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2章_主は私の前から消えた

私たちは、マテリアル家が指揮する遠征隊に合流するため、補給の人たちについていった。

赤国は魔法の国なので、移動手段でも魔法を使うことができる。

一番早いのは転移魔法、次に魔導機関車。

それも使えなければ自然の馬を使うこともある。

魔法が使えるといっても、魔力も、強力な魔法を使える使い手も貴重なので、ほとんどは魔導機関車と馬を使う。

今回は補給用の魔導機関車に同乗するよう勧められたが、シャルル様は不満だった。

「なぜ転移魔法で移動させないのだ?!」

「僕はサンミューズ家の息子だぞ。」

「僕を蔑ろにするとは、無礼な!」

シャルル様は怒ってらっしゃる。


領主「仕方ありません。転移魔法は緊急時にのみ使うものです。」

シャルル「では、俺の派遣はノロノロやってもよいと?!」

領主(はあ、めんどくさいガキだな..)

領主「...わかりました。では、こうしましょう。」


「シャルル殿には、特別に転移魔法の使える部下を付けてあげましょう。」

「ただし、その部下には、目的地につきましたら直ぐに戻らせますので。」

シャルルは不機嫌そうだったが、それ以上何も言わなかった。

領主様は満足そうに頷いている。


そして私とシャルル様は、転移魔法の魔方陣に入り、一瞬にして討伐隊の前線基地に飛ばされた。

目を開くと、そこは大きなテントの中だった。

周囲には武装した赤国軍の兵士たちがうろうろしている。


すると、一人の兵士が話しかけてきた。

「シャルル殿ですね」

シャルル様が頷くと、その兵士は話し始めた。

「ドライブ・マテリエル少尉がお呼びです。こちらへどうぞ。」

私たちは兵士に連れられ、テントの奥へと進んでいく。奥では格のある服を着た人が待っていた。


「...もう来たのか。久しぶりだな。シャルル殿」

「久しぶりだな。ドライブ殿」

マテリエル家とサンミューズ家は交流が盛んな仲だ。

きっと二人とも友達なんだろう。

そんなことを思ったのは束の間、二人は互いににらみ合う顔をしていた


「ドライブ殿、僕の家柄を忘れたのか?貴族院の上席にもいるサンミューズ家だぞ。敬意を使え。」

「はぁ。」


ドライブ様はやれやれといった雰囲気で顔を左右に揺らしながら答えました。

「...確かに普段ならあなたの方が上です。シャルル殿。」

「しかし、ここは軍部です。赤国軍のルールに従うならば、あなたが私に敬語を使うべきでは?」

シャルル様は悔しそうにしているが、どうしようもない事実に観念したみたい。


「わかりました。マテリエル少尉、失礼した」

「それでいい。シャルル殿」

マテリエル少尉は満足げな顔をしている。

「父上からお前が来ることはさっき聞いた。援軍には感謝する」

「それで、どれくらいの兵士が来るのだ?」


「どれくらいもなにも、僕だけだ。いや、従者も一人いるが。」

「っ!」

マテリエル少尉は一瞬絶句し、次の瞬間には怒りの表情になった。

けど、すぐに冷静さを取り戻し呟いた。

「そうか。。生憎、今の赤軍はどこも定員割れなんだ。シャルル殿の活躍に期待しているよ」

シャルル様は何も答えず、踵を返した。

「それでは失礼する」

私は慌ててついていく。


テントを出ると、マテリエル少尉が言っていた言葉の意味を実感した。

そこには、赤国軍の兵士が大勢いる。

いや、案外多くはないかもしれない。

ただ、ほとんどの兵士たちが、地面に倒れていた。


「これが、戦場ということでしょうか...」

体が身震いしていた。

シャルル様は平然としており、何も答えない。

しかし、その表情は強張っていた。


カンカンカンカン!

突然、見張り台から短調の音が響く

「革命軍の襲撃だ! 全員戦闘態勢」


シャルル「ちょうどよい。フローレン。いくぞ!」

フローレン「は、はい!」

シャルル様は、待ってましたと言わんばかりに目をキラキラさせていた。

それはそうだろう。

だってシャルル様はもとより、憎む革命軍と戦いたかったことでしょうから。


私たちは、基地の最前線まで走って向かった。

最前線は、テントが張られている陣地の端っこだ。

私たちがたどり着くことにはすでに、政府軍と革命軍の兵士たちが対峙していた。


革命軍A「我々は革命軍。赤国民の未来を創る者だ!」

革命軍B「政府の兵士と言えども同じ国の同胞。寝返るなら歓迎する」

革命軍C「それでもやるなら、容赦はしねえ」


革命軍の兵士たちは、特徴的なマントをつけている。

青、白、赤の線が交差する紋章が入ったマントだ。

なぜその色なのかは知らないけど、、3色も目立つ色を纏っているので、見分けるのはすごく簡単だ。


政府軍兵A「はあ、はあ....もう疲れた。」

政府軍兵B「こんなところで死ぬ気はない。俺は逃げるぞ。」

政府軍兵C「俺もだ。」

政府軍の士気は低く、兵士たちは次々に逃げ出していた。


シャルル「まったく、情けない味方だ。」

シャルル様は兵士たちを軽蔑するような目で見ていた。

しかし次の瞬間には笑みを浮かべていた。

「おい、革命軍共。会いたかったぞ。」


「ほう。貴族か?」

「きたぜ。やってやるよ」

革命軍の一人が槍を構えて前に出た。

「お前たち、下がっていろ」

シャルル様は兵士に指示を出した。

そして彼は堂々と敵の前に立つ。


シャルル「ふんっ」

フローレン「そういえばシャルル様は、どんな魔法を使われるのですか?」

シャルル「は?まあ契約魔法とかはいくつか教わってるな。民の統治にかかせないからと父から叩き込まれて大変だった」

フローレン「えっと、戦闘系の魔法は..?」

シャルル「特にないな」


フローレン「....え!ええええ!」

革命軍A「おいおい、マジかよ。どうやって戦う気だったんだよ」

シャルル「...メイド。お前がいるだろ。さあ行ってこい」

シャルル「父上に指名されたくらいなんだ。期待しているぞ」

フローレン「そんな、わたし...ただのめいど」


革命軍B「隙あり!」

3人の兵士達が突撃してきた。

フローレンは困惑するのを止めて覚悟を決める。

両手に炎を纏い、シャルルを守るようにして前に立つ。

フローレン「ええい!」

フローレンは戦闘訓練を受けたメイドだ。

身のこなしは一流。


革命軍A「『エンハンスアーム』!」

一人は腕力にバフをかけてフローレンに殴りかかる。

が、フローレンは腰を少しさげて攻撃をかわす。

そのまま体勢が崩れた兵士を足で蹴る。


革命軍A「なにっ!」

バタンッ!

革命軍A「いたた...」

革命軍B「やるな」

革命軍C「まだまだ〜!」


今度は3人の兵士が剣を抜いてフローレンに切りかかる。

(えっ、一斉に来る!こうなったら...)


フローレンはバックステップで距離をとり、炎の刃を飛ばす。

3人は剣で攻撃を防ぐが、爆風と炎が体を襲う。

「熱いーーー!」

2人は全身に炎を浴びてしまい、地面に転がりまわる


フローレン「これで終わりよ」

革命軍C「うっ..この娘。強い..」

まだ動ける一人はこちらに背を見せて逃げ始めた。

シャルル「逃がすな!」

フローレン「はい」

フローレンは逃げる兵士の背中を炎の斬撃で貫く。

革命軍C「うわーー!」


シャルル「まあまあだな」

シャルルは戻ってきたフローレンに向かってつぶやく。

一応、満足はされたようだ。

だが、フローレンの心中は穏やかではなかった。

フローレン「はぁ……怖かったです」

シャルル「ふっ。情けないメイドだ」

フローレン「うう……」


政府軍兵A「あの子、1人で3人を相手に圧勝してたぞ..」

政府軍兵B「革命軍よりもあのメイドのほうが強いんじゃないのか……?」

政府軍兵C「あいつらは、俺らでは歯が立たなかったのに……」

フローレンはというと、革命軍を圧倒したことで注目されていた。

フローレン(うう……目立ちたくないのに)

フローレンは視線を感じるだけで、胃が痛くなるのを感じた。

すると突然、近くで爆発音が鳴り響いた。

フローレン「きゃっ」

シャルル「なんだ!」

政府軍兵A「しまった。後衛からだ!」

政府軍兵B「ここは俺たちが守る。あなたがたは爆発の方向へ」


兵士たちはシャルルに求めたが、シャルルは動こうとしない。

シャルル「気に入らない。将校ならともかく、お前に指図される筋合いはない」

政府軍兵A「...革命軍には貴族の身分で寝返った人たちもいる。あの規模の爆発を起こせるのは多分貴族です」

政府軍兵A「貴族を倒せるのは貴族だけです。何卒おねがいします!」

シャルル「ふん。」

シャルルは納得してなさそうだが、爆発音のした方へ歩いていった。

フローレン(わたしもついていく!)


道中、また何人かの革命軍と遭遇したが、すべてフローレンが丸焼きにしていく。


そして爆発音のした方向にいくと、突然正面から炎の斬撃が飛んできた。

「危ない!」

ドサッと

フローレンはシャルルを押すように抱えて斬撃を避ける。

「ううぅ」

シャルルは苦しそうな声を出した。

フローレン「大丈夫ですか?」

シャルル「っち。どけ」


フローレンは突き飛ばされた。

目の前にいたのは、炎の斬撃を飛ばしたであろう人物だった。

そしてシャルルたちの周囲はすでに、革命軍の兵士たちが囲っていた。


革命軍D「アカネさん。こいつらです。お願いします!」

アカネ「さっきから部下たちが大火傷して戻ってくるのだけど、貴方たちのせいね?」

シャルル「ようやく幹部のお出ましか。俺はシャルル。貴様ら革命軍を征伐しに来た貴族だ」

アカネ「貴方も貴族?その割に薄汚い格好ね。服装くらい改めなさいな」

シャルル「っち、ここは戦場だ。お前の服も今から灰にしてやろう」

アカネ「やれるものなら、やってみなさい」

アカネはシャルルを挑発すると、後ろの倉庫に向かって逃げていく。

「なっ!逃げるな!」


シャルルはアカネを追いかけていく。

(まずい、私もついていかないと...!)

そして私がシャルル様の後を追いかけようとした瞬間、私の目の前で爆発が起きた。

シャルル「うわっ」

フローレン「アウッ」

シャルルとフローレンは、お互い反対側に吹き飛ばされた。


フローレンが立ち上がると、周囲を囲う複数の兵士たちがフローレンを狙う。

革命軍D「お嬢ちゃんは、俺たちが相手だ!」

革命軍E「油断するなよ!こいつもかなりのタマだ。」

(これは...)

(本当にまずい)

(シャルル様は!)


シャルルのいる方には、アカネと少数の兵士たちがいた。

アカネ「これで少しはやりやすいでしょう」

アカネ「手下は手下同士で、主は主同士で戦いましょうか」

シャルル「...ふん」

アカネ「どうしたの?まさか私が怖いのかしら」


アカネは警戒しながらシャルルを煽る。

シャルルは機嫌を悪くしていた。

シャルル「……ち!これでもくらえ!」

直後、周囲に閃光が走る

革命軍兵士E「うわっ!」

フローレン(何が起きたの!?)


シャルルが投げたのは閃光弾だった。予め道具に魔力を込めて置くことで、後から誰でも魔法が使えるようになっている魔法道具の一つだ。魔力さえあれば覚えていない魔法でも使えるため汎用性が高い。

アカネ「...呆れた」

「炎魔:『フレイムバースト』」

アカネは魔法を唱えると、シャルルの周囲に爆炎が発生した。

ババンッ!ババンッ!

シャルル「グワー」


フローレン(まずいまずい!)

フローレンは焦りだす。

そしてフローレンを囲う兵士たちも彼女を襲い始めた。

革命軍D「今だ、やれ!」

革命軍E「くらえ!」

フローレン「邪魔しないで!」


フローレンは両手を振るうと、彼女の周囲一体に火柱が出現した。

革命軍E「ぐわー!」

革命軍D「撤退だー」

そして、シャルルが戦っていた一帯も火に包まれた。


アカネ「ちょ、これは一体..!?」

アカネ「あんたタダのメイドでしょう?なんでこんな魔法を使えるの!」

フローレン(思ったより効いている...!)


革命軍兵士D「アカネさん、ここは危険です!」

アカネ「ええい、小娘一人に怯むもんですか。数で押すわよ!」

革命軍兵士E「了解!」

フローレン「来る……」

革命軍兵士たちが押し寄せてくる。

ドガガガガ!


フローレンは体に力を入れた。

革命軍F「水魔法:ウォーターポンプ」

フローレン「キャッ!」

突然、革命軍から放たれた高圧の水が、フローレンの体に直撃する。

フローレンは水浸しになる。

(く、苦しい……)

革命軍E「火使いは水に弱い!このまま抑えるぞ」

フローレン「...なんの!」

フローレンは自分の身体を熱して水気を払う。

そして両手から火を放つ。


革命軍E「あっちー」

革命軍F「お前ら下がれ!こいつは俺がやる」

フローレンは走り出して、一人の革命軍兵士の懐に入る。

フローレンは左手を構えると、瞬時に魔法陣が現れ、そこから炎の矢が放たれた。


革命軍F「うぐわーーー」

革命軍の兵士たちは、燃え盛る炎の矢を浴びる


アカネ(あの子、なんで無詠唱であんなに魔法が使えるの?)

アカネ(捕虜にして聞きたいことがあるけど、この人数じゃ厳しいか)

アカネ「っち。あんたたち、撤退するわよ!」

革命軍兵士たち「ハッ」

兵士の一人が伸びたシャルルを抱えて逃げ出す。

フローレン「待ちなさい!」

アカネ「そうはさせない。『ショックバースト!』」


ドカーン! フローレンは爆風で吹き飛ばされた。

フローレン「うわっ!」


アカネはその間に、兵士たちをつれて逃げていった。

(まずい……)

(シャルル様が攫われてしまった....!)

(私のせいで……)


フローレンは遅れて革命軍たちを追ったが、追いつくことはなかった。


結局、私は諦めて政府軍の基地に戻った。

しかし、そこに私の居場所はなかった。


私はマテリエル少尉に状況を聞きにいったけど、「忙しいから邪魔だ」と跳ね返されてしまった。

所詮は従者。丁重に扱われる義理もない。

シャルル様は、どこに行ってしまったのだろう……。

私は心配で気が気じゃなかった。


夜。

私はテントの隅に座っていた。


ほとんどの兵士は寝ている。

結局あれから、誰も私に話しかける人はいなかった。

...食料を配給されることもない。

出ていけってことなのだろうか。

それに、みんなシャルル様の心配なんてしてない。

革命軍の幹部に攫われて消息不明。


そんなこと誰も気にしていないのだろう。

この基地だけでも相当な死人が出ているのだから...

ここにいても何も変わらない。

..夜明けには、ここを出ていこう。

そして革命軍の基地に行く。


ああ、シャルル様……どうかご無事でいてくださいませ。

私は一人祈ることしかできなかった。



---

フローレンはテントの隅で影をひそめるようにして眠りについた。

深夜。

フローレンは外が騒がしくなっていることに気づいた。



誰かが騒いでいる。

私はテントから顔を出した。

そこには、燃え栄える赤国軍基地の光景が目に映った。

あちこちにあるテントが引火剤になって、基地全体を火の海にしている。

慌てるようにテントから出てきた兵士たちも混乱している様子だった、

そしてその兵士たちは、何者かに狙撃されてバタリ、バタリと倒れてしまった。


私は周囲をキョロキョロさせる。

ハッと上を見上げると、そこには魔法で空に浮いている革命軍の群れがあった。

彼らは空から炎を降らせて基地を燃やし、出てきた赤国兵士たちを狙撃しているのだ。


私はテントから出していた顔をひっこめた。

これはマズイ。

このままではここも火の海にされてしまう。

なんとかしないと!

空に向かって放てる火の魔法。なんかあったっけ?


私は必死に考える。

そして思い出す!

(『フィアーソル・ストーム』だ!)

フローレンが思うと、10個ほどの火の玉が上がり、上空の革命軍たちに飛びつく。

「ぐわああああ」

革命軍の悲鳴が聞こえる。

どうやら効果はあったようだ。


何人かの兵士が落ちてきて地面にはいつくばっている。

私はその兵士に近づいて問いかける。

「貴方、シャルル様はどこ?」

「……知らねえ」

「では、アカネという人は?」

「……それも知らねえ」

「使えないわね。もういいわ」


私は兵士を蹴り飛ばすと、別の兵士に尋ねた。

「ねえ、シャルルか、アカネという人を知らない?教えないと蹴り飛ばすわよ?」

「い、いや知らねえ。」

「...じゃあ!この襲撃を指揮している偉い人の場所を教えなさい!」

「馬に乗って、地上を巡回している..黒棒だ」

黒棒?あの強靭の身体能力を持つ人?

聞いたことはあるけど見たことはない。

というか、なぜ黒棒?


耳を澄ますと、確かに馬を走らせている音が聞こえてくる。

私はお礼を言うと、兵士を置き去りにして音のする方向へ向かった。


「いた!」

革命軍の軍服を着た集団は、馬に騎乗して、混乱する赤国の兵士たちを蹂躙していた。

私は、彼らを真横から奇襲し、黒棒目掛けて突撃する。

他は全員赤棒なので、黒棒と言われただけでターゲットは丸わかりだ。

皆が赤い体をしているのに対し、彼はたしかに黒い体でできていた。

むしろありがたい。

「はあ~!」

「ぐわあ」

「なんだ!こいつ!」

周囲にはびこる敵を炎で牽制しながら、私は突撃する。

すると、私に気が付いた黒棒は馬から降りて、構える。

「....っ」


突然黒棒の姿が消えた。

次の瞬間、私はそいつに斬られていた。

「ぁああああ!」

かわす暇もなかった。

後ろを振り返ると、剣を振ったあとの黒棒もまた、私を見ていた。


揺れる体をなんとか自制して、両足を支える。

強い……。これが黒棒!。

(『炎渦疾風』!)


私は爆ぜる炎をまき散らして黒棒に放つ。

しかし、黒棒は体をひねらせてそれを回避する。

そしてまた黒棒の姿が消えた。


あ……やばい……斬られる。

そう思った瞬間、私の体から血が噴き出す。

「ぐわあ」

私は地面に突っ伏した。

もう、ダメかもしれない……。

意識が遠のいていく中、シャルル様の姿を見た気がした。


気づいたら私はテントで寝ており、隣にはマテリエル少尉がいた。

傷も手当されているようだし、どうやら助かったらしい。

「ああ、ようやく目覚めたか。心配したぞ?」

「う……ん?ここは……?」

私はまだ夢見心地だった。

マテリエル少尉は呆れた顔をして言った。

「やれやれ、まだ寝ぼけているようだね。君は革命軍に襲われたんだよ?」

「ああ……」


そうだった。私は黒棒と戦って、そして負けて、、

「マテリエル少尉、あの後どうなったのですか?」

「君は革命軍にやられて気絶した。奴らは基地を根こそぎ燃やして撤退したよ。」

「はっきり言って、軍は壊滅だ。」

「私達はいよいよ撤退することになった。」

「まだマシな状態にある師団に合流して、再起を謀るしかない」

「そうですか……」


赤国軍は当てにならない。

けど、黒棒は、シャルル様を知っている様子だった。

であるならば、私がするべきことは一つしかない。


私の力では革命軍には勝てない。

でも、従者として、私がするべきことは決まっている。


「治療。ありがとうございます。」

私は、マテリエル少尉にお礼を言って、ここを去ろうとした。

するとマテリエル少尉は私を呼び止めた。

「待て、どこへ行くつもりだ?」

「シャルル様を探しに行きます。」

「その体でか?」

「はい。それが私の使命です。」

私は、マテリエル少尉を真っ直ぐ見つめて言った。

するとマテリエル少尉は考え込んでしまう。

しばらく経って、彼は納得したように頷き、口を開いた。


「わかった。君の忠義は本物らしいな。」

「?」

「君の実力についても、部下たちから報告を受けている」

「何が言いたいんですか?」

「軍に入れてやっても良いぞ」

「お断りします」

私はマテリエル少尉の次の言葉を予見して先に断りの言葉を言った。

そしてそのままこの場を後にしようと振り返る。


マテリエル少尉は少し焦り気味で私に言葉をかける。

「どうしてだい?私と君には目的の一致があるはずだ。それに軍に入ればお金も立場も手に入る」

「先ほども言いましたが、私はシャルル様に仕えているのです」

「それは聞いた。だが軍の力があれば、貴族をさらった革命軍を倒すことも可能だ。君なら赤国を守ることもできる!」

「シャルル様のお姿が見えないのでは意味がないです。シャルル様を助ける意志があなた達にあるのですか?」

「…それは」


マテリエル少尉は返す言葉がないのか黙り込んだ。


やはり、今の赤国には革命軍と戦う力はないのだろう。 私はそのまま歩みを進めて、テント出ようとするとき、彼は小さく呟いた。

「一体何を吹き込まれてるんだろうな」

そのように言った気がした。


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