14話 アミーガ!!でゲル
鈴虫と蛙の鳴き声がBGMの夜も更け
風呂上がりのコンはリビングで髪を梳かしていたツバメに近寄る
「さぁツバメ!! 私の部屋でレッツガールズトークよ!!」
「これから勉強なんですけど……」
ここでツバメは初めてコンの素性に触れる
「あなたも私と同い年位ならJKの最後の大事な時期じゃないの?」
「私はもう内定取得しているから大丈ブイ!! ブイブイ!!」
「イーブイかっての…… 夏なのにもう就職決まってるんだ…… すご…」
「家業を継ぐから遙か昔から決まってたよ 私んち酪農とか実業団家庭だから!!」
「そう…… なんだ」
「寮の外にも厩舎あったよねぇ?
明日からの馬の世話は私がやるってコボルトさんに頼んできた」
「馬術とかも身につけてたり?」
「当たり前だのクラースジャガー!!
コンバインにも乗れるから自分の畑も作ってたし 鹿だって解体出来るっぜぃ!!」
「自給自足のプロね ガールズトークが偏りそうで付いていく自信無いです」
「ダイジョーブイよ! 話はいつだって私が合わせてたからん!!」
ーーちょっとコンニャク娘に似てるんだよね……
チャイムのベルが二人の会話を断ち切り
リビングにいるJKとソファーで少女漫画を読んでいる幼女が玄関へと注目した
「もしかして……」
向かう入り口には 既にコボルトとマミーが出迎えの準備をしていた
「ようこそワイフガーデンへ」
後から着た三人にもコボルトの口より紹介された
彼の手の平が指し示す大柄の容姿・印象的な鼻・頭を掻く大きな手に備える勇ましい蹄
もう一方は 小柄で如何にもな人見知りオーラを漂わせる亜人の少女
「明日よりこの寮から通学することになるお二人です
オークのウホマンドさんとマーメイドのハーフルさんです」
しおらしく無言でお辞儀するハーフル
それとは逆に 無愛想で大きな荷物を片手で持つオークのウホマンドは
コボルトに案内されて自室へと歩いて行った
「こっちの世界にもいろんな子がいるんだね」
「……改めてみると この世界っていろんな種族がいるよね?」
二人にまじまじと見つめられるハーフルは 赤面でもじもじとしている
「物珍しさに見てやるなでゲル 偏る者に興ずることを責めはしないでゲルがな」
「別に虐めてません!! さっハーフルちゃん 説教臭い王女は放っておいて行きましょ」
「……はい」
頷いて差し伸べる手を弱々しく両手で掴み ツバメの後ろを引っ張られながら付いていく少女
「アラ~ イイカンジダネ~~」
「グヌヌでゲルゥ!!」
コンに煽られるコニャックの顔も真っ赤っか
そうこうしている内にも リビングから賑やかな女子トークが聞こえてくる
「ハーフルちゃんって二本足だよね?
私の知ってる人魚のお話だと 魔女の秘薬で尾鰭から足に変化したって話があるんだけど?」
「えと…… 私は産まれときから陸上でウホちゃん達オーク族と共に住んでいます
ご先祖様には 確かに魚のように綺麗な尾鰭が下半身の部位だったと祖母から聞いてます」
「てことは陸上の生活に馴れていく内に 足が生える子供が生まれてきたって訳ね
……でも人魚が陸に上がるキッカケが必要よね やっぱり恋かしら?!」
「それは私達も分かりません…… ですが陸の生活に憧れはあったかもしれませんね
海は暗闇でホタルダイマオウイカに光を当てて貰う生活でしたから それに……」
「それに?」
「陸には会話が出来る他の種族がいます
言語で広がる世界の輪に入ることを 私達は欲しているのかもしれません」
「へぇ~~……
不本意だけど私もしばらくはここの寮にいるから 仲良くしてねハーフルちゃん!!」
「は…… はい!! こちらこそウホちゃん共々お世話になります!!」
握手を交わす二人の仲睦まじいこと
そんな優しい世界に憎悪を動力にするコニャックは リビングのドアの隅っこから半身で覗いていた
「なに不快な目でこっち見てるのよコンニャク娘」
「私の嫁に馴れ馴れしいでゲル…… 距離が近いでゲル! スキンシップが過激でゲル!!」
「握手してるだけでしょ……」
ツバメとコニャックの会話を聞いたハーフルは 驚いて地べたに頭を擦り付ける
「まさかコニャック王女の婚約者様ですか?! ……そうとも知らず 申し訳ありませんでした!!」
「いや違うから…… あいつが勝手にそう思っているだけ」
「どうかご無礼をお許し下さい!!」
「ハァ…… それよりウホマンドさんはどういう子なの?
挨拶も無しに部屋に入って行っちゃったけど」
「ウホちゃんも根は優しいオークです ただ彼女達は鬼の住む島の怪物と恐れられ
ここの大陸に住む者達と交流を図ることに前向きになれないんです」
「それって差別? ちょっとコンニャク娘?」
ジト目のツバメに興奮と焦りで葛藤するコニャックは弁解する
「オーク達が住んでるトンヶリ島は王国との交流が少ない断絶された孤島でゲルよ!!
こちらからコンタクトを取るにも距離があるわ 未知の領域だわで頻繁な接触が難しかったんでゲル!!
だからこそ遠い島から迎え入れて 明日よりドヴェルグ学園への登校の援助を兼ね
オークとマーメイド達との親睦の架け橋を試みたんでゲルよ!!」
「え? じゃぁハーフルちゃん達は途中入学になるの?」
「ツバメと一緒でゲルよ まとめてコボルトに手続きしてもらったでゲル!!」
「へぇ~~ やるじゃんコボルトさん」
「私は?!」
「何もかも用意したのはコボルトさんでしょ? 調子乗ってんじゃないわよ」
「もっと!! もっと罵き倒すでゲル!!」
「キンモイ!!」
「よきに計らえ~~」
床で悶え転がるコニャックを余所に ツバメはハーフルの荷物運びを手伝う為に廊下へと出た
「良い奴でしょ? コンニャク娘」
「えっ……」
「共生の国の王女は伊達じゃないのよ」
「……はい!! とても頼もしいお方 噂通りの人格者です!!」
「変態だけどね」
今日で一気に三人も増えたツバメとコニャックの寮仲間
ファーストコンタクトは良好
そして彼女達は明日 いよいよドヴェルグ学園へと登校するのだ




