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ひきこもり勇者の英雄談  作者: 御影友矢
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1回目06


 あれから早一ヶ月が経過した。


 俺の生活は相変わらずの馬小屋生活だ。食って寝てサヤに搾取されて寝る。オークの出来上がりだ。一ヶ月前よりも心なしか大きくなったような気がする。どこが大きくなったって、いわせんな。


 あれからあずさと進展があったかって。何も話せないまま出て行ったよ。


 悪かったな期待に添えなくて。俺はモブでヒッキーな男なのさ。あずさが探していたクラスメイトの情報が手に入り居なくなったのもサヤから教えてもらったぐらいで、話した言葉は、初日しか思い出せない。顔を合わせても無視された。


 どこぞの村人Aだよ。きょどっていた俺も悪いけど、嫌悪感丸出しの眼で見られたらそりゃそーなるよ。メドゥーサの眼並だよ。どこぞのライダーだよ。


 俺が頼れる二枚目の男なら、一緒にクエストして、一緒に食事して、たくさん話して親睦を深めて一緒に行く選択肢もあったのだろうか。


 さらにこれがギャルゲーなら、選択肢次第で主人公ならどんな男でも好感度がアップして、顔を合わせれば顔を赤くさせることもできたのだろうか。


 そんなもの幻想だ。イマジンブレイカーだ。


 現実なんてこんなものだ。フラグのフの字も起こらない。


 行くか。朝からげんなりだ。


 ダウナー気分な俺は背を丸め、ゾンビの様にフラフラと歩き出した。


 井戸で顔を洗い、着いた先は英雄ギルド。安定のワンパターンだ。


 ドアを開けると、いつもの如く、コルナが居たが、いつもと様子が違く顔が青ざめていて、ドアが開いたのも、俺が入っていたのも気づいていない。どうしたんだろうか


「どっ、どうかしたんだか」


 コルナとは話せるうちの一人なのでどうにか聞けた。


 こっちを見て、若干落ち着きを取り戻した様だ。


 深呼吸して。


「ここを出てから一週間、サマンサの森であずさの死亡が確認されたの」


 衝撃的内容だった。さっき回想したばかりだ。ショックは大きい。


 サマンサの森は南側の出入り口から徒歩十分にある所で、森を抜けた所に中堅町『ツヴァイ』がある。


 サマンサの森は通常一日ほどで抜けられるが、三日経ってもツヴァイに来てないことから捜索依頼を出し、冒険者があずさの亡骸を発見したらしい。


 原因はウルフに喰われたらしく、ここではありふれた死因の一つだ。


 異世界人の死亡する五大原因の一つで、最初の移動だ。


 レベルが低い状態での移動は非常に危険が伴う。冒険者に護衛を頼むなら別だが、どうやら一人で行ってしまったらしい。


 あずさのレベルは3だった、


 サマンサの森は適正レベル1~5でウルフは単独なら3、群れなら6が推奨の相手。


 もう少しレベルをあげるか、冒険者に護衛を頼むかコルナも助言をした。


 実際冒険者ギルドにも行ったようだが生憎、冒険者ギルドでは女性冒険者はいなく、男性だけで、指名しても一週間はかかるといわれて断ったらしい。


 ファスト村は何もなくモンスターも弱く依頼も少ない事から不人気で冒険者の数は少ない。女性冒険者は男性冒険者に比べ数が少なく、俺も一年間で見掛けたのは数日ぐらいだ。


 通常の指名依頼だと旨味が少なく誰も来たがらない。それでも英雄ギルド経由で冒険者に強制するのも可能だが、冒険者ギルドの受付が言ったように手続きで最低でも一週間はかかる。


 待つのも生き残る上で重要な要素の一つだが、友達の一人がツヴァイにいると言うことだったので待てなかったらしい。


 非常に重たい沈黙。思うところはある。助言すれば良かったとか、止めれば良かったとか、一緒に行けば良かったとか。でも一緒に行ってなんになるレベル1の俺は行っても足手まといだ。俺の助言なんて聞くはずがない。男の冒険者を嫌がり待てなかった時点で彼女は詰んでいた。


 結局いつもの依頼を達成した。


 待っていたサヤもあずさの死亡を知っていたのか『ブータンのせいじゃないよ。サーヤは分かってるの、アータンは運が悪かったの』と優しく抱きしめられよちよちされた後、サヤは帰って行った。


 その心遣いは俺にはありがたかって、なんてできた幼女なんだ。お金はちゃっかり取られたけど。


 何もする気は起きず、飯を食べた後夕日も沈む前に床についた。眠れはしないが馬小屋から一歩も動かなかった。今日ばかりはあずさの冥福を祈ろう。



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