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33話 前夜祭でゲルルルルン


学園祭の準備は順調に

しかしどこか不穏な空気に苛まれながらも

いよいよ明日という期日まで迫った中

ワイフガーデン組とゲストでドリアードを迎えて 前夜祭が寮で開かれた


「それじゃぁ皆さん グラスは持ちましたかぁ?」


「コンちゃんが乾杯の音頭を取るってことは長くなるな~~」


「カンパァァァァァイ!!!!」


「「「「「 カンパ~~~イ!!!! 」」」」」


フラグをへし折るコンの合図と共に皆のグラスが音を奏でる

だが一人だけ音色が響かないグラスを持つ者が一人


「どしたのドリアードちゃん?」


「いえ…… 皆さん!!」


グラスを持ったままドリアードは立ち上がり

盛り上がろうとし始めている周りの注目を集め


「この度は本当にありがとうございました!!

私だけでは到底…… 今回のようなイベントを起ち上げることなど叶わなかった

王女のコニャック様や異世界から渡ってきたコンさん達

それに転校生のハーフルさんやウホマンドさんなど

私達がもてなさなければならない方々に 助力を乞う形になってしまい

未熟だった我がクラスは 折良く学祭というものの楽しみ方を学べると思います

本当に…… 本当に!! 皆さんと出会えて良かったです!!!!」



「「「「「 ………… 」」」」」



当然 少しオーバーなドリアードの感謝に戸惑う一同 一名を除いて


「いいんでゲルよ…… あっ王女として~~ 当然のことをしたまででゲル~~」


「今回に至ってはコンニャク娘のおふざけが正しい!!」


「褒められた?! ……私はツバメに今!! 褒められたでゲルゥゥゥゥゥ!!!!」


窓を開けて雄叫びを上げるコニャックを余所に

コンはドリアードのそばに近づいて


「まだ学祭は終わってないでしょ~~? ウィ~~」


「そ…… そうですね」


コンの様子がおかしい

そう思ったツバメはコンが飲んでるグラスを急いで取り上げる


「これ…… お酒?!」


「ドリアードちゃんって~~ 意外と肌モッチモチなんだね~~」


「ちょっとコンちゃん!! 未成年でしょ?!」


「ドリアードちゃん何飲んでんの~~ え~~ジュース?! ジュースなの?

か~~~わ~~~い~~い~~~~~~」


肌を擦り寄らせるコンを 全力でひっぺ剥がすツバメは勢い余ってコンと共に倒れる

仰向けのツバメが目を開けると 真っ赤な顔のコンがガン見していた


「ツバメ~~ ちゃんと呑んでるぅ?」


「コンちゃん落ち着こ!! まずは落ち着こう!!」


「ヒック…… そうだね…… とりあえず落ち着くことをここに宣言しマッスル!!」


立ち上がるコンが向かった先は窓際のコニャックだった


「コニャックの旦那~~ 風に当たっての~~? 涼んだ~~?」


「ゲッ……」


ぬいぐるみの様に抱きかかえ

あばらが折れそうなくらい猛烈なハグを施される


「ゲルゥゥゥゥァアアアアアアア!!!!」


生理的に拒絶する悲鳴

コニャックはそのままコンを振りほどいて私室へと逃げ込んでいった


「どうしっちゃったのですかコンさん……」


「完全に酔ってるね…… まさかあそこまで酒乱だったとは」


怯えるハーフルはテーブルの下に蹲って避難している

どうにかしようにもツバメ以外の連中はまるで動じていない


「ちょっと!! コンちゃんにお酒渡したの誰?!」


「あっ! 私です」


手を上げたのはコボルトだった


「ライブトゥギャザー王国では18の年を迎えたら飲酒OKとなっております!!」


「日本では二十歳からなの!!」


必死のツバメの説得も虚しく

後になって反対意見を持ち出す者が続出する


「俺の故郷では産まれた時から酒を飲むのが普通だったな

別に身体に取り入れて害があるわけでもなかったし」


「そうだけどワイルドの次元を超えてるわ!!」


ウホマンドに続きチワワもちゃっかりお酒を飲みながら語り出す


「オークに関しては驚きだけど

飲酒解禁年齢で18歳からオッケー貰える国は結構多いのよ

10歳から飲んでいいアンティグア・バーブーダって国があったのもびっくりだったわ」


「でも…… でも読者がマネして未成年のうちにお酒飲んだらどうするのよ!?」


「メタいわねツバメ」


そんなツバメの肩に垂れる恐怖の魔の手が


「大体うちらの歳になる子達なんてさ~ 憧れてついつい興味で手を出すもんなのよ~

私が思うに やっちゃいけないことは酒自体を飲む事じゃない!!

1つ 飲酒した状態であまり外を出歩かないこと!! 飲酒運転なんてもってのほか

2つ 煙草は依存性が高いから成人してから吸ってみることにするように

  むしろ身体に害しかないから喫煙とは無縁の方が良し!!

3つ 薬物に手を出すくらいなら煙草に手を出せ!! 

  酒だけなら ちょろっと舐めるだけでも成人してからの楽しみが増えると思うんだ~~」


「……なんやかんやでコンちゃんの説得には逆らえる気がしない」


「お酒は身体に良いんだよ~~

本能的な部分を司る大脳の古い皮質の働きが活発になって 精神が高揚して元気が出る!!

それに心筋梗塞などの冠動脈疾患による死亡率が低い傾向にある!!

だから…… バランスを考えて…… 酒を嗜む事が……」


視界がボヤけ 千鳥足で舞うコンはその場に倒れた


「ごめん…… 説得力ないよコンちゃん!!!!」


「一杯目でダウン…… 相当お酒が弱いわね」


せっかくの前夜祭のスタートが波乱に終わった

コンを担いで部屋へと運ぶツバメ 溜息を漏らしながらも気を許せる相手なのだから世話も焼いてしまう


「確かここだっけ……」


扉が開かれて久しく見るコンの私室

昭和の人間を思わせるさっぱりした畳の部屋 隅にあるベッドにコンを寝かす


「もう…… お酒は今度から禁止するからね」


「べらんめぃ!! こちとら日本の国で18年間禁酒してきたんだい!!」


「それ当たり前…… てかいつから酒を我慢してるのよ」


支離滅裂なコンの寝言にも優しく返すツバメは

窓辺に映っている 懐かしいとも思ってしまう地元の景色を眺めていた


「よく眠っているわね…… まるでおっさんのように」


「チワワ……」



「無理もありませんよ…… コンさんは人一倍頑張ってましたから疲れたんでしょうね」



部屋の入り口にチワワとドリアードが顔を出し

共に日本の美しい夜空を眺めていた



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