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ひきこもり勇者の英雄談  作者: 御影友矢
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1回目07


 あずさの死からはや一週間が経過した。


 幾分か気分が持ち直していた。


 何が起こっても世界は回っている。今この時でも誰かが死に、誰かが生まれている。


 何黄昏てんだきしょい。黄昏て良いのはイケメン主人公だけだ。ブサメンメタボ主人公の憂いなんて誰特だおい。


 思ってて虚しくなる。行くか。


 朝の日課を終え、英雄ギルドに向かう。


 今日は冒険者の数が多いな。


 明らかにここにいる常駐冒険者とは違う装備。珍しいなと思いながらも英雄ギルドに着き原因が分かった。


 中から言い争う声。おかっかなびっくりで扉を開けると、コルナと見知らぬ女。だけどどういう目的できたのか理解できた。何故なら彼女の服装はあずさと同じ制服だからだ。


 扉の音で女は振り返った。


 腰まであるさらさらと綺麗なツインテール、お洒落なピンク色の伊達眼鏡をかけており、均一のとれた顔、身長は150センチ程度で小柄に見える。身長が高ければモデルになれたんじゃないかと俺は思う。


 まるで人形の様に無表情だが俺には分かる。かなり怒っているのだと。


 まさに蛇に睨まれたカエル状態。


 逃げたかったが足が竦んで動けない。動け動け動け動いてよぉぉ。


「私の名前は鈴森史香です。あずさの友達です。貴男はここに居る同郷の方で間違いないでしょうか」


 動けなかった。真っ直ぐに俺の目を見て言っている。あずさはゴミを見るような嫌悪の目だったが、瞳に感情があった。しかし史香にはなにも見えない。目にあるのは無感情。ただただ俺の返答を感情を出さず待っている。しかし俺は感じていた。史香の後ろに死神の鎌が。


 言ったら殺される。言わなくても殺される。どうすんだ俺。詰んじまったぞ。二択で両方ともゲームオーバーなんてどんなクソゲーだよおい。俺も頭では分かっているよ。この結末を回避する手段はいくらでもあったよ。今回俺は、嫌われているのをいい事に何もしなかった。だからこういう結果を招いた。自業自得だ。日頃の行いが悪かった。たまりにたまったつけがここにきただけだ。


 言おう。俺は意を決した。


 今の俺の顔は情けない表情かそれとも凛々しい表情か・・・・・・ってそれはないか。たぶん焼売のような表情だろう。でも口は何とか動いた。


「そっそうだ。おっおらの名前は」


 言おうとして、言葉を遮られた。まるでそれだけ聞けばいいと言うように。


「とりあえず死ね」


 見えなかった。しゅっと言う音が聞こえ、死んだかと思った。


 やっと終われる。根無し草の生活。ただ生きてるだけで、周りに迷惑をかけまくっていた。戦うこともできず、かといって自ら命を絶つ事も怖くてできない。


 体の力が抜け、視界が暗転する。


 俺は最後にこう思った。


 生まれ変わるなら、金持ちのイケメンで最強でハーレムをつくりたい。


 強欲だなおい。


























 目覚めたら赤ん坊の姿に    













 なるわけがなく、英雄ギルドの天井が見えた。


 なぜ生きているんだ。


 体に異常がないか確認する。


 生きている。


 死を覚悟していたが、ただたんに俺は気絶しただけだった。


 そして下腹部に染みが。


 最低だ俺。


「起きたの。ならさっさと帰って。掃除するこっちのみにもなってよね。大人が失禁するなんて恥ずかしい」  


 コルナは銀貨を渡し、しっしっと追い払う。表情は心なしか気落ちしており、言葉も力はない。


 ん、何か違うな。


「そっ、そういえば史香さんは何処だが?」


 ここを出でもまた襲撃されたんじゃ意味はない。なんかラッキーで生き残ったが、早々続くとは思えない。何処ぞのラッキーマンではなくメタボマンだからな。さむっ。思ってて寒くなってきた。


 しかしコルナの次の言葉に衝撃を受ける。


 コルナは躊躇したが、ため息を一つ吐き、けだるそうに答えた。


「彼女は死んだわよ。そういえば教えてなかったわね。異世界人にもいくつかのルールがあり、それを破ると罰をうけるの。いくつかは教えたわよね」


 俺は頷く。最初ここに来たとき、この世界の事、一般常識、このギルドの説明とともに、禁止事項を教えてもらった。


 しかし、今回のケースは教えてもらってない。死んだ。まじでか。


 駄目だ頭がぐるぐるする。


「今回彼女が破ったのは異世界人同士の殺しあいの禁止。罰は致死性攻撃をした部分の消滅。彼女は貴男の首を斬ろうとした。よって彼女は首から上を消失したわ」


 俺のせいで又。彼女達は死んで何で俺が生き残るんだ。本当にそう思う。


 その日どう帰ったかは覚えてない。しかし銀貨は無くなっていた。



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