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4話 美人局←つつもたせ と読みます


時計の針の動く音が敏感に聞こえてくる リビングに流れる重い空気は

十二時の知らせと共にハトが飛び出す合図で緩和する


「昼食をお持ちしました」


二人分の食事を用意するコボルトは

それぞれの目の前のテーブルにお出ししてドームカバーを外した


「今日は日本で流行っているボンゴレビアンゴという料理に挑戦してみました」


ガーリックの香ばしさたるやなんたるか

不快を覚えることなく啜れるパスタには オリーブオイルもしっかり使われていると教えられ

アサリの味付けや全体のスパイスも文句なしのバランス


「未成年という対象者を考慮しまして

レシピに書いてあったシロワインというお酒は省かせてもらいました」


完璧の一言

容量と器量の良さは 今のところ召使いの立ち位置であるコボルトは有能と讃えざるを得ない


「ただコボルトさんは何を持って流行メニューと提言するのかそこがわからない」


「ネットという便利な辞書に〝絶品〟だの〝人気№1〟だの

〝これを無視しては時代に遅れる〟などというワードを元に決めております」


「ハァ… まぁ美味しいから良いですけどね」


「しかしネットを漁れば魅力的な料理が星の数ほどですね

インスタグラムとかいうSNSに関しては 美しい料理の写真がよりどりみどりの宝庫

被写体のアングルや光の微調整へのこだわり

世界観を彩る芸術的な写真を撮るスペシャリストがたくさんおられるのですね」


「最近は特にね ていうかここネット繋がるんだ」


「ワイファイなる見えざる便利なアイテムも設置してますよ

ここ寮の範囲内なら接続可能かと」


「私達の世界に興味津々なんだねコボルトさんは」


「えぇ…… 私達から言わせれば〝先進世界〟ですからね 得るものは一歩で発見です」


自分の知ってる事を知っている彼との会話に盛り上がるツバメは

不意にコニャックの方へと視線をずらしてみる


先ほど一発ド突いた所為か 黙りこくってしまったのだ

パスタを一本一本啜る彼女は見てて我慢ならない


「もう怒ってないからさっさと食べたら? コンニャク娘」


「うっ! 別に圧倒された訳ではない!! 個人の意思で反省してるだけでゲル」


「可愛くなーい」


「それは地味に傷つくでゲル!! これでも年増の娘ゾルよ!!」


「年頃の娘は口周りをオリーブオイルで塗りたくったりはしませ~ん」


「んん~~!」


コニャックはナプキンで口元を拭き回す

相当ムキになったのか 貝殻をガジガジ噛んでツバメを睨んでいた


「ちゃっちゃと食べて済ませてよね まだ聞きたいこととかあるんだから」


「言われなくても ハムン!! ハムッ!! ハムゥゥゥゥ!!!」


ーーこういう分かり易いところは可愛いんだけどな~


ツバメは席を立ち

コボルトに一言断りを入れて寮の玄関に向かう


「そういえば外ってどんなんだろう」


今更とんでもないことに気づいた

とんでもないくらいワクワクする渡り廊下を歩いている最中

ズカズカと先を追い越したコニャックが現れる


「ちゃんと完食したの?」


「三分もあれば朝飯前でゲル!」


「今は昼だよ」


「うるさいでゲル!」


必死に前を歩く幼女にツバメは閃いた

仕返しというわけでもないが わざとらしく前を追い越してみる


「「 ………… 」」


同時にダッシュで玄関まで競争し始める二人だった


「廊下は走っちゃ駄目ですよ~~ってもう遅いかな」


コボルトが台所から注意するときには互いに靴を履き 外の空気を吸っていた


「ふ~~ん これがワイフガーデン…… ん??」


寮の外観を眺めていると看板が気になった 何故なら


「おいコンニャク娘」


「何でゲル?」


「あの看板 漢字の部分読んで見てゲル」


「ゲルを真似するでないでゲル! 〝びじんきょくほりゅうそう〟

ツバメを歓迎しているでゲルよ~ お礼ならほっぺにチュ~…… とか……」


ツバメは呆れてものも言えん状態だった


「あれ〝つつもたせ〟って読むの」


「ツツモタセでゲルか! でも意味はさほど……」


「夫婦が共謀し行う恐喝または詐欺行為

つまりあなたは私にハレンチな犯罪行為に手を染めさせたいのかって意味になるよね」


「なっ…… なぬぅぅぅぅううううううう!!!!」


知らないは罪ではない 知ることで一時の恥を済むのだから

だがこれに関しては知らないでは済まされない

例え他者が許そうと 自分のプライドが許せないときが一度や二度訪れるのだ


ーー炎天下の日差しの許

ワンピースを着た空色の髪を靡かせる耳の尖った幼女は

煮えたぎる大地より 立ち直ることが出来ないのであった


恥故に



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