見透かされている?
そんなに見つめなくてもいいのに……。紳士なら、気にしないふりをして、なにか羽織るものをかけてくれるはずなのに! あからさまにいやらしい顔をしなくてもいいのに……。
――由々しき事態よね。危機感がまるでないわ。襲ってくれと言っているようなものよ。もしかして、君変態さんだったのかしら? 僕と同類?
「自覚あるんかいっ」
私は急いで棚から服を出して、着た。
「私は君みたいに変態じゃないもん。君が来るって知ってたら、ちゃんと服着てたし……。第一シャワー浴びた後なんだから、下着姿になっててもおかしくなんかないよ」
後一時間後には学校に行っている。一夜は学校に着いてくるけれど。
――どうだか……。
「何、その含みのある言い方……」
ムッとして刺々しい語調になる。一夜はいっつも思わせぶりな言動を取るから、私は内心ひやひやしている。もし、私が自覚なしに一夜に下着姿を見て欲しいなんて思っていたら、それこそ自己嫌悪だよ。気持ち悪すぎるよ。
そんなこと、絶対にあっちゃいけない。
――麗香は僕のこと、名前で呼ばないわよね。それって、照れ隠しのつもりなの?
心中では名前で呼びまくっていますが。
「だって。呼んだら調子に乗りそうだし。なんか、やなの」
――ほほう……。
またこの顔だ。なにかを企んでいて、含みのある顔。十以上も歳が離れているから、思春期の女の子の感情は見透かしているということだろうか。大人の貫録ってやつ?
そういう態度は気に入らないけど、あまり見透かされたくはない。私の心は私だけのもので、誰にも入ってこられたくはないから。
私を助けてくれている一夜には尚更。入ってきて欲しくはない。
学校に行く道で廸に会って、一緒に登校する。
「そういえばさ、麗香って筧に告白されたんだよね? 今、付き合ってるの?」
答えにくい質問を、軽い口調でされて、気まずくなる。何故今になって訊くのだろうか。
「え……。う、うん……多分。でも付き合ってない」
「多分ってなに」