冷たい視線
「おはようー」
挨拶をしながら教室に入ると、何故かみんなの視線が冷たかった。心臓を射抜くように冷たい目。凍えるような空気で、背筋が凍った。私を殺そうとしているかのような目だ。私はなにか、悪いことでもしたのだろうか。嫌われるようなことはしていないはず……だけど。
おずおずとドアを閉めて、みんなの視線に突き刺されながら真ん中の席に着いた。
姿勢が悪いと指摘されたことは一度もないのに、今日ばかりは我慢できない。丸っこく縮こまって、みんなの冷ややかな視線から逃れようとする。
なんで? どうして急に、みんなにそんなに睨まれなくちゃいけないの?
私、なにかした?
「来たよ、閑さん」
「ホント、性懲りもなく……」
「よく来るよねえ……」
ひそひそ話まで聞こえてくる。なんで言われのない悪口を言われなきゃいけないのだろう。
言い返したい。
でも……何故嫌味を言われているのか、理由がわからない。……なんと言い返せばいいのやら……。私、そんなに口喧嘩得意じゃないし。
誰かに助けてもらおうとまでは思っていないけど、でも……どうにかしたい。
意を決し、椅子を引いて立ち上がった。
「わ、私に言いたいことがあるなら……っ、は、はっきり言ってくれないとわからないよ!」
情けない。声が思いっ切り震えていた。私にしては頑張ったよね。
くるりと振り返って、ひそひそ話をしていた女子に向き直る。眉間に皺を寄せていた。
「はあ?」
「あんたの存在そのものがムカつく」
「自分が嫌われてるって知りもしないでさ……。よく来れるよね」
私にそう言った女子たちは見下すような下品な笑い方をする。そんな……、そんなこと今まで気付かなかった。今になってどうして? 深夜もいきなりだったし、今日もいきなり……。
私は力なく椅子に座って頭を抱えて首を振った。逃げ出したい。この腐った現実から……。
なんでこんな思いしなくちゃいけないの?
私がなにをしたって言うの? どうして今まで教えてくれなかったの。私が嫌いなら、私にかかわらないでよ……放っておいてよ……。なんでそんな風に笑うの?
じわりと涙が滲む。泣いたら負けを認めることになるのに、感情を抑えられない。
みんなが笑う。周りは敵だらけ。どうしよう。どうしたら……、