特異体質は呪いを呼ぶ
――僕が探している一夜とにゅにゅにゅ、この二人を一緒に探して欲しいの。そしたら君の手助けをしてあげる。君の特異体質は、呪いを呼ぶものだから。僕が見えるってことは君、霊感、あるでしょう。気付いているのではなくて?
兎の子は私にそう問いかけた。私に霊感があるというのは、嘘ではないと思う。
小さい頃からよく、変なところで転んだり、変な方向に向かってお喋りしていたりしたらしいから。私自身はよく覚えていないけど、霊感はあったのではなかろうか。
でもそれは昔の話で、現在は違うと思う。
「今も霊感があるとは思ってないけど」
――残念ね。あるのよ。
「え?」
――さっき、言ったじゃない。僕が見えるってことは、霊感があるって。他の子の視線をよく見てみればわかるわ。ほら、僕を見ていない。
兎の子はみんなを指差す。私もその方を向くと、みんなが私にしか目を向けていないことがわかった。
「じゃあ……みんなが急に変わったのって、君のせい?」
――心外ね。僕は悪くないわよ。遅かれ早かれターゲットにされるってこと。それが今日だったってことよ! にゅにゅにゅは霊感のある人間はとことん嫌うのだから。僕だって、一夜だって、にゅにゅにゅに呪われたのよ。
兎の子はハッと吐き捨てる。その姿、呪いだったのか。てっきり趣味かと……。
しょうもない妄想して、ごめんなさい。
――それに僕の声、どうやって聴こえているか、わかる?
「ふつうに耳に届いてるけど?」
――脳に直接響かせているのよ。口が動いているから、わからなかったのね。
「……そうなんだ……。ところで」
――なに?
「にゅにゅにゅってなに?」
――霊感体質の人間に呪いをかける超人よ。現代の呪術師と呼ばれているわ。自分以外の優秀な人間が気に食わないみたいね。僕も一夜も君も……もうにゅにゅにゅの手に落ちてしまった。君は戦うしかなくなったわけよ。
「そんなこと急に言われても……」
――戸惑う気持ちもあるでしょうね。でも始まってしまったのよ。さあ、僕の手を取って。
兎の子が手を差し出す。私は唾を呑み込んだ。その手を取るのを、ためらってしまう。
だって、この手を取ったら……、いつもの平々凡々な日常が……。
簡単に壊れ去ってしまうのではないかと……。