にゅにゅにゅの弟子
一夜に気にしなくていいと言われたものの、その日はため息ばかりついた。
なにをしていても上の空で、いつもよりも授業の話が頭に入ってこない。
恋をするって、どういうことなのだろう。私も誰かに恋をすれば、廸の気持ちがわかるようになるかな。
そういえば、筧はどうしているのかな……? 廸が話に出していた割には、話しかけてこないけど。飽きられたかも。
多分、本気の恋なんて、今の私たちの歳じゃできないんだよ。
みんな、恋に恋しているだけで、中学の頃の彼氏彼女が結婚相手とか、滅多にないでしょ。だから、一生ものの恋愛じゃなくて、青春なんだよね。
私も部活に入って、青春しようかなあ……。
窓の外に視線をやってボーっとしていると、一夜が私の顔に貼り付いた。
「ひゃわ」
――しっ。静かにしていなさい。
変な声出しちゃったじゃない……。いつもいきなりなんだよね。
――呪術師の気配がするわ。
こないだ会ったでしょう。静谷さんのことじゃないの?
――今まで会った呪術師とは違う……。この気配……。
まさか、にゅにゅにゅ?
――にゅにゅにゅの弟子ね……。
弟子がいるのか、そうですか。またしても初耳。一夜って、その時にならないと教えてくれないよね。そういうところ、不親切というか……。なにか、不都合でも?
――とにかく、今は息を殺すのよ。君に気付いたら、僕が時間停止させるから。気付かれなかったら、なにもしない。いいわね?
一夜の念押し。正味、言わない方が起こる確率が減るよね……。
嘘から出た実とか、言わぬが仏みたいな、そういうタイプの。言わぬが仏って、言わなきゃいいことって意味でしょ? ありゃ? どっちだっけ。ド忘れしたかも。
そんなことはどうでもいいんだった……。
一夜の悪い予感が的中し、にゅにゅにゅの弟子が現れた。ほら、言わんこっちゃない……。言わなければ起きないかもしれないのに。
にゅにゅにゅの弟子は男子だった。筧の友達の浅川。思わぬところで繋がっているというか、この学校の生徒はにゅにゅにゅの配下だったりして……。
いやいや、そんなことを考えるのはよくない。
空気が変わり、一夜が時間を止める呪術を使う。それよりも速く、にゅにゅにゅの弟子が呪文を呟いて時間を止めた。ニヤリと口元に笑みを刻んでいる。
――僕より……速い……? そんな、まさか。
どれだけ自信があったの。一夜の額から冷や汗が流れ出す。
――僕はあれからどれだけ修行したと……。いいわ……。認めましょう。君は僕よりも強い。それだけは認めてあげるわ。




