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にゅにゅにゅ  作者: 社容尊悟
二 麗しい香り
60/80

その言葉、本当?

 私は教室を出て、廊下を走った。場所が大事と言うのならば、上下ではないかと。私たち二年のクラスは二階。この棟は三階まで。上下の教室に行ってみて、さっきと同じポーズを取ってみよう。そしたらなにか変わるかもしれない。

 開始してから、二十分が経過した。上下の教室に行ってみて、また同じポーズを取ってみたけど、全くなにも変わらなかった。どういうこと?

 一旦廊下に出て、今までのことを整理する。

 恐らく……だけど、場所は間違っていないと思う。他に必要なのはなんだろう。机や椅子の位置を同じにする? 人の配置を同じにする? 私の立ち位置を浅川と同じにする? 他に思いつくことは……。

 うーん……。難しい……。時間制限があるから余計に頭が回らない。こんな時、冷静に対処できる頭があればなあ……。うー。悔しいしムカつくけど、一夜の頭と交換して欲しい……。今この時だけ……。

 とりあえず思いついたことを実践してみよう。

 なにも変わらなかったら、また考えるしかない。

 ……結局、なにも変わらなかった。

 暫く考え込んでみても、これといった答えが出てこない。

 時間はどんどん過ぎていく。やばい。どうしよう。誰か教えて。ほんと、どうしたらいいのか、わからない。

 一夜に「麗香頑張って」って、励ましてもらいたい。一夜がいいんじゃなくて、いつも私に意地悪を言う人だから、こういう時頼りになるのであって、他意はない。

 廸もいてくれたら、どれだけ心強いか……。

「……わかんないよぉ……」

 大粒の涙が出てきた。もういやだ。どうして私ばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないの? 私、なにかした? 悪い子だから、こんな目に遭うの?

 泣きじゃくっていると、徐々に苛立ちが勝ってきて、浅川に八つ当たりしたくなった。なので、教室の引き戸を開けて、浅川にタックルした。

「浅川のバカ! バカバカバカ! 一夜の大バカ~!! 神様のドバカ!」

「あっ……!」

 浅川が転んで、私が浅川のいた場所に立った。

 途端に空気が変わり始め、浅川の表情が変わる。余裕から驚愕へと。

「まさか、この短時間で……。ぎりぎりまでかかると思っていたのに」

 そして私は、鏡のごとく、さっきの浅川と正反対の動きをする。

 ――原点にして、頂点。場所とは、そういうことよ。よくやったわね、麗香。……だけど、僕のことを大馬鹿と言うのは、いただけないわね。あとでみっちりしごいてやらないと気がすまないわ。ええ、ベッドでね。

 一夜の最後の台詞もいただけない。でも、偶然が奇跡を呼び起こした。

 私は……浅川に勝てた。みんなの命を守った……。

「やった……!」

「これでようやく挨拶ができる」

 浅川は起き上がって、私に跪いた。頭を垂れて、敬意を表している。

 さっきも挨拶したような気がするけど……。


「初めまして。にゅにゅにゅ様」

「え…………?」


「ボクは、あなたの弟子です」

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