恋は人を豹変させる
「何が?」
「あのこと……」
「待ってるって言ったのに!」
「こらこら。喧嘩しなさんな」
クレープ屋のおじさんが止めに入る。他のお客さんの相手はしなくていいの?
「そんなに知りたかったら、今教えてあげるから」
「え……そ、それはちょっと」
廸は顔を引きつらせて、周りを見ている。
大勢の前で恥をかくのは、廸だっていやだよね。私が恥をかいていたこと、廸はわかっていたのかな。自分が恥ずかしくなければ、相手はどうだっていいって思うのは、単なるわがままなんだよ。自分勝手なんだから。
ここのところ廸が焦りすぎている気がするし。暫く、距離を置いてくれた方が助かる。なので、私は宣言した。仕返しをしたいわけじゃない。
「廸のことは友達だと思ってるから。今度変なことしたら、ただじゃおかないからね。暫く私のことは放っておいて。じゃないと、嫌いになっちゃう」
ちょっときつめに言って、突き放しておいて……。
「帰る」
クレープ屋のおじさんにお金を払って、クレープ屋を後にする。
おじさんはお金はいらないと言っていたけど、空気を悪くしたから。お詫びみたいなものだから受け取ってもらった。強引に渡したと言った方が正しいかも。
ま、あのくらいやらないと、廸はまた調子に乗るかもしれないし。ちょっと言いすぎたかもだけど、心配いらないよね。
――麗香。男を甘く見ちゃダメよ。
「甘く見てないって」
――恋はね、人を豹変させるのよ。男女どちらとも、ね。




