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5話 血が足りねぇでゲル


リビングでソシャゲをしているコボルトは

玄関の扉が開く音と共に スマホを懐に入れて出迎えに行く


「お帰りなさいませ…… コニャック様?!」


そこにはデロンデロンに溶けたコニャックを抱える ローションまみれのツバメが立っていた


「ホント気持ち悪い……」


「私はコニャック様を介抱しますので ツバメ様はお風呂にどうぞ」


替えの服とバスタオルを渡されたツバメはゾンビの様に風呂場へと向かう


「うぇ~~ ベトベト~~」


脱ぎ辛い服を籠に投げ捨てて 大浴場へと足を踏み入れた


「さすが王族だけあって風呂は大きいわね~~」


ジェル状の液体をシャワーで洗い流して そして


「フフフ~~ン♪」


助走をつけて浴槽へとダイブ


「ハァ~~~気持ち~~~ こんな大きな風呂を独り占め出来るなんて~~」


一時間くらい浸かると 風呂から上がって体を拭き

用意された服を着て鏡を覗いてみると


「コスプレだな……」


渡された異世界の服は 主張しないシンプルな花柄のワンピースだった

大人の女性が着るような至って控えめな装飾だ


「動きやすいし ちょっとラフな感じは私好みだ」


タオルで髪を乾かしながら ドライヤーを求めて自分の部屋へ向かう途中で足が止まる


「……あいつ大丈夫かな?」


様子だけでも窺おうと コニャックの部屋へと方向を変えた


ーーかなり弱ってたからな~~ ていうか暑いの苦手ならなんで外になんか出るのよ


部屋をノックしてドアの隙間から覗いてみると


「行かせるでゲル~~!!! ツバメの裸を拝む絶好のチャンスではないか~~!!!」


「……心配して損した」


ガクッと頭を落として戻ろうとするツバメに コボルトから声がかかる


「湯加減は如何でしたか?」


「とても気持ちよかったです!」


「それは良かった ……それでお願いがあるんですけども

コニャック様に水分多めの料理をお作りしたいのですが

しばらくの間 ここで看ていてはくれませんか?」


ーーゲッ!


イケメンに頼まれたら断ることも出来ないツバメは 渋々ベッドの横にある椅子に座る

一応苦しんではいるコニャックの顔をジロジロ見ていると ふとあることに気づいた


「何か…… 小さくなってない?」


顔を近づけてよく見ると 確かにロリがさらに小さくなっていることが分かる

ついでにこの機会を利用してコニャックの頬を突いてみる


「あぅ…… あぅ~~」


「……今はベトベトしない 不思議な身体」


「もっと…… もっと刺激を~~ ツバメ~~ ゲル……」


「元気なのか弱ってるのかややこしいわ! とりあえずちゃんと寝てなさい!!」


二回のノック音の後にコボルトが病人食を運んで入って来た


「コニャック様お持ちしました

〝ゲテマルエビの冷製コンソメ アトランティス風味のハーブとブドウを添えて〟です」


「アトランティスあるの?!」


ツバメがツッコんでる間にも コニャックは身体の一部を触手に変えて皿を受け取る


「待って!! 今何したの?!」


「ツバメ様! コニャック様の容態は軽いものではありませんので もう少しボリュームを……」


「あっ…… ごめんなさい」


スープを飲み干すしてもコニャックはぐったりと横たわり

顔色の悪さと息の荒さが深刻な状況を物語っている


「っ……」


「ジェルドワーフ特有の症状なので感染とかはもちろんありませんが……

自然治癒で元通りになるに必要な 体積が些か不足し過ぎています」


「だからロリよりもロリなのね」


「質量保存の法則という言葉はご存じですか?」


「うっ……

確か化学反応しても物質の総質量は変わらない……

増えたり減ったりしないってことですよね?!!」


「ですが今回の場合 コニャック様の総質量は一回り分 急激に削られているのです」


「えっ…… まさか……」


「そうです ジェルドワーフは直射日光を多く浴びれば浴びるほど

素の体液100%ゼリーが溶け出します」


「ゼリーって……」


「しかしいつもは日陰にいるか 傘を差すよう言い聞かせてますのに……

先ほどツバメ様と一緒に外に出てましたが 何をされていたんですか?」


「あぁ… 一時間くらい落ち込みながら日光浴してたかな!」


「な……?! なんでそんなことを……」


「ショックを受けたからじゃないかなー 立ち直れなかったみたいだし」


「なんということだ……」


あたふたするコボルトとは反対に 事の重大さをいまいち理解していないツバメ

冷静な彼女だが ふとあることに気づく


「待って それじゃコンニャク娘を運んできたときに

私の身体に付いていたドロドロの奴って……」


「はい コニャック様の体液でございます 初めはただの夫婦の営みかと思いましたよ」


「おぅ…… ちょっと受け入れラレマセン」


鳥肌で腕がサボサボしてきた真っ青のツバメは コニャックの方を振り向く

そこには息を荒げながらグッチョブサインを掲げる幼女がいた


「ツバメ…… との…… 初ローションプレイ…… 最高だったでゲルよ!!」 


「黙ってなさい!!」


「ハァハァ…… だんだんヤバいでゲル…… 血が足りねぇ」


普段うるさいから 静かになるコニャックを見てツバメは決心する



「どうすれば助けられるんですか? コボルトさん」



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