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おもらしかくしちゃだめでしょ!

 つぎのひ、あのおんなのひとがこわいめをしながらぼくとママのいえにやってきた。


「児童相談所から来た者ですが、話を伺わせていただきます!」

「何ですか急に、今日もこれからパートで」

「そんなのは後で結構!とにかく、上がらせてもらいます!」


 ママとそのおんなのひとのこえ、ぜんぜんおおきさがちがう。

 ママのおともだちたちがくちにてをあてながらふあんそうにみてたけど、そのおんなのひとはぜんぜんかんけいないってかんじでずんずんぼくとママのいえにはいりこんできた。

「この前泥棒に遭った際、お巡りさんに男の子は実家の母親に預けていると言ったそうですね。でもあなたの実家にうかがった所、そんな話は聞いていないとの事ですよ!」

「あれ、おかしいなあ……」

「おかしいのはあなたの感覚です!一体子どもはどこなんです!」


 このひとなにいってるの?ここはママと、ぼくの、おうち。

 ちゃんといるよ。


 おかしいねえこのひと、ねえママ。


「去年の年末、あなた焚き火をしませんでしたか」

「しましたけど」

「それから少し前の日を最後に、誰もあなたのお子さんの姿を見ていないそうですね。一体半年もの間、一体子どもをどこにやったって言うんです!」


 …………ぼくなにをいってるのかわけわかんない。

 でもママがものすごくこのひとにめいわくをかけたっていうことだけはわかる。


 だから、おもいっきりおしおきしてもらう。


 おもらししたのを、みずをこぼしちゃったってうそをついたぼくにしたみたいなおしおきを、このひとにしてもらうから。


 それで、みんなにみてもらうから。


 ママがぼくにいったみたいに、にどとそんなことなんかしないようにって。


 だから、みんなにみてもらう。

 そのために、おそとにでてもらう。


 ごめんねママ、これもママのためだから。ぼくとおなじように、わるいことをしたらちゃんとおしおきをしてもらわなきゃいけないんだよね。


 だから……

 あっひもがないや、しょうがないからてでやってね。


「あっちょっと…………ああ誰か、誰か引き剥がして下さい!!」

「は、はいっ……ダメです、手が固く縛られていて動きません!」

「謝りましょうよ、私の間違いでしたって!」

「できますかそんな事、男の子の命はっ……ああ誰かー!」


 あれおかしいな、どうしてだろ。

 ママがわるいことをしているからせっかくおしおきしてるのに、なんでみんなやめてくださいっていうの?

 ママのおともだちも、おしおきしてるおんなのひとも。

 ママはっていうとくるしそうなかおをしてひっしにはんせいしてる、じぶんがやったことがいけないことだってわかってるからね、そうだよね、ママ。うんえらいえらい。


「謝りましょうよ、でないとこの人死にますよ!」

「謝らないとこの手が離れないとでも言うんですか、ああっ誰か……!」

「そうですよ、これまでの人みたいに、みんな奥さんを傷付けようとして……!今ならばまだ間に合います、早く謝って」

「できませっ…ん…!こんな非道な振る舞いを成すような、幾度痛い目に遭っても反省しない人は…!」


 あれ?ママのかおがまっさおになって、くびががくんっておちちゃった。

 どうしたんだろ?ほんとうにくるしそうなかおをしてる、もうじゅうぶんにはんせいしたみたい。

 だからもうおしおきはしゅうりょう、そういうことだよね。

「あっやっと手が離れた…ねえもしもし、お子さんはどちらですか、お子さんは…!」

「その前に救急車を!」

「もしもし、もしもし…!」

 あっ、ママおもらししちゃった。

 こんなところでおもらしするだなんてはずかしいよ。だからもういっかいおしおきしてもらわないと。

「あっ、また手が…!」

 ねころがったままおもらししちゃったママのおしおき、おしりぺんぺん10かい。

 ママのおともだちもとめないでみてる。

 そうだよね、わるいことをしたママがいけないんだよね、みんなえらいね。

 それでね、そのあとあのおんなのひとはしろとくろのくるま、そうパトカーっていうのにのっておまわりさんといっしょにどこかへといっちゃった。

 それでママはしろとあかのくるまにのせられてまたべつのどこかへとむかった。ぼくわかるよ、あのふたりのしろいふくをきたおとこのひとはママのことをだいじにしてくれるって。

 だから、ぼくがみとめてあげるから、ママをどうかおねがいね。

 







 それからちょっとだけあと、ママのおともだちたちがみんなかなしそうなかおをしてならんでる。みんなすごくつらそう。ママのせいなのかな?きれいなまっしろのふくをきてねてるママをみてものすごくかなしそうにしてる。


「どんな気持ちでいるんでしょうかねあの子……」

「こんな年齢で親を失ってしまうなんて、はあ…………」

「全く、どこまでも薄情な父親です事!」

 そういえばさあ、パパどこ?ぼくいちどもみたことがない。どこにいるのかだれかおしえて。

「しかし、親族一同誰も来ず……ですか」

「辛い事ですね、せめて私たちだけでも…………」

 でもさママ、おともだちをなかせるようなことをしちゃダメだよ。だからさ、ぼくとおなじようにおしおきをうけてもらうから。


 だいすきなママだからこそ、ぼくがさいごにうけたおしおきを、ね。


 あれ?きのはこごとやるんじゃないの?それにしてもきれいなきのはこだよね。

 ママはぼくよりえらいから、きれいなきのはこなんだね。

 でも、はこごとはやらないんだね。

 いいよね、ぼくはダンボールだったのに。

 ねえママ、こんどいっしょにあえたら、またヘリコプターをとばしてあそぼうよ。

 ママがママのパパからむかしもらってきてくれた、おしいれのすみっこにしまってた、ぼくのたからもの、おもちゃのヘリコプター。




 ねえ、ぼくのだーいすきなママ…。

さて、明日からは武田勇戦記の第六章をお楽しみください。→https://ncode.syosetu.com/n3526hw/

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