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にゅにゅにゅ  作者: 社容尊悟
三 麗しい子
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ご苦労様

「だってさー! 誰も敬う気ゼロ~!」

 廸はテーブルをバンバン叩いて指を差して笑い出す。

 笑いの渦を吹き飛ばすように、一夜は咳払いを一つ。ちょっと照れている。

 ――コホン。とにかく……麗香には夜に付き合ってもらうとして……。君たち、ご苦労だったわね。もう帰っていいわよ。明日には麗香は僕のものになってるから。

「なってないから……」

「あー! ご苦労って使った! 下に見てる! いけないんだ!」

 ――「ご苦労」は本来、目上の者に使う言葉よ。君たちが勝手に目下に使うように変えたのでしょう。それに、僕が君たちに使ったところで、害はないわ。僕の方が上だもの。立場的にもね。

 へえ。そうなんだ。知らなかった。……でも、いつも通りお疲れ様がいいかな。

 ――「お世話様」という言葉もあるわよ。使ってみてもいいかもしれないわね。

「一夜ご苦労さーん」

「カズちゃんご苦労!」

「一夜さんご苦労」

「一夜苦労」

 四字熟語みたい。

 みんなが順番に一夜に言っていった。労いの言葉のはずだけど、一夜は静かに憤りを感じているようだ。どす黒いオーラが見える。熱そう。

 ――年下に言われるのは、腹が立つわね……。

 腕を組んで指をトントンさせている一夜。苛立ちを隠せていない。余計にからかわれ、怒りを増大させていく。最初の頃より表情が豊かになったというか。素に戻ったというのか。

 一夜をからかうのって、楽しいんだろうなあ。一夜って、苦労人だね。でも、相手にするってことは、こどもが好きなんだと思う。教師になるくらいだもんね。


 みんなで最後にじゃんけん大会をした。

 一夜が一番に負けた。廸が二番、筧が三番、やっくんが四番、ここなちゃんが五番で、私が優勝した。運を使ってしまったかな。




 カラスがカアカアと鳴いて、夕日が町を照らす。橙と黄色の混ざった綺麗な色。

 もうとっくに夕方の六時は過ぎていて、お母さんはかんかんだった。

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