12話 墓守のマミー
木々がざわつき 門兵が呆然と眺めている
姿を現し まるで生きているかのような建物は 平然と国の壁を跨いで街中へと入っていった
「土地はあるの?」
「王家のコネもあり 先日不動産屋にて簡単に土地の権利書を貰ってまいりました」
「権利書って…… え? どこかの家族を立ち退かせたの? 非道くない?!」
「いえいえ墓守をしていたマミーさんが
墓地を利用する人がいなくなったということで譲って下さったんですよ」
「墓場?!!! 嘘…… 嫌だ!!」
女の子が怖がっているのを見て優越感に浸るコニャックは
「何でゲルゥ? ツバメは幽霊とか信じてるでゲルか?」
「信じてないけど行きたくない!!」
「矛盾してるでゲル 何も起きないでゲルよ」
「でもマミーってその…… 動くミイラがいるんでしょ?」
高笑いするコボルトとコニャックはツバメを説得する
「善良な市民ですよマミーは
見た目こそ今の私みたいですが 会ってみればツバメ様の先入観は吹き飛ぶと思われます」
「くっ…… あなたはなんで容姿が変わってもイケメンなの?」
醜い姿になっても光り輝く彼に 胸をときめかせるツバメの仕草に
コニャックは頬を膨らまして気が気でない
危害が及ばない地を進む建物は 人気の無い王都北部で止まる
辺りは歴史ある遺跡の残骸が散らばっていて なんとも殺風景な場所だった
「うわぁ…… 何て言ったらいいのか」
腰を下ろす建物は同時に厩舎を隣に置いた
安全を確認したツバメ達は外に出てみると 奥には王宮が変わらず聳え立っている
「ここはもう一つの王国が存在していた跡地です ここら一帯は昔……
歴代の支持を繋ぐドワッフル王家と民衆の意思で政治を動かすピグミス王家に分かれていました」
「どうなったの?」
「ピグミス王家はドワッフル王家をよく思っておらず戦争に発展
戦争と言っても口論でしたが 結果はドワッフル王家が〝ある条件〟を提示して幕を下ろしたとか」
「血は流れなかったんだ 賢い国同士だこと」
「えぇ…… まぁ……」
遺跡の破片を拾うコニャックが話を続けた
「条件は二つの国を合体して統一することでゲル
もちろんそれはピグミス王家がドワッフル王家の下に降ることを意味した吸収合併でゲルが
その結末はピグミス王国内部で反乱が起き 私達が知らないこの場所で血が流れたんでゲル」
「え……」
「誰かを殺してでも利権を手に入れたい者は必ず現れるのでゲル
過激派が生まれ 私達の先祖も応戦してなんとか最悪の事態は免れた
生き残ったピグミスの民は国に招かれたが 恐怖から国内での差別が激化しての」
「争いを呼び寄せる危険因子と見られちゃったわけか」
「我等の王家はその問題を無視しなかったでゲルよ!
旧ジェルドワーフ王国を改め 共生の国ライブトゥギャザー王国の旗を掲げ
〝皆仲良く〟の世の中を努めたでゲル
しかしこの遺恨や確執は50年経っても しつこく残るのでゲルよ
中にはピグミスの血筋に非難が浴びるのを ドワッフル王家のせいにされる始末でゲル」
静かな場所で語られる重い話に絶えられないツバメは座って草をイジっていた
「ピグミスの生き残りはどうしてるの?」
「一部は穏やかに暮らしているでゲルよ 不思議と誰もここには近寄らないでゲルね」
「そして 私の仕事も減りました」
音も無くツバメの隣に現れたのは 包帯グルグルの女声を発する者だった
「え? コボルトさんじゃないよね?! ギャーーーー!!!」
「初めましてマミーです」
隙間から見えるのはミイラとは程遠い綺麗な目をしていた女性は ツバメをジロジロと見やる
「あらぁ可愛らしい~~ さすが…… コニャック様のお嫁さんですね」
「違います!!」
「全力で否定しなくても!!?」
寮からもう一人のマミーが出てきて 二人のマミーが会釈する
「この度は土地の譲渡 誠にありがとうございます」
「いえいえ…… 使命を全う出来て楽になれます」
ツバメは悟った
ーーあぁそうか…… やること無くなったマミーさんは天に召されちゃうのかな?
「私もこの寮で働かせてくれませんか?」
「何でよ?!!」
ここ一番に甲高い声が辺りに響き渡る
「やること無いんですもん ハロワ行く手間も省けますし」
「えぇもちろん!! 大歓迎です マミーさん!!」
握手する二人のマミーに満足の笑みを見せるコニャック
自分がアウェイだということに慣れたツバメは もう何も言わなかった
「怖くないなら別に私はいいんだけどね!!」
「フフフ……」
マミーはツバメの顔を近くで見つめた
ツバメは怖かったが不思議と退かない
「大きくなって……」
「え……」
コボルトに案内されるマミーは館内へと帰っていく
「どうしたんでゲル? 美しい顔を変顔で染めるでないでゲルよ」
「うるっさい!! 口説くのに毒をブレンドするな!!」
コニャックに引っ張られて寮に戻ろうとするツバメは
何かを忘れてる そんな表情をしていた
ーーあの声…… どこかで……




