
「な、なに」
――これから一つ屋根の下で暮らしましょう。大丈夫。なにもしないから。
「安心できない!」
――そろそろ、本当に嫌われてしまうわよ?
「あ……」
みんなの視線が痛い。傍目には独り言を呟いているからか。
兎の子は私の膝の上から飛び立って、窓から去っていく。
――では、またね。
「……う、うん……」
私はとりあえず手を振った。でも苦手だ……。
あれが男の人だったと考えると……、どうも気持ち悪い。受け入れられない。
あんなに可愛らしい兎の女の子に見えるのに、元は男性? 元の顔も結構中性的だったりして……。それならあの顔も納得。カッコよかったら、それはそれでムカつく……。
ひとまず一件落着……ということにしておこう。まだ虫唾が走っているけど。
その日の保健体育の授業は、ちょっと具合が悪くなって保健室に行った。
放課後に友達の廸と一緒に帰ろうとしていたら、クラスの男子に待ち伏せされていた。
何故筧が私の下駄箱の前で。そんな鬼みたいに怒っているような顔で。
「……なあ、お前さ」
「な、なに……。私、廸と帰ろうと思ってるんだけど……」
「いいよ、麗香。また明日ね!」
廸は私の背中を押して、さっさと靴を履き替えて帰ってしまった。これは、気の利く友人というやつなのだろうか。ナゼにこんな状況で告白されると思ったのだろう。
どう考えても果たし状を送ろうとしているとしか……。決闘でも申し込まれるのでは。
筧は廸が去っていったのを確認すると、私に言い放った。
「霊感あるんだろ?」
「……」
私は動揺する。嘘はつけない体質だ。髪の毛を触ったりスカートの裾を引っ張ったりしてしまう。多分これは無意識にやっているクセだと思うけど……。