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32話 今更ながら異世界の言語共通に触れてみた


夕暮れも近いドヴェルグ学園での放課後

どのクラスも準備に熱を入れ 淡々と外観を装飾している景色を眺めながら

ツバメとチワワは三年Aカップ組を覗く


「あれ?」


「誰もいないわね…… ここじゃないのかしら?」


しばらく館内を探していると

本来は体育の授業などで使われるだだっ広い室内競技場へと出る


「……マジでか」


屋内全てがライブハウスへと様変わり

奥のステージには歌を練習するハーフルが

そして中心では 小道具の飾り付けやテーブルの配置を指示するコンがツバメ達に気付く


「おぉ!! どうだった戦闘員達よ!!」


「ショージ達を抑えることは成功したけど 大元の足を辿ることは出来なかったわ……」


「な~~んだ ラスボスはショージだけに収まらなかったってわけか

反乱側の人達も中々盛り上がらせてくれるじゃないの」


「……コンを見てると毒気に当てられるわ」


「ナハッ!! ナハハハハハハ!!!

……時に隣の奥さんや ステージ裏で旦那様が禁断症状を引き起こしておりまっせ!!」


ハーフルが練習してるステージの隅から漂う 禍々しい負のオーラにツバメは溜息を吐く


「あいつ…… ちゃんとクラスに貢献してるんでしょうね……?」


「統率の執り方はある程度まで伝授させたから 王子を除くクラスの団結は気持ちが良かったよ

王子といえばセイザンとスザク…… あとは憎ったらしい野獣も一応協力してくれてる」


「……ゲンブラーは?」


「私が指揮系統の上位にいることが気に食わないみたいで全く姿を現わさなくなったわ

対象を批判してたけど周りに認められたもんだから 悔しくて姿を消すネット民のようね」


コンが鼻高々と笑う中で

ツバメとチワワはショージの話が頭を過ぎる


「コン…… 少しだけ話があるわ

ツバメはコニャック様のメンタルケアに向かって」


「ハァ…… しょうがないか……」


二人だけを残して ツバメはステージ裏の用具収納庫へと階段を降りた


「あ!! ツバメ様!!」


「ハーフルちゃん! ……様はいらないからね 歌の方は調子良さそう?」


「いえ…… まだ上手く歌えなくて」


「そうなの?」


「あと〝英語〟…… という日本とはまた違う別の言語を覚えるのも難しいですね」


「ん? どゆこと?」


ハーフルとツバメが話している中

突如横からミニマムダイビングボムがツバメに炸裂する


「ツバメぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


「うぐぅおっふ!!」


そのまま積み重なるマットへと直撃する


「こんの~~」


「ゲルへへヘヘヘ…… 妻の成分を大量摂取でゲル~~」


「いい加減にしろっての!!」


近くに置いてあったマットで コニャックを恵方巻きに転がし

綱引きに使うであろう綱でグルグル巻きにして てるてる坊主の完成だ


「ハーフルちゃん さっきの話なんだけどさ

……日本語や英語ってなんやかんやツッコまない精神でいたんだけど?」


「あっ…… てっきりツバメ様はご存じだと思って話してました

私達の世界は言語が共通…… というよりも共鳴し合っているんですね」


「全くもって解りません」


「私達は言論の摂理号令バベルコマンドと教わります」


館内の小窓から見える景色にハーフルは指を差す


「丁度窓の外に見える黒く野太い柱が見えますか?」


「ちょくちょく視界に入ってたけど

よくファンタジーの世界にある世界樹なのかなぁって思ってた」


「はい世界樹です!!」


「どこの異世界にもあるんだ……」


「あると思いますよ 正確にあれは〝世界樹の枝〟ですからね」


「枝なの?!!」


世界樹の救いの手ウッドバベルという名前で生い立ち

私達の命の存在と同調する生命の根源なのです

そしてあの枝から発せられるバベルコマンドは種族別の言語の違いを翻訳し

聞き手に理解されやすい言葉へと変換するのです」


「じゃぁ本当はハーフルちゃんの話す言葉って全然違うの?」


「そうだと思いますよ

私がコンさんに教わった英単語は 口から発せられると聞き取りやすい言語に変わりますが

こうやって紙に文字を起こせば英語というものが何なのか理解出来ます」


渡されてた紙には日本語と英語が入り交じる今風の歌詞が載っていた


「でも結局変換されるなら日本語も英語も無意味じゃない? 聞き手側からしたら」


「そうだと思ったんですけど……

実はこのバベルコマンドは皮肉にも個人差によって特殊な影響が発生するのです」


「特殊な影響って?」


タイミング悪く ウホマンドから呼ばれたハーフルは急いでステージに上がろうとする


「ごめんなさいツバメ様 まだ発音とか上手に出来なくて練習しなければいけないので」


ペコリと一礼して別れてしまった

しかし続きを話してくれるのは会話が終わったであろうコンとチワワだった


「ねぇツバメ!! С миру по нитке — голому рубаха!!」


「え?! なんて?!」


「こういうことなんよ 言語の変換にも理解力が必要ってことなの」


「……てことは」


「簡単に言っちゃえば

勉強不足な人は難しい漢字を並べてペラペラしゃべる人の言ってることが全然理解できないのと同じ事なんだ」


「でも言語は違っても世界樹が翻訳してくれてるんでしょ? 矛盾してない?

もしその人に語彙力が無くても理解可能な範囲で言葉を選ぶこともできるんでしょ?」


「最低限はそうさ だけどこれは人間の本能的な部分が関わってくる

レベルの低い者がレベルの高い者と直接一緒に行動する場合

レベルの低い者は引き上げられる 本能で相手が優れていると分かるからだ

人間は言葉で接点を図る進化フィルターを持ってしまったばかりに

自分の気持ちを上手く他者に伝えられないときもある

相手の意見に対して自分が思ってたことが外れてしまい 反論が叶わないときもある

けれど優れた者から発せられる言葉から最良の可能性を自ら導き出す

〝学ぶ〟という武器も身につけた」


「つまり…… ハーフルちゃんの歌を聴く客達も次第に歌詞を理解できるようになる」


「そういうこと!! ……せっかく世界樹なんてお高い存在をダメ出ししようと思ったらさ

ちゃんと考えてあるんだもん 嫉妬するわ~~ ムカつくわ~~」


「……私達はちゃんと仲良くできるように 世界は創られるんだね」


「そう…… これは〝理屈〟ではなく紛れもない〝本能〟

だからこそ人間は互いに刺激し合い 成長し進化してきたんだ」



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