1 天狐の清狐
つぶれそうな神社をわれと立て直すのじゃ!! 天狐の清狐と僕の物語
「あち~」
夏休みに入ってゴロゴロと和室で寛いでいるが、温暖化の影響でものすごく暑い。クーラーを買ってくれと前から言っているが、この場所は風通しもいいし、標高も高いから涼しいから大丈夫だと買ってもらえない。熱中症で部屋で亡くなっちゃう人もいるんだからこれは虐待じゃないかと思っている。
ちなみに僕が住んでいる場所は神社の境内に建てられた一戸建てなんだけど、ほとんど参拝客が来ない。いろいろ理由があるんだけど一番の原因は300段以上ある階段だろう。苦労して登ってきてもパワースポットがあるわけではないしご利益のあるお守りを売っているわけでもない。神社で生計は立てていけないため、父親も母親も別の仕事をして生計を立てている。
「暑い、本当に暑い。」
俺は冷凍庫からシャキシャキ君を取り出し、神社の方へと向かった。神社は床が木だから寝そべるとひんやりして気持ちいいんだよね。学校の同級生の中には神社で一人って怖くないとか同級生にいわれちゃうけど、こちとら生まれてこのかたこの神社で暮らしているんだから怖いなんて思ったことは一度もない。
「は~気持ちいいなぁ。」
床に寝そべりながらのシャキシャキ君は最高だ。特にソーダ味は夏を乗り切るのには一番だね。
「うまそうじゃ。わしにもくれんかの?」
「?」
なにか聞こえたような気もしたが気のせいだろう。15年生きてきてこの方霊など見たことないからね。
「おい、聞こえておるじゃろう。ちゃんとこっちを見るのじゃ。神様を無視すると神罰が下るぞ。」
おそるおそる声のする方を見ると、140センチほどの巫女装束を着た少女が立っていた。
「ええええええええ~~~~っ。」
「これ、おおごえだすな。わしは耳が良いからの、大きな音はちと苦手なのじゃ。」
少女は頭の頭頂部から生えた耳をひこひこさせて見せた。いわゆる猫耳というやつだ。
「あっ、すいません。」
「勝利のやつからお前さんが15才になったら面倒を見てくれと言われておるのじゃ。」
「えっ、おじいちゃんから。」
「そうじゃ、勝利からお前が15才になったら導いてくれとお願いされていたのじゃ。」
「じいちゃん何も言ってくれなかったからな~神様でいいんですよね?」
「そうじゃこの神社の由緒正しき神、天狐の清狐じゃ。」
「天狐と清狐って二つ名前があるの?」
「馬鹿者じゃ。お前さんは馬鹿者じゃ。天狐はわれが狐の神様だから名付けられた名称じゃ。わしの名は清狐じゃ。いいなじゃろう。よろしくな駿精。われとおまえとでこの神社を復興させるぞい。カッカッカッ。」
清狐様は澄み渡る声で笑うと、シャリシャリシャリ、俺の持ってきたシャキシャキ君をおいしそうに食べ始めた。
せっかくの高校初めての夏休みがなんだか大変なことになっていきそうな予感しかしない。