28話 ワイフガーデン組 作戦会議
その夜 ワイフガーデンのダイニングにて既に
コン達は晩ご飯を用意しながら会議を開いていた
その賑やかな声は帰宅するツバメ達三人の耳にも届いている
「たーだいま!!」
「あっ来た来た おかえりツバ…… ん?!」
出迎えにやって来るコンはつかさずツバメとコニャックの後ろにいるチワワに抱きつく
「お前も来てたのかよ~ チワワぁぁぁぁああああ!!!!」
「久しぶりね コン 相変わらずの勢いで人生を謳歌してるようね」
フードを取るチワワに駆け寄るコンは抱きついた
コンはツバメも入れて二人の肩に腕を回し 三人仲良く台所へと引っ張っていく
後を歩くコニャックは嫉妬するかと思いきや 穏やかな表情
「さて諸君!!」
過半数が料理を作っている中
コンとコニャックだけはテーブルに着いて会議の指揮を執った
「その前に質問を…… コボルトさんはなんで既にここにいるの?」
「私はいない方がいいんですか?!!」
火を通して具材を炒めていたフライパンの金具の振動音で動揺を見せるコボルト
「コンニャク娘に付いて行ったんですよね?」
「私は護衛なので門の前で別れたんですよ
皆様の食卓の準備も必要でしたので 先に帰らせていただいた次第です」
「なんと無責任な……」
「いえいえ ちゃんとツバメ様が迎えに行ってくれると確信できたので帰れたまでです
護衛はサンダーライガーもいることですので 帰宅中も安全だと踏みました」
コンは咳払いを一つ放ち
気を取り直して学園祭とRSTの件についてまとめた
「取り敢えずツバメとチワワとコニャックの旦那は知らなかったから伝えるけど
私とドリアード班は今日のホームルームにて 貴族のクラスメイト達を説得するすることが出来ました」
「「 おぉ!! 」」
「王子の四人が納得してくれたかどうかは分からないけどね
んでツバメ コニャックの旦那補完計画の方はどうだった?」
リビングに皿を持って行くツバメは コニャックをチラ見するなりほくそ笑んで
「まぁ…… そこそこ頼りになる幼女になったとは思うわよ」
「ゲル……」
捨て台詞のように出て行ったツバメの一瞬の出来事はコニャックのハートを貫いた
「それじゃぁ食事を済ませるなり 本格的な打ち合わせをしますのでよろしこね!!」
「それはそうとコンさんとコニャック様
人数もいますので早く食事の手伝いをお願いします」
いつの間にか八人という大勢で食卓を囲む寮内も日常となっていた
食後の皿洗いで当番となっていたツバメとマミー
黙々と皿を泡立てるツバメに マミーはじっとこちらを見つめている
「どうしましたマミーさん?」
「今日はどんなことがあったの?」
「あぁ…… コニャックと一緒に城下に行ったんだけどね
裏町のお世話になった人に挨拶しに行ったら不良グループに絡まれちゃってね」
「え?! だから怪我してるの?!」
マミーは包帯グルグルの手でツバメの頬を触った
「大丈夫大丈夫!! ていうか……
これは力が入らなくなって倒れた時に作った傷だから」
「そう…… 良かったぁ」
マミーの安堵の一息は他人を心配するのとはまた別の
まるで身内を思いやる必死さを ツバメはどこか違和感を感じ取っていた
吹き終わった皿を戸棚に収め 二人は皆が集まるリビングへと向かう
「おっ 来た来た」
コンは一つのテーブルに紙を広げて待っている
それを囲む全員は 書かれていることに対して異議を唱えず静かにその時を待つ
「それではこれより
〝学園祭を悪の手から守り楽しい思い出を作りましょう計画〟を発表したいと思います」
その場の拍手と共にコンは話を進めた
「とりあえず学園祭まで 私達の間で班分けをしたいと思います」
「班分け? 別行動するってこと?」
「しょうゆうこと!!
まずは〈コニャック・コン・ドリアード〉はライブハウスを完成させるメンバー
この三人がクラスの実行委員になってるからね
食料到達や会場設計 クラス内での分担と学祭らしい仕切りは私達がします
次に〈ハーフル・ウホマンド〉はメインとなる歌を完成させるメンバー
ウホさんはハーフルちゃんをサポートして当日までに仕上げて来て下さい
ちなみに曲は自由で構いません
そして〈ツバメ・チワワ・コボルト〉はショージ達RSTから学祭を守るメンバー
事前に取り押さえるのオッケーだし 鎮圧・駆逐するのもオッケー
もしもの時は当日守ってくれるのが良いけど
私は皆で学祭を成功させたいと言い張りたいので後者は極力やめて下さいね
ということで改めて私の口から説明しましたが異論や反対がある方?」
「はい!!」
真っ先に手を上げたのはハーフルだった
「わ…… 私…… 歌えません!!」
「雨乞いの能力を気にしてるんでしょ? 会場は屋内だから大丈夫よ」
「……」
「もしかしてあのウニ頭の言ってること気にしてるの?
ハーフルちゃんにだって学祭を楽しむ権利はあると思うけど?」
「でも…… 雨が降ってしまえば外で出し物をするクラスに迷惑が」
「その雨はハーフルちゃんが呼び起こした奴じゃないかもしれないじゃない
雨が降ったら降ったらで屋内サイドの儲けが増えるから有り難いけどさ
天候なんてほとんど運だから 思いっきり歌いなよ」
根拠の無い説得で慰めるコンの傍らで ツバメがウホマンドに質問している
「ちなみに雨乞いってどんなときに発動するの?」
「雨乞いというより感情でそこら一帯の天候を変えるんだよ
あの時はショージ達に傷つけられたから 〝悲しくて〟雨が降ったんだ」
「それ雨乞いよりもすごいやつじゃん……」
「じゃぁ大丈夫じゃん!! 私達が当日楽しい祭にしてやるからよ!!」
コンのグッドサインでハーフルは下を向く でもそれは不安になったからではない
重責を成すメンバーシップというのは 少なからず緊張が知らず知らず迫ってくるものだ
ハーフルという自分自身を劣等に感じる者も然り
でもだからこそ 勇気づけられる時は調子が飛躍し
相手を信頼しているからこそ やってみようと心の底から込み上がってくるのだった
ハーフルの顔とちっちゃな握り拳は それを照明していた




