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6話 イケメンと城下町へ


「コニャック様はそちらの世界でいう貧血の類いで苦しんでおられるのです

再生不良性貧血に似ているかもしれませんね

ジェルドワーフの体液も 構造は見て呉れはシンプルですが

含有量とその種類となる元素がツバメ様人間とほぼ同じなのです」


コボルトは厩舎きゅうしゃから馬車に乗って玄関までやって来る


「突如の栄養失調により 弱った身体に細菌が感染したことで起こった発熱が

今のコニャック様を蝕んでおられるのかもしれません

さぁツバメ様 乗って下さい」


荷台にコニャックを背負ったツバメが乗り込むと同時に コボルトが三つ目の馬を走らせた


「ツ…… ツバメ~~」


「何だコンニャク娘」


「膝枕しておくれでゲル~」


「アンタね~…… ったく」


両脇を掴んで自分の膝に近づけると コニャックは一時喜んでそのまま静かに眠る


ーー……なんか馴染んでしまったな


馬車が進むごとに見えてくる新しい景色

坂を下って森を抜けた先には海が広がっていた


「コボルトさん 質問いいですか?」 


「はい何でしょう?」


「コンニャク娘はそのジェルドワーフっていうスライムみたいな種族なんですよね?」


「ジェルドワーフは生れた頃は色に種類があれど 見た目が同じゼリー状の生物になります

コニャック様のドワッフル王家も例外ではなく 皆大地のバラバラな場所で生れるんです」


「でもその…… 今は人間の子供のような体型なのは固有能力みたいなものですか?」


「元々定まることのない液体に命が宿っておられますから

何にでもなれる自由の象徴 裏を返せば自己のアイデンティティーと言うべきなのか

知識を得れば自然に変身を試したくなる本能のようなものですかね

私は生れた頃より人型ですので お気持ちを察することは不可能ですが

原型を留めていない同じ形の者達がいて 個性を見つけようとしたくなるのは

自分の生きがいを探しているように見えて 私は誇らしく思っていますがね」


「コボルトさんって自分の主をまぁまぁ上から見てますけど自覚ありますか?」


「ドワッフル王家は慕わせるというよりは 気付ば隣に立って手を差し伸べる方々でしたので

王家の皆様は恐れられるとか 従わざるを得ないではなく

信頼と愛される支持が集って君臨される それが

ライブトゥギャザー王国を治めるドワッフル王家の歴史なのです」


「ふーん…… でも忠誠心とかはあるんですよね~~」


「そうですね 主君に仕える者として当然ですが

自発的に忠誠を誓ったのはやはり コニャック様に手を差し伸べられた瞬間でしたかね」


「いつかコボルトさんの思い出話も聞いてみたいです」


「ハハハ!」


急に笑い出すコボルトに不思議がるツバメ


「どうしたんですか?」


「いえ…… ツバメ様が私達に興味を湧いて下さった事につい嬉しくなってしまいましてね」


「あっ……」


「いくらでもお話しますよ コニャック様の知ってること全てを」


ーーいえ…… あなた様の事をもっと知りたかったんですが……


ツバメは顔で笑って心で泣いた

そうこうする内にも 既に視界に入る巨大な王国は目の前に迫っていた


「さて…… すみませんがツバメ様」


「はいはい」


「少しばかりお力を借りたいのですが……」


「はいぃ?」


森の奥から一台の馬車が走って来るのが見えて 一人の男が確認を取ろうとその馬車を止めた

王国を囲む分厚い壁に構える 大きな門を守る関所の門兵だ


「名前を伺ってもよろしいかな?」


「アスラです 〝アスラ・ド・シュラバー〟」


「ふむ…… 見ない顔だな?」


「近くの郊外の農村から来ました 王国に来るのは初めてです」


「何用で?」


「お使いを頼まれました

あとは本格的に商売する時の為に 町並みに慣れろと言われて」


「そうか…… 基本表通りは危なくはない ただし裏町には行くなよ

嫁入り前の娘がまだ色々と失いたくないのならな 通ってよろしい!」


「ありがとうございます」


「あぁそれと……」


門兵は荷台の布をジロジロ見ながらも


「そちらの山に小柄な少女と大柄な男の二人組を見なかったか?」


「いえ…… 怪しい者達は見てませんが」


「発見次第 国に報告するように」


「犯罪者とかですか?」


「いや…… 逆に報告してくれた場合は国から多大な報酬が与えられる

だからもしもの時はよろしく頼む」


「わかりました!」


難なくクリア

遠くまで広がる住宅街の数に圧倒されながら進む馬車は 人目の付かない裏路地に隠れる


「何なのよアスラ・ド・シュラバーって」


「こっちの世界ではそう名乗れと言ったでゲルよ……」


「都合が良いとか? まぁとりあえず王都に来たってことは医者を探すんでしょ?」


ヒラヒラと両腕を煽るコニャックの身体を 顰めっ面で背負うツバメは

コボルトの案内に付いて行き 人気のない民家の前へと辿り着いた


「私が昔世話になってた診療所です さぁ中へ」


と言われても おいそれと中に入れないツバメ

何故ならしっかりした医療センターには程遠い 言ってしまえば闇医者の根城に近い

昔はこういうボロ屋にでも ちゃんとした腕利きの医者がいたとは思うけど


「中は…… 散らかってますね……」


清潔感溢れる名医は捨て 髭を生やしまくる闇医者を覚悟したツバメであった



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